ファッション

「ミーンズワイル」服が“道具”から“ファッション”に変わるとき 3年ぶりのランウエイ

藤崎尚大デザイナーによる「ミーンズワイル(MEANSWHILE)」が、ブランド2度目のファッションショーを行った。初のショーは2020年10月に「東京ファッションアワード(TOKYO FASHION AWARD以下、TFA)」受賞の特典として開催した。その後は展示会とルック、映像などで発表を続けていたが、ブランド設立10周年の節目として再びショーに挑んだ。

友人たちの勇姿に背中を押されて

「最初から強くショーにこだわっていたわけではなかった」。ショー前の藤崎デザイナーが口にした意外な言葉だった。「どこかスポンサーが付いてくれて、タイミングが合えばやろうかなと思っていたくらい。結局協賛はつかなかったけれど(笑)」。それでもショーに挑む決意を固めた背景には、友人デザイナーたちの活躍がある。「昨シーズン、フィッターとして参加した『ヨーク(YOKE)』のショーが本当に素敵だった。僕と同じ『TFA』受賞ブランドということもあり、刺激をもらった」。6〜7月には、同じく「TFA」経由で知り合った「ダイリク(DAIRIKU)」「シュガーヒル(SUGARHILL)」のショーを目の当たりにし、デザイナーが輝く姿を見て「やっぱりショーだ」と決心した。

衣装ではなく“道具”としての服

「ミーンズワイル」はトレンドを追い求めるブランドではない。藤崎デザイナーは服を“衣装”と“日常着”に区別し、後者を作っていると語る。藤崎デザイナーにとっての日常着とは、着用者の生活をサポートするための“道具”。特定の用途に合わせた素材とパターンワーク、ギミックを持った服だ。

しかし“道具”とはいえ、着ることで気分を高揚させる“ファッション”の役割も意識してきた。「これまで多くのブランドは、服に対して衣装としての側面を追求し続けて来た。その中で、新たな価値観を提案できれば、もっと楽しくなるはず」。ファッションの本流以外の視点でアプローチする姿勢は、ブランド名のベースとなった“meanwhile(=間)”にも表れている。「僕は元々ファッションが大好き。だから、ショーを通して、日常着が持つ新たな可能性を感じてもらいたい」。

東京モダン建築の屋上に600人を招待

ショーの会場は、東京・千代田区にある複合ビル「パレスサイドビルディング」の屋上だ。1966年に竣工した同建築は、2棟の円筒状のビルと2棟の直方体の建築を連結させた独創的な外観である。皇居のすぐそばで、水と緑を感じられることから、藤崎デザイナーお気に入りの場所だった。「このビルの駐車場をよく使っていて、ずっと好きな建築だった。ショーのために都市と自然を感じられる場所を探していたら、演出家からここを紹介されて」。この建築がショーのランウエイに使われるのは初めてだ。

前回のショーはコロナによる厳戒態勢を敷いたため、100人余りしか招待できなかった。「今回はたくさん呼んだ。600人は超えている」。定刻から20分過ぎたころには太陽が沈み始め、青空が夕焼けへと変わるころにショーが始まった。

ボタン、ファスナー、空調服
ギミックを生かした近未来スタイル

「ファッション市場でも支持される“道具”でありたい」という藤崎デザイナーの思いは、ルックで見事に体現されていた。テクニカルな素材や着脱や通気といった特定の用途のための工夫が、レイヤードなどに生かされ、近未来的なファッションスタイルへと進化していた。

複雑なレイヤードスタイルには、スナップボタンで開閉するサイドスリットや、マジックテープで身頃を前後に外せるギミックなどを活用。シルエットのバランスに強弱をもたらすため、サイズ調整のために使うドローコードや、ムレを防ぐためのファスナーのベンチレーションを応用した。誇張されたボリュームのジャケットは「空調服」とのコラボで、後ろ身頃のファンをフル稼働させて、独創的なシルエットを作った。ほかにも、防水機能を持ったダイニーマ素材のアームカバーやレッグカバー、ビニールのような素材のスニーカーカバーなどを多用し、異素材によるアクセントを加えた。

グラフィックアイテムも多数登場した。シャツとショーツのセットアップなどに使った水墨画のような総柄は、写真家・白石真一郎の作品をプリントしたもの。自然と人工物を“風景”として並列で捉える彼の作風は、道具とファッションを区別しながらも、両立させようとする同ブランドとの親和性を感じた。シャツなどに使ったバウハウスのグラフィックはブルーが際立ち、グレーやカーキなどをベースにしたコレクションの差し色になっていた。

「今回のショーは、ブランドの姿勢を見せるため。ただ、少しでもビジネスにつながればという思いもある」と藤崎デザイナーは話した。現在の取り扱いアカウント数は国内約20、海外約25で、売上比率も海外が7割を占めるという。「いつかはわからないけど、パリでも挑戦したい。そのときは、スポンサーが付けばうれしい(笑)」。

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