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2019年のラグジュアリー市場は売上高4%増 中国と若年層がけん引

 2019年も終わりに近づいてきた。米中貿易摩擦や香港でのデモなど、地政学上の不透明感が増した一年だったが、ラグジュアリー市場は依然として好調だ。米コンサルティング会社ベイン&カンパニー(BAIN & COMPANY)と伊ラグジュアリー業界団体のアルタガンマ財団(FONDAZIONE ALTAGAMMA)が共同で発表したリポート「アルタガンマ・ワールドワイド・ラグジュアリーマーケットモニター(Altagamma Worldwide Luxury Market Monitor)」によれば、19年のラグジュアリー市場の売上高は恒常通貨ベースで前年比4%増の1兆2600億ユーロ(約152兆4600億円)に達するという。

 地域別に見ると、引き続き中国本土が市場をけん引しており、同26%増の300億ユーロ(約3兆6300億円)となった。一方で、香港は6月から続く大規模な民主化デモの影響で小売業が打撃を受け、同20%減の60億ユーロ(約7260億円)だった。また中国本土からの観光客が行先を香港からその他のアジア地域に変更した結果、日本は同4%増の240億ユーロ(約2兆9040億円)、日本以外のアジアは同6%増の420億ユーロ(約5兆820億円)だった。米国市場は国内消費が強かったものの、観光客の減少が響いて成長率は低迷した。しかし市場規模が840億ユーロ(約10兆1640億円)と大きいため、今後もラグジュアリー市場の中心的存在であることは間違いないだろう。欧州は同1%増の880億ユーロ(約10兆6480億円)とやはり緩やかな成長となったが、ポンド安の影響で観光客が増加した英国が比較的好調だった一方で、政府への激しい抗議行動が続いたフランスは観光客の足が遠のいて苦戦した。

 ベイン&カンパニーのクローディア・ダルピツィオ(Claudia D’Arpizio)=パートナーは、「香港が以前と同じ市場規模に戻ることは難しいと思われるため、ラグジュアリーブランドは既存の店舗数を維持できず、縮小せざるを得ないだろう」と語った。同氏はまた、「最近の消費者を象徴するキーワードとして、中国人、若年層、フィジタル(実店舗とデジタルの融合)、多様性、オープン、企業の社会的な責任に敏感、感情を重視などが挙げられる」と解説した。

 同氏の言葉通り、年代別に見ると若年層の伸びが著しい。19年におけるラグジュアリーグッズの売上高の35%をミレニアル世代が占めており、25年にはそれが45%に上ると試算されている。さらに若いZ世代も、35年にはラグジュアリー市場の40%を占めることが予想されるという。

 フェデリカ・レヴァート(Federica Levato)=ベイン&カンパニー パートナーは、「中国や東南アジアなどのラグジュアリー市場ではZ世代がすでにある程度の存在感を示している。彼らはラグジュアリーブランドのクリエイティビティーや将来的な方向性について影響力があることを自覚しており、積極的に意見を発信する。またブランドとの感情的なつながりを求めて、実店舗での買い物体験を重視するところも特徴的だ」と説明した。なお、ラグジュアリーブランドに求めるものとして顧客の80%が「社会的責任」を挙げており、ミレニアル世代では特にその傾向が強い。また、ラグジュアリーブランドはその他の企業よりも多くの社会的責任を果たすべきだと考える顧客は60%に上っている。

 販売チャネルではオンラインが最も伸びており、前年比22%増だった。部門別では靴とジュエリーが同9%増と最も好調だったが、これにはストリートファッションの隆盛によるスニーカー市場の盛り上がりが貢献している。ほかにはレザーグッズが同7%増、ビューティが同3%増と売り上げを伸ばしたが、ウオッチは香港でのデモが響いて同2%減となった。

 ラグジュアリー市場は主な顧客である富裕層が売り上げの30%程度を占めているが、アジアでは中間層の可処分所得が増加しており、ラグジュアリーブランドの新たな顧客となっている。このため、エントリープライスの製品やアウトレットの売り上げが伸びているという。また二次流通市場も成長しており、同16%増の260億ユーロ(約3兆1460億円)となった。

 レヴァート=パートナーは、「ブランド物を初めて購入したのがリセールショップだという消費者も多い。ラグジュアリーブランドは二次流通市場を目の敵にするのではなく、新たな顧客を獲得する機会だと考えて戦略を練るべきだろう」と話した。

 ラグジュアリーブランドの中古品を扱う会員制ECサイトを運営するザ・リアルリアル(THE REALREAL)のジュリー・ウェインライト(Julie Wainwright)創業者兼最高経営責任者によれば、人気のブランドは「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「グッチ(GUCCI)」「シャネル(CHANEL)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」などだが、中でもアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)=クリエイティブ・ディレクターが就任して以降の“新生”「グッチ」は人気が高いという。「同ブランドはラグジュアリー市場への入り口のような役割を果たしている。ストリート系の若者が初めて購入するブランド物は『グッチ』であることが多い。それに次いで『プラダ(PRADA)』や『ルイ・ヴィトン』も人気だ」。

 ダルピツィオ=パートナーは、「ラグジュアリーブランドは今後、顧客とより個人的なつながりを作っていかなければならない。若年層の顧客は多様かつグローバルで、自分の意見をしっかりと持っている。彼らにアピールするには、ブランドや製品の魅力と買い物体験をうまく組み合わせて、その感情に訴えかける必要がある。消費傾向、販売チャネルの進化、顧客動向などはすでに急激な勢いで変化しているが、将来的にはそのスピードがさらに速くなることが予想されるため、ラグジュアリー業界はいっそうの努力が求められるだろう」と述べた。