ファッション

パリコレデザイナーが審査 東京都主催の学生限定ファッションコンペは“育成”に注力

東京都は、都内在住・在学中の学生を対象にしたファッションコンクール「ネクスト ファッション デザイナー オブ トウキョウ 2024(Next Fashion Designer of Tokyo 2024以下、NFDT)」と、都内在住・在学・在勤のアマチュアデザイナーが対象の「サステナブル ファッション デザイン アワード 2024(Sustainable Fashion Design Award 2024以下、SFDA)」のエントリーを9月29日まで受け付けている。

両コンクールとも昨年に続く2回目の開催で、「NFDT」はフリー部門と、障害のある人の着用を前提にしたインクルーシブデザイン部門の2部門で募集中だ。それぞれ大賞1名に賞金100万円と、優秀賞2名に賞金50万円が贈られる。「NFDT」は、世界で活躍する有望なデザイナーを発掘するため、審査員として東京藝術大学の日比野克彦学長や ファッション・ディレクターの原由美子に加え、パリ・ファッション・ウイークに参加している「アンリアレイジ(ANREALAGE)」の森永邦彦デザイナーや、「CFCL」の高橋悠介代表兼クリエイティブディレクターのほか、バイヤーやジャーナリストらが名を連ねる。多角的な視点で総合的に審査し、東京を、パリやミラノ、ロンドンなどと並ぶファッションの拠点にするため、人材育成のプログラムを組んでいるのがコンクールの特徴だ。

教育にも焦点を当てた
唯一のコンテスト

「NFDT」では、まずデザイン画で一次審査を行う。各部門15名ずつの通過者は、森永「アンリアレイジ」デザイナーらがコンセプトデザインやパターンメイキングを講義する約2時間のワークショップに参加し、第一線で活躍するプロからコンセプトの立て方や技術を学ぶ。またインクルーシブデザイン部門限定でのワークショップも予定している。

二次審査ではルック1体を実際に制作し、審査員にプレゼンテーションを行う。ここで通過した各部門6名は、高橋「CFCL」代表らによるビジネス体験に参加でき、MDや生産管理といった、ものづくりからビジネスに直結するまでの流れを学ぶ。さらに、作品をファッションショーで披露する最終審査に向けて、実際にショーを担当する演出家と、ファッションPR による講義も受講する。

最終審査ではルックをもう2体追加で制作し、計3体をショー形式で審査員に発表する。参加者はワークショップでプロのレクチャーを受け、ものづくりやビジネスの感覚を身につけながら、その集大成をショーで披露する仕組みだ。さらに、コンテスト終了後も応募者を対象にしたコミュニティーを作り、ワークショップや生地の産地を巡る体験企画などを実施する予定だ。

「原石を磨き上げて
育てることが目的」

「『NFDT』は育成を重視するコンテストのため、審査員が審査して終了という一方通行ではありません。応募者と審査員が深くつながり、双方が一体となって新しい価値を生み出そうとする趣旨に賛同しました。本コンテストは、原石のような才能を発掘するだけではなく、その原石を磨き上げて、世界に通用するデザイナーに育てていくことが目的です。また、参加者同士がネットワークでつながりを作っていくことも目指しています。コミュニティーは今年度の参加者だけでなく、昨年度や次年度といった全参加者が年度を超えて同志としてつながることで、社会とのつながり、ひいては時代とのつながりが生まれることに期待しています」。

「プロの意見を聞くことが
デザイナーへの近道」

「私は学生時代、掲示板に貼り出されたコンテストにはほぼ全てに応募し、小さいものも合わせて10個くらい入選しました。自分一人でデザインについて悩むだけでなく、先生や同級生に相談するだけでなく、コンテストで審査員に自分の作品をぶつけてコメントをもらうことが大きな自信につながりました。学生は多くの人の意見を聞きすぎて、自分のやりたいことを見失うときもあるかもしれません。それでも、ファッション業界で活躍するフロントランナーに意見を聞きすぎて、損はないです。ファッションデザイナーを目指すなら、現役のデザイナーの意見を聞いたり、作品を見てもらったりする事が一番の近道だと私は思います」。

着物の生地などを活用し
伝統を継ぐ「SFDA」

「NFDT」と同時開催するのが、着物生地などの活用を想定した「SFDA」である。ウエア部門とファッショングッズ部門の2部門で、着物などの活用アイデアを募る。応募は公式サイトで受け付け中だ。選考の流れは「NFDT」と同様だ。審査員として、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン・ジャパンのノルベール・ルレ(Norbert Leuret)社長と、デザイナーでアーティストの篠原ともえが参加する。ほかにも、リメイクに特化したデザイナーや、バイヤー、ジャーナリストも加わる。

一次審査通過後のワークショップでは、主に着物生地の活用に関する技術を習得すると共に、プロの講師や参加者同士でコミュニケーションしながら、クリエイションやビジネスについて学ぶことができる。日本の伝統文化である着物に次世代の感性を加え、東京発の新しいファッションを世界に発信する。

問い合わせ先
ネクスト ファッション デザイナー オブ トウキョウ事務局
03-5291-1003