「WWDJAPAN」5月17日号では「複業を解禁せよ! 多様な働き方」特集を行った。本業(正社員)を続けながら行うサイドジョブを「副業」と呼ぶのに対し、「複業」は自分の能力を生かしてマルチに働くことを指す。特集ではファッション&ビューティ業界でマルチに働く”複業人”を取材。これからの時代、ますます注目されるであろう複業にクローズアップする。

小林紀子/スマイルズ 経営企画本部 人事総務部部長(右)PROFILE:(こばやし・のりこ)仙台市出身。アパレルメーカーやインテリア企業の人事を経て、13年11月にスマイルズに入社。人事労務全般をはじめ、複数の事業に応じた規程や制度を構築し、多様な働き方ができる環境を整える
花摘百江/スマイルズ クリエイティブ本部 広報 兼 スマイルズ生活価値拡充研究所所長 兼 研究員(左)PROFILE:(はなつみ・ももえ)2014年スマイルズに新卒入社。スープストックトーキョーでの店舗勤務、採用担当となる。16年に社外広報、20年からスマイルズ生活価値拡充研究所の所長兼研究員を兼任。複業として独立系の音楽レーベル、建築設計事務所、アパレルメーカーの仕事も受けている PHOTO:KAZUSHI TOYOTA
「スープストックトーキョー(SOUP SROCK TOKYO)」や「パスザバトン(PASS THE BATON)」「おだし東京」などを手掛けるスマイルズでは、複業で二足、さらには三足と“わらじ”を履く人材が活躍する。「一つの選択肢に捉われず、複数の仕事を持つことが人生をより豊かにする」という思いから、“副業”ではなく、“複業”と呼んでいる。自ら複業を実践する遠山正道社長、制度構築を行った小林紀子・人事総務部部長、そして3つの複業の仕事を掛け持つスマイルズ生活価値拡充研究所の花摘百江・所長権研究員に複業の魅力を聞いた。
遠山正道 社長(以下、遠山):私は「フリーのサラリーマン時代が来る」と思っている。さまざまな会社や働き方があるが、ざっくりと農耕型(経理など)と狩猟型(営業など)に分けられる。この時代に、1000人をずっと雇っていくのは正直難しく、人々がプロジェクトごとに集まっていくような“プロジェクト化の時代”になっていくだろう。
WWD:“プロジェクト化の時代”とは?
遠山:例えば、1つの映画のために、監督や俳優、ヘアメイク、コスチュームデザイナーなどが集められ、いい作品ができたら解散するというスタイルだ。そのプロジェクトに応じたチームが結成されることで、企業にとっても鮮度の高い、守備範囲の広いネットワークを構築できる。例えば、社員のスマイルズの仕事を6割にすることで、残り4割でほかの仕事できるようなイメージ。システムに依存していると、会社も社員もリスクがある。全体の10%を社員にして、残り90%を「フリーのサラリーマン」にすれば、一人一人が自律し、生き方も充実して、会社も“魅力的な人たちの集団”になるだろう。
花摘百江クリエイティブ本部 広報 兼 スマイルズ生活価値拡充研究所所長 兼 研究員(以下、花摘):2017年に「社長も複業の時代」を宣言し、18年4月にはスープストックトーキョーで複業を認める「ピボットワーク制度」を解禁した。この制度によって社外だけでなく、約20社あるグループ、出資・インキュベーション企業にも複業で籍を置くことができるようになった。
WWD:どのような制度なのか?
小林紀子・経営企画本部 人事総務部部長(以下、小林):18年にスープストックトーキョー社では「働き方“開拓”」として、2つの制度を導入した。ひとつは「生活価値拡充休暇」制度で、本社社員だけでなく店舗で働く社員も含め給料はそのままに、年間休日休暇を120日に定めた。増えた休みの時間をどう使うかは社員一人一人次第だが、本業を磨くための学びの時間にしたい人には、スープストックトーキョーで働くことに“軸足”を置きながら、複業ができる働き方「ピボットワーク制度」を導入した。一般的には、同業への複業を禁止している企業もあるが、当社は認めている。他社の飲食店でも人材教育やカスタマーサービスなどを学ぶことで、“軸足”の事業に生かすことができる。
WWD:同業への複業を認めたら、優秀な人材が流出するリスクはないのか?
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