ビジネス

「以前から厳しい売り上げ、それがコロナで“とっ散らかって”……」 業界の悩みを「心に火を灯して」解決しますVol.2

 ファッション&ビューティ業界は「変革」を謳っているけれど、実は「どう変わったらいいのか?」さえ見つからない人はいませんか?目指す姿は見えているけれど、実は迷っていたり、くじけそうになったりしている人はいませんか?そんな「登るべき山」が見つからなかったり、山は見えているけれど道を照らすトーチの火が消えそうだったりのアナタに、人の「心に火をつける。」ことを目指す神保拓也トーチリレー代表取締役“隊長”が向き合います。

 2回目の「心に火をつけたい」と願う相談者は、とあるブティックのディレクターBさん。数字しか見ない上司、「頑張ります」しか言ってくれない同僚、そして厳しい売り上げ……。悩みが“とっ散らかっている”と話す彼女の心に、登るべき山に向かうためのトーチの火を灯します。

神保拓也トーチリレー代表取締役“隊長”(以下、神保“隊長”):早速、今、何に悩んでいるのか、教えてください。

Bさん:以前からずっと「しっくり来ない」状態だったところ、新型コロナウイルスが蔓延して、頭の中が“とっ散らかって”いるんです。

神保“隊長”:どう、“とっ散らかって”いるんでしょう?

Bさん:全体的に、です。私は、店舗を統括する立場。スタッフの頑張る意欲や、私についてきてくれる意識は高く、スタッフとのコミュニケーションが足りていないとは思いません。ただ「みんな、同じ方向を向いているの?」と問われると、そもそもズバッと「この方向に進みたい!」と言い切れないんです。日々は売り上げも厳しく、スタッフが望むリーダー像を体現できているのか不安です。ショップは、アパレル経験者がいない中でスタートし、現在は数店舗とEC。顧客管理や在庫管理もわからない状態から模索を続け、いまに至っています。だから今のように迷っても、相談できる人が社内にも社外にもいないんです。これが、根本的な問題なのかもしれません。ロジカルな解決策に辿り着かず、複数の頭で考えたいと後輩に相談しても「頑張ります」以上の答えはありません。一方役員は、数字しか見ない。本当に“放置プレー”なんです。最近は「このままだと、閉店するしかない」と言われることもあります。

神保“隊長”:役員の方は、閉店しても構わないと思っているのでしょうか?

Bさん:気分屋なところがあって、数字が落ちると強く当たるんです。「潰したい」ワケではないでしょうが、売り上げは本当に厳しくて……。プライベートブランドも計画しているのですが、店舗数が減ると売れる数も減少するので、計画そのものが“おじゃん”。最近は、閉店の話が具体的になっています。

神保“隊長”:閉店で一番困るのは、経営陣だと思うのですが……。

Bさん:自分たちの“想い”がないんだと思います。経営者として「これだけ赤字が続くと無理だよ」という話は、「いよいよ」という局面でしか言ってくれません。売り上げが良いときは何も言わないのに、落ちると怒られる。そして私たちは数字の読み方を教えてもらっていないので、正直わからないんです。言われて気づくことも多く、「もっと早く教えて欲しかった」と思います。上から具体的な話がないから、私たちだけでは突破口を見つけられないんです。

神保“隊長”:後輩に相談という話がありましたが、彼女たちに意見を募るのは、無理難題なアプローチです。経験不足で視野もまだ広くないでしょうし、そもそも問題を“自分ごと化”できるとは思えません。責任を負っていない人に「何かある?」と聞いても、意見はなかなか返ってきません。「私たちは、こういう山に登りたいの。標高はどのくらいで、現在地はココ。登り始めると、こんなコトが予想されるけれど、どう思う?どんな登山グッズが必要?」と聞けば、考える軸が存在するので意見が出てくると思います。でも「この山に登りたい」がボンヤリしているタイミングで「どの山に登りたい?」と聞かれるのは、とてもシンドい。スタッフをいたずらに追い込んでいる可能性があります。ただ、お店のホームページやインスタグラムを見る限り、みんな仲良く、裏表がないカンジですよね?

Bさん:それは、自慢できます。

神保“隊長”:だとするとスタッフは、Bさんの悩みに薄々気づいていると思います。でも何もできず、「頑張ります」しか言えない。今の状況で、彼らに期待するのは逆効果かもしれません。まずはリーダーが「登る山」をハッキリ決めなければ。お店のコンセプトは、言語化できていますか?

Bさん:アパレルの未経験者ばかりだったので、MDも“とっ散らかって”います。「大人がファッションであそぶ」をテーマにテイストを絞っていないので、モードも、フェミニンもあるんです。かっちりしたパンツも、花柄のワンピースもあります。1つのビジュアルを作るのが、非常に難しい状況です。

神保“隊長”:「大人がファッションであそぶ」というコンセプトを、もっと研ぎ澄ましましょう。「あそぶ」って、なんでしょう?「ファッションであそぶ」ってどういうシーンですか?「今日は、ファッションであそんだ~」って思うのは、どんな一日ですか?みなさんの原点である「大人がファッションであそぶ」を解析するんです。ロイヤルカスタマーの来店理由は?その理由を語ることができますか?「スタッフが好き」「空気感が心地よい」など、どんな理由で買ってくださるお客さまがいるのかを適切にグルーピングできますか?

Bさん:「やっぱりお店で買いたい」という方が多く、スタッフが好きだから顧客になってくださる方が多いように思います。退職者が出ると、売り上げが大きく下がりますから。スタッフの提案を楽しみ、フルコーデを依頼してくださる方もいます。テイストを絞っていないから、仕入れは薄く幅広い。「ほかにはないものがある」「買い逃すと無くなっちゃう」と思ってくださる方も多いですね。

神保“隊長”:カスタマーが、ロイヤルカスタマーになった“きっかけ”はなんでしょうか?何かの会話、相性、きっかけでロイヤルカスタマーになったハズです。決して「ロイヤルカスタマーをもっと増やしましょう」と言っているのではなく、「ロイヤルカスタマーは、なぜBさんのお店で買ってくれるのか?」を聞いています。それが言語化できないと、作戦が立てられません。

Bさん:洋服を着て、人から褒められた体験をされている方が多いと思います。カラー診断で凝り固まっていた人には、少し個性的な洋服とコーディネートを提案。すると周りの方から褒めてもらえて、という体験をされるようです。そんなお客さまは、すぐに何人も思い浮かびます。

神保“隊長”:とても素敵な話じゃないですか。まさに「ファッションであそぶ」楽しみをお客さまに提供しているわけですね。リアリティのある返信が返ってきました。スタッフは今、何人くらいいるのですか?

Bさん:15、16人ですね。

神保“隊長”:インスタグラムを活用しているスタッフは?

Bさん:全然ダメです。みんな、得意じゃありません。

神保“隊長”:なるほど……。御社の強みと、戦略がマッチしていませんね。話を聞く限り、Bさんのお店の武器はスタッフです。でも現状は、お客様が来店しない限り、武器が全く活かせていない。こんなにもったいないことはありません。ロイヤルカスタマーが多いスタッフには、必ず何か強みがあるはずです。店舗よりもフォロワー数の多い個人アカウントを持つスタッフが現れても、本来おかしくないはずです。少数精鋭の店舗で、販売員をショップの中だけに閉じ込めておくのは、今の時代とてももったいないことです。今は、個にファンがつく時代。「どの店で買う?」ではなく、「誰から買う?」の時代です。そういう意味においては、Bさんのお店は、良いポジションにいると思います。「あの人から買いたい」という、ロイヤルカスタマーがいるんですから。だからこそ、はじめてのお客さまがロイヤルカスタマーになるまでの道のりを、もっと語れるようになりましょう。優秀なスタッフの接客に耳を傾け、“歴史が動いた瞬間”を見つけましょう。それを繰り返し、売れるまでのメカニズムを解析。トップ販売員が「無意識」にやっていることを含め、メンバーに横展開するんです。すると、皆のモチベーションが上がり始めます。これからの時代は、個が輝けば、本人も店舗も得をする。フォロワー数に応じてインセンティブを支払うとか、インスタグラム経由の来店やECへのコンバージョンを評価してあげることが大事です。すると皆、自分を自然とブランド化するようになります。店舗に搾取されるのではなく、「私が売れれば、店舗も儲かる」のシステムを作るんです。

Bさん:インスタグラムには以前挑戦したのですが、管理しきれず、方向性が定まらないことを心配してしまい、結局、止めてしまいました。数字で評価されるのは、プレッシャー。嫌がるスタッフもいます。

神保“隊長”:絶対に減点ではなく、加点評価にしなければダメです。究極、やらなくても良い。でも、やったほうが得をするという仕掛けが必要です。そして「現状を打破するために」ではなく、もっと「大人がファッションであそぶ」ために導入する。新しい取り組みを導入するには、スタッフが納得できるストーリーも大事です。SNSについては、どの企業も「管理できない」「カラーが統一できない」と悩んでいます。でも僕は経営者に「それで、何を失うの?」と言いたいんです。「管理できない」と言いますが、やましい経営をしていないのなら、管理すること自体が“おこがましい”。それは、見えない敵を恐れているだけ。何を管理したいんでしょう?何を失うんでしょう?そして、それだけ仲の良い同僚を信じられないのはなぜでしょう?会社のカルチャーやコンセプト、その狙いを理解していれば、みんなちゃんとやってくれます。みなさんが一緒に働いているスタッフは、そういうメンバーでしょう?信じて、自由にさせなくちゃ、もったいないんです。重要なのはスタッフに、何を、どう伝えるか?です。今のままでは、WhatとHowが弱すぎます。一通りのIGTVを拝見しましたが、シャツワンピを紹介する動画の再生回数が、他の7倍とズバ抜けて高いですよね?それは、なぜでしょうか?理由を言語化してみましょう。何がウケて、何がウケないのか?それを投稿のたびに分析しましょう。今は投稿を継続することに必死で、「先週よりも今週」という反省と分析が不十分です。ファーストリテイリングのスゴさは、商品力や価格だけではありません。経営努力です。あの会社は、「今年のコレは、何が良かったのか?何が悪かったのか?」を毎年考え続けています。年を跨いだABテストさえ行っています。ファーストリテイリングは、ファッションの前に、「経営」をしている。経営を伴うファッションだから、強いんです。ファッション業界は「センスが大事」と思いがちで、「分析する」「科学する」「哲学する」が苦手。だからみんな風邪を引いています。「ユニクロ」など、数社だけが元気です。どうしてアパレル業界だけ、ひどい風邪をひいているのか?理由は、「経営」と一番遠い業界だからだと思います。もちろんセンスが光る世界ではありますが、もうちょっと真剣に経営に取り組んでも良いのではないでしょうか?話を、インスタグラムに戻しましょう。現在は自社で扱う商品だけを投稿されているようですが、「大人がファッションであそぶ」なら、主役は、お店で売っている商品だけじゃなくても良いかもしれません。すでにお客さまのクローゼットの中にある洋服を主役にした投稿なども面白いのではないでしょうか?例えばインスタライブで、ロイヤルカスタマーの洋服をコーディネイトする、なんて企画に挑戦するのはどうですか?なぜなら御社は、商品だけでなく、スタッフの人柄やセンスも売っているのですから。ショップで無料のコーディネート相談会を開いて、その模様をSNSで発信。そうすれば発信する素材も同時に集められるます。今日お伝えしたのはあくまで一例ですが、とにかく自分たちのコンセプトや強みを改めて言語化し、ファッションだけではなく「経営」をしましょう。効果が現れるには時間がかかると思いますが、夜は、夜明け前が一番暗いものです。でもトーチの明かりを頼りに、朝を一緒に迎えましょう。

心に火がついたBさんの感想

 ぶっちゃけてしまいますと、前日は「どうしようもないね」「ダメダメじゃん」と叱られるかな?なんて思っていたのですが、杞憂でした。神保さんに“とっ散らかった”頭を整理してもらい、叱咤激励していただいて、目が覚めました。特に「テイストで定めず、『ファッションであそぶ』というMDでいいじゃない」とのお言葉には、眼から鱗がバラバラと落ちる音が自分でも聞こえるぐらいの衝撃を受けました。灯してもらった火は、無事に持ち帰りました。まずは山を具体的にしたいと思います。あの後上司とすぐににランチミーティングして、今日は産休中のトップにも参加してもらいました。方向性は定まってきたので、後はどんどん研ぎ澄ませていけるよう、スピード感も意識しつつ、着実に進めていこうと思います。何よりも、ドンと背中を押してもらったこと。とても勇気を与えてもらえました。火を灯してもらい、叱咤激励いただいたこの想いを今後、スタッフに、お客さまに、と伝えていければと思っています。本当にありがとうございました!また悩んだときには相談させてください。でも、そうならないようにしばらく頑張ってみます!


お知らせ:販売員のES(従業員満足)とCS(顧客満足)の改善を図るクラウド「SEEP(シープ)」と、人の心に火をつける“トーチング”を手掛けるトーチリレー、そして「WWDジャパン」は今春、DXやOMO時代におけるリアル店舗のあり方を考える大型セミナーを開催します。セミナーの申し込みはコチラ


最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2022年春夏速報第二弾は、注目の3大ムードを解説 日本から唯一現地入りしたビームスのリポートも

今週号は、日本からパリコレ入りしたおそらく唯一のショップ関係者であるビームスの戸田慎グローバル戦略部長によるパリコレダイアリーからスタート。来年本格始動する海外ビジネスのために渡航した戸田部長が目にしたパリコレ、展示会、パリの街並みをお伝えしつつ、そこから感じたこと、業界人がみんなで再考・共有すべきファッションへの想いを存分に語ってもらました。トラノイやプルミエール・クラスなどの現地展示会の雰囲気…

詳細/購入はこちら