ファッション
連載 マリエが本音で語る「私の33年目のサステナブル」

”ダウン to earth” マリエが本音で語る「私の33年目のサステナブル」Vol.33

 今年の秋冬は、いきなり寒くなった。アウターを新調した、もしくは検討している人も多いのではないだろうか?

 私がダウンの問題に気づくことができたのは、とある大手企業から「ダウンをプロデュースしてほしい」との依頼を受けた2018年のことだ。企画と資料の準備に際してダウンの生産背景を調べた時、全身に身の毛がよだつ採取法もあることを知った。

 もちろん私も、ダウンの暖かさという恩恵を受けてきた一人だ。今でもそう。ただ一部の企業による杜撰さは、見ていられないものだった。それはライブピッキングと呼ばれ、生きたままダックの毛をむしるというもの。人にしたら髪の毛を力づくでむしり取られ、伸びてきたらまた抜き、その生命が果てるまで繰り返されるというものだ。今は規制により改善が促されているというが、まだダウンを不当に扱う工場もあるという。

 そんな中で出合ったのが、リサイクルダウン、green down projectの活動だった。彼らと情報や知識を共有させていただく中でショックだったのは、新品よりもリサイクルダウンの方が清潔という見解。ダウンの資材は、グラム単位で買い取られる。重ければ重いほど高い。そのためピッキングの際に付着した肉片などは、わざと取らないというのだ(一部の生産背景に限るとは思われる)。一方リサイクルダウンは、高い品質基準でクリーニングされた再生資材。なので新品よりも安全・清潔、そしてサステナなダウンができるというのだ。

 ショックは、さらに重なる。依頼を受けた3年前、「ダウンをサステナブルにしていこう!」という活動は、ようやく注目を浴び始めた段階だった。プロデュースの依頼を受けた大手企業に「リサイクルダウンでいきます!これを主流にしましょう!」と提案したら却下されたくらい、サステナダウンは市民権を得られない発想だった。

 あれから急速に企業や人々の意識は変わり、今はダウンブランドも「サステナブルな貢献をしないと!」とプラスマイナスを整えようとしている。

 私自身、「ビーガンですよね?」と聞かれる時が多々ある。でもそんな時私は、「いや、ハイブリッドです」と答えている。もちろん動物愛護の観点から、環境や畜産の観点から、人間が本来持つ潜在能力を引き出すためビーガンを選択することは、地球に共存する上で大切な考え方だ。だがその前に、我々にはするべきことがある。何度もこのコラムで話しているが、「全てを永久資材と考えること」。まずこれが第一歩だ。「OK!そうね!じゃあ私も、今日からビーガン!今まで持っていたものを全て捨てちゃいましょう!」というマインドセットは、一点集中の活動にしかならない。私だけでは変えられないと思われる畜産界の大きな問題として、食用に育てられる動物の外見は捨てられ、一方バッグや靴などのために育てられる畜産は中身が捨てられている。この二つの無駄をドッキングして、少しでも改善すると、二酸化炭素の削減量は、もうみんなが一生懸命「エネルギーを節制しよう」なんて叫ばなくてもいい数値にまで下がるさえ言われている。

 「ファッション」という言葉の語源は流行を意味するもので、衣類そのものを示すものではない。では今の「流行」とはなんだろうか?それは「サステナブル」だ。

 トレーサビリティの取れない新品のダウン。これを読んでもまだ欲しくなった?

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