コレクション

「ヴァレンティノ オート クチュール」2016年春夏オートクチュール・コレクション

REPORT

「ヴァレンティノ オート クチュール(VALENTINO HAUTE COUTURE)」のクリエイティブ・ディレクターのマリア・グラツィア・キウリとピエールパオロ・ピッチョーリはオートクチュールについて、「短い時間に細かく切り分けられた流行のリズムを超えて生き続けるものでなければならない」と言う。生地から手作業で作り上げるオートクチュールは着物に通じる価値を持ち、ファッションではあるが時間の経過とともにむしろ価値を上げる存在だ。

ドレスやガウンは生地の中で身体が動くゆったりとしたシルエットが主流。ボタンやファスナーといったパーツは見当たらず、大きな一枚の生地を2つに折り、脇を紐で軽く留める。その形がローマ時代の衣服や日本の着物をほうふつとさせるが、女性の身体が入ればあくまで現代的なドレスである。

生地で目を引くのは、極く薄いベルベットだ。近くで見てもシルクにしか見えない光沢感のある白い生地の多くはベルベットで、わずかに起毛し、触ると柔らかく暖かい。繊細なベルベットに使い込んだような加工を加え、刺しゅうやプリーツで装飾を施すのは職人による手作業ならではだ。

19世紀に活躍したアーティスト、マリアノ・ファルトゥーニのテキスタイル・アーカイブとのコラボレーションをはじめ、テキスタイルそれ自体が芸術作品のような存在。古布をパッチワークしたように見えるものは“古布風”に加工してあり、絵画に見えるドレスの裾の蝶柄は手刺しゅうによるもの。いずれもそれ自体を額に入れて飾る価値がある。ただし、ショーの翌日のショールームではこれらの芸術作品のようなドレスを次々と試着する若いセレブリティーの姿が見られる。ローマ発ブランドならではの悠久の美意識を持ちつつ、現代女性のハートをつかむ。そのバランス感覚の鋭さがマリア・グラツィアとピエールパオロの力量だ。

ジュエリーは、アレッサンドロ・ガッジオとハルミ・クロソブスキによるもの。

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