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語るのは美ではなく「希望」 「KANEBO」が「希望よ、動き出せ。」に込めた想い

 「カネボウ(KANEBO)」は2020年春、美ではなく、希望を語るブランドとしてリブランディング。同年1月に放映したTVCMは、ブランドメッセージの「I HOPE.」を楽曲「唇よ、熱く君を語れ」にのせて発信し、大きな反響を呼んだ。そして今年、「一人一人のポジティブな面を引き出す力として、化粧品も存在したい」(内河昌恵ブランドマネジャー)という思いを込めて作成した新TVCMは、「希望よ、動き出せ。」とのメッセージを伝えるべく、今なお様々な制約を伴う中で生きる世界各都市の人々の、自然でポジティブな表情を切り取っている。新TVCMは、7月18日に放映をスタート。このメッセージに込めた想いや願いとは何か?内河ブランドマネジャーに聞いた。

語るのは美ではなく、「希望」

WWDJAPAN(以下、WWD):親しい人と共に過ごす時間、自分の好きなことをして過ごす時間だからこそ発露した感情や表情を綴った印象深いTVCMだった。6、7月に世界中で発表されているコレクションから垣間見える、「楽しい時間が待ち遠しいんだ」「そろそろ、楽しいことを想像していいんだ」「そんな時、ファッションやビューティは元気の源になるはずなんだ」というデザイナーの想いともシンクロしている。この新TVCMに込めた想いは?
内河昌恵「カネボウ」ブランドマネジャー(以下、内河):今はまだ、さまざまな不安が世界を覆っているかもしれません。でも私たちも「いつかきっと、前を向けるタイミングが来る」と信じています。そしてその時は、化粧品も一人一人に寄り添い、後押しできるはず。「一人一人のポジティブな面を引き出す力として、化粧品も存在したい」という思いを込めて製作しました。ポジティブなムードを表現したい、でも、それを勝手に押し付けてはいけない。そのバランスやメッセージ、放映時期については状況も鑑みながら、考え抜きました。メッセージは、100以上考えたんです。

WWD:ポジティブなメッセージさえ「押し付けてはいけない」という姿勢にも共感を覚える。先日、Z世代のKOLが「“能動的に受け身になる”こと。ブランドは消費者に何か聞かれた時、初めて選択肢を提示するくらいの心構えが大事」と教えてくれた。「ポジティブな気分になりたくなったら、化粧品もあるよ」というムードは、今の時代感にマッチしている。
内河:「希望を持つこと」を押し付けたくはありません。でも希望があると、苦しい時、心がふっと軽くなることがあります。私たちは、それぞれが意志を持って歩き出す時が来ることを信じています。そして、そんなとき化粧品も、その人に寄り添い、ポジティブな力を引き出すことができる存在でありたいと思っています。そんな想いを込めているんです。

「一番ポジティブさが伝わる」のは
口紅

WWD:コロナ禍の撮影で苦労したのは?
内河:多様な希望の形を表現したかったので、世界各都市の生活そのものを切り取り、真実で自然な笑顔からポジティブな生命力が溢れる瞬間を紡ぎました。もちろん現地には赴けなかったので、各都市をオンラインでつなぎ、ミーティングを行いました。でも、「親密な人との絆」や「心の発露」そして「遊び心」などをポジティブな要素として組み合わせたいとの想いは、各都市の監督を含め、多くの方に共鳴いただけました。

WWD:カラーメイクの中では、口紅をフォーカスしている。正直、コロナ禍の今は一番苦戦しているアイテム。でも、コロナの収束が見えてきたアメリカではネットでの検索数が大幅に伸びているアイテムとも言われている。口紅は、希望の象徴として選んだ?
内河:「一番ポジティブさが伝わるのは、どのアイテムなんだろう?」と考え、口紅を選びました。幼い頃、お母さんの口紅をこっそり使ってみた時のいたずらしているような遊び心。初めて塗った時の、ちょっと背伸びしているようなドキドキ感。そして今も、自分にとって新しい色を塗るときに感じるワクワク。単純に唇に色をのせるという特性だけを表現するのではなく、子どもが手に持つ、空間に色をのせる、ワクワクするようなアートワークが流れ出すなど、希望の象徴としてさまざまな描き方をしました。

カネボウ化粧品は長年、
強く美しく生きる人を応援

 WWD:そもそも昨年、美ではなく、希望を語るブランドとしてリブランディングした背景は?
内河:世界には、モノや情報があふれています。でも、私たちは幸せなのでしょうか?もちろん希望もありますが、一方で閉塞感を覚える機会も多く、将来に不安を感じている人も多いのでは?正直「希望がある時代」ではなく、「希望が必要な時代」なのかな?と思うんです。

WWD:同時に多様性が叫ばれ、それぞれが、それぞれの「自分らしさ」に自信をもって生きていく時代になっている。
内河:おっしゃる通りです。お化粧は身だしなみや欠点をカバーするものととらえられてきましたが、これからは一人一人の個性を讃えたい。カウンセリングなどの丁寧なコミュニケーションを通じて、それぞれの美はもちろん、希望まで引き出せるブランドになりたいと思いました。そんな風に思っていたら、カネボウ化粧品は元来、人々を応援するメーカーだったことに改めて気づいたんです。例えば今から40年以上も昔の1979年には全国紙の新聞広告で、来日したサッチャー首相(当時)を歓迎する気持ちに今後の女性像を重ね合わせ、「これまでの女性像を超えて社会的にも目覚ましい活躍をしてほしい」というエールを日本の女性たちに送っています。強く美しく生きる人たちを応援し続けているんです。希望を見出すと、気持ちが、行動が変わる。そのパワーは社会まで変える力になると思っています。「I HOPE.」という言葉には、私たちの、そんな希望も込めています。

WWD:勇気ある想いの発信は、消費者にも伝わっていると思う?
内河:リブランディング当初から「化粧品ブランドが、ここまで言ってくれるのか!」というお声をいただいています。徐々に幅広いお客様にも受け入れられるようになってきました。私たちの想いを形にした製品の指名買いも増えています。

個性を引き出し、
加速させる製品を

WWD:想いは、コミュニケーションだけじゃなく製品にも詰め込んでいる?
内河:秋にむけて発売する「スマイル パフォーマー」はその名の通り、笑顔を呼び覚ますようなシートマスクです。コロナ禍により、マスクをつけて過ごす日が増え、笑顔が減り、無表情な時間が増えたことに着目して誕生しました。シートマスクが、頬と口角、フェースラインをこめかみに向かって引き上げて、「笑顔」を形作り、さらに気分まで引き上がることを目指して開発しました。うるおって、ハリとツヤに満ちた肌に導いてくれます。さらに内側にある強さや気高さを引き出すような血色カラーで、ケアまで同時に叶えるリップ、影色を仕込むことでなりたい印象を自在に操るアイブロウシリーズなど、何かをカバーしたり、覆い隠すのではなく、その人らしさを引き出し、高めていくための製品づくりを心がけています。

問い合わせ先
カネボウインターナショナルDiv.
0120-518-520