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「ターク」が初のパリコレへ 破天荒なモノ作りで「王道にかみつく」

 森川拓野のメンズブランド「ターク(TAAKK)」は、2020年1月に開かれる20-21年秋冬シーズンのパリ・メンズ・ファッション・ウイークに参加し、現地時間16日にプレゼンテーション形式でコレクションを発表する。同ブランドのパリ進出は、東京都と繊維ファッション産学協議会が主催するファッションコンペ「ファッション プライズ オブ トウキョウ(FPT)」受賞によるもので、20年1月と6月のパリメンズ期間中にコレクションを発表するための資金助成を得てのものだ。現在は国内の30アカウント、海外の12アカウントに卸し、年間売上高は約1億円。これまで「FPT」に選出された「マメ(MAME KUROGOUCHI)」や「オーラリー(AURALEE)」に比べて知名度やビジネスの規模は発展途上だ。しかし裏を返せば、「ターク」の選出はクリエイション面での期待が大きいことの表れだといえるだろう。アクが強いオリジナルのテキスタイルや大胆なアイデアで、世界を驚かせるポテンシャルは十分に持っている。東京・鷹番の自宅兼アトリエで、破天荒なクリエイションのルーツや大舞台にかける思いを聞いた。

「FPT」審査会前に
サンプル紛失の大ピンチ

WWD:「FPT」に応募したきっかけは?

森川拓野「ターク」デザイナー(以下、森川):世界の市場で本格的に戦っていくきっかけがほしかったから。2016年の「東京ファッションアワード」受賞を機に、イギリスの百貨店セルフリッジ(SELFRIDGES)やミラノのディエチコルソコモ(10 CORSO COMO)、アメリカのオープニングセレモニー(OPENING CEREMONY)などいい店で取り扱いが始まった。最近は海外のラッパーやセレブリティーが着用してくれる機会も増えた。でも、世界の市場で戦うにはまだまだスタートに立ったとは言えない状況だ。ブランドを長く続けていくためには、海外市場開拓は必要不可欠。だから本格的に世界の市場に出るために、「FPT」はぴったりのアワードだった。

WWD:複数ブランドからの応募があった中で、「FPT」を勝ち取った要因は?

森川:服だけではなく、大きなルック写真を使った空間作りやクリエイションの過程の伝え方など、多面的な作り込みが評価されたのかなと思う。実は航空便のアクシデントで「FPT」の審査で見せるはずだった2020年春夏シーズンのコレクションの半分以上を失ってしまい、イメージボードや資料をたくさん使ってプレゼンするしかなかった(笑)。もしかするとそれがよかったのかもしれないけれど、サンプルはいまだに行方不明……。

WWD:イメージボードを起点にする作り方はいつから実践している?

森川:ブランドを立ち上げたときからずっと続けている。僕はパターンメーキングから制作をスタートさせるデザイナーじゃなく、まずはイメージから作り始める。今の自分は何が気になっていて、それをどう考え、なぜ作りたいかなどを視覚化して頭の中を整理するためのイメージボードだ。パソコンで集めた資料は意識的に見にいかないと見ないけど、ボードを作っておくとデスクに座った瞬間に目に入ってくるから、一つのアイデアを深く掘り下げる意識に自然となれる。デジタルの技術がどれだけ発達しても、ハサミで資料を切って貼り付けるというアナログな作業は、僕のクリエイションには欠かせない。「ターク」は5人ぐらいでチームを組んでいるので、ほかのメンバーにも自分の考えを伝えやすい。この作り方は、イッセイ ミヤケ時代に学んだこと。

WWD:なぜイッセイ ミヤケを選び、前職の経験は現在にどう生かされているのか?

森川:文化服装学院の1年生だった2000年のころ、学校で基礎的な作図などの細かい技術を学んでいた。そんなときに東京都現代美術館で開かれていた「ISSEY MIYAKE MAKING THINGS」展を見る機会があり、あまりにも自由で面白いモノ作りが強烈で、すぐに入社したいと思った。就職してからの7年間は、企画デザインから和紙すきや稲刈りまで本当に何でもやったけれど(笑)、それら全てが現在に生きている。ものの考え方や作り方、リサーチのし方、パタンナーや工場との付き合い方、そして電話での伝え方一つとっても服作りだということを教わった。時には、工場に複雑な加工やタイトな納期などで無理をお願いすることもある。ここぞという勝負時には職人に電話で謝りたおしたり、直筆で手紙を書いて素材に対する強い思いを伝えたりもする。「ターク」の服には強いテキスタイルが欠かせないから、材料を作るための信頼関係を築くのもモノ作りの一環。協力してくれる工場や機屋があるから、僕がある。

パリでは
「挑戦者として、下っ端として」

WWD:これまでに「FPT」を受賞した「マメ」や「オーラリー」とはかなり毛色が異なるが?

森川:選ばれてみて、大変な舞台で勝負できるチケットをもらったんだなとあらためて実感している。「マメ」や「オーラリー」は本当にすごいなと(笑)。でも僕は僕の服作りを貫くだけ。「ターク」の服はクセが強いから、決して万人受けするとは思っていない。でも王道からはズレた違和感を海外の人たちが面白がってくれて、実際に買い付けにもつながってきた。だから根底の部分はブレさせず、挑戦者として、下っ端としてパリコレという王道にいかにかみつき、痕跡を残せるかが大事。日本人と違って海外の人は「FPT」に選出されてパリに来ているなんて知らないから、大舞台で正々堂々と勝負できるように準備するだけ。

WWD:ショーの構想は?

森川:演出は、東京やニューヨークでショーをしたときから組んでいるプロデュース会社のクロコ(KuRoKo)チームに任せている。スタイリングやキャスティングは、ニューヨークで出会った外国人のチームに力を借りる予定だ。ただ大前提として、まずはどのようにして多くの人に見てもらえる環境をつくるかを考えないといけない。たとえそれがゲリラ的なショーだったとしても、見てもらわないと何も始まらない立ち位置のブランドだということは自覚しているので。

WWD:パリコレを経て思い描くブランドの将来は?

森川:とにかくパリでのショーを継続していくことが目標。すごく大変なことなので、基盤をしっかり固めたい。ブランドを大きくしたい思いもあるけれど、全てのアイテムに自分の目が行き届く規模感は維持したい。青山にきれいなアトリエを構えるよりも、下町で信頼できるチームとワイワイモノ作りを続けていくのが自分には合っているから。

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