フランスでこのほど、超低価格・大量販売を特徴とするウルトラファストファッションを規制する「ウルトラファストファッション法案」が正式に承認された。「シーイン(SHEIN)」や「ティームー(TEMU)」「アリ・エクスプレス( ALIEXPRESS)」のようなウルトラファストファッションに対する規制としては、これまでで最も踏み込んだ内容とみられている。
対象商品に追加負担金、広告にも規制
具体的には、商品1点ごとに「エコモジュレーション(環境負荷に応じた調整)」に基づく環境負担金を導入する。環境負荷が高い商品ほど販売コストが高くなる仕組みで、この負担額は段階的に引き上げられ、2030年までに1点当たり最大20ユーロ(約3681円)となる。ただし、負担額は商品の税抜き価格の50%を上限とする。同時に衣料品の価格と修理費用を比較する「修理可能性」の指標も導入する。修理するより新品を購入した方が安いと判断される商品は、より高い負担金の対象となる。
広告にも規制をかける。対象にはデジタル広告やインフルエンサーマーケティングが含まれる。また、ブランドには消費者に対し、衣類の再利用や修理を促すメッセージを表示するとともに、より責任ある購買行動を呼びかけることが義務付けられる。
同法では、商品の発売スピードや品ぞろえの幅広さを基準としたウルトラファストファッションの定義を正式に設ける。これにより「H&M」や「ザラ(ZARA)」のように実店舗を持ち、地域で雇用を生み出している従来型の欧州ファストファッション企業と、ウルトラファストファッションを明確に区別する狙いがある。
業界内では賛否両論の声、EU法との整合性に課題
「シーイン」の担当者は「欧州委員会の見解を踏まえると、いくつかの規定には疑問が残る。特に一部の措置については、デジタルサービスやECに適用されるEUの法制度との整合性に課題があるように見える。私たちは引き続き、詳細な法的分析を継続していく」と述べた。
業界の反応は賛否両論だ。支持派は、小売事業者と世界的なデジタルプラットフォームとの競争条件を公平にするために、ようやく実現した措置だと評価している。一方、批判派は、プラットフォーム側による激しいロビー活動や交渉の結果、法案の内容が当初より弱められ、最も影響力の大きい事業者への規制効果が薄れたと指摘する。
この法案を最初に議会へ提出し、成立に向けて主導してきたアンヌ=セシル・ヴィオラン(Anne-Cecile Violland)下院議員はAFP通信に対し、「私たちはなるべく早く施行できるよう、法律を整備する必要があった。第一歩として、『シーイン』に対して非常に厳しい措置を講じることになるだろう」と述べた。
「シーイン」も指摘するように、広告規制は同法律の中でも特に法的な不確実性が大きい部分となっている。欧州委員会は、この規制がEU法に完全に適合しているかについて懸念を示しており、その結果として適用範囲が限定される可能性がある。フランス政府も、仮に欧州委員会(ブリュッセル)がこの措置に異議を唱えた場合、一部の広告規制については実効性を確保することが難しくなる可能性を認めている。
欧州で進むウルトラファストファッションの規制
フランスでは2026年3月、EU域外から輸入される少額貨物に対し、1点当たり2ユーロ(約368円)の手数料を導入した。一方EUも、より広範な制度改革の一環として、EU域内に流入する少額貨物に対し1点当たり3ユーロ(約552円)の通関手数料を課す制度を準備しており、今秋の施行を予定している。
フランス以外でも、ドイツはEUの「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)」の下で、繊維製品に対してより厳格な政策を導入するよう求めている。ドイツは、繊維製品について再生素材の使用比率や耐久性、リサイクル性に関する要件を盛り込むことに加え、ウルトラファストファッションをより明確に規制するための基準整備も求めている。
さらに、ドイツとオランダ、フランスは、繊維製品に関する拡大生産者責任(EPR)の一層の強化も求めている。これは、廃棄衣料の回収や選別、再利用、廃棄処理にかかる費用の一部を、ウルトラファストファッション企業にも負担させるという考え方だ。
3カ国はまた、EU域内に拠点を置く事業者と同様に、オンライン販売事業者やサードパーティー販売事業者にも欧州の環境基準や製品基準を適用すべきだと主張している。
ドイツ連邦環境省のヨッヘン・フラスバルト(Jochen Flasbarth)事務次官は、「ウルトラファストファッションは、短期間しか着用されないにもかかわらず、長期的にはさまざまな問題を引き起こす。廃棄された衣類は中古品として再利用されることも、リサイクルされることもほとんどなく、古着回収システムにも大きな負担を与えている」と指摘した。
その上で、「これは資源や気候、廃棄物管理システムへの負担となるだけでなく、耐久性が高く循環型の繊維製品に投資している企業にも圧力をかけている。そのため私たちは、欧州委員会に対し、ウルトラファストファッションの製造事業者により高い持続可能性基準を設けるよう求めている。安価な使い捨て衣料を大量生産することが、もはや競争上の優位性であってはならない」と述べた。