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齋藤飛鳥 × 富田望生が語るドラマ「まめとむぎ」——無理に近づかないから生まれた“心地よい関係性”

PROFILE: 左:齋藤飛鳥/俳優 右:富田望生/俳優

PROFILE: 左:(さいとう・あすか)1998年8月10日生まれ、東京都出身。2011年に乃木坂46の1期生としてデビューし、23年に卒業。最近の主な出演作にドラマ「Tシャツが乾くまで」(TBS系)、「テミスの不確かな法廷」(NHK総合)、映画「クスノキの番人」、「【推しの子】-The Final Act-」など。25年に第48回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。現在、ドラマ「幸せカナコの殺し屋生活2」(DMM TV)が配信中。 右:(とみた・みう)2000年2月25日生まれ、福島県いわき市出身。2015年、映画「ソロモンの偽証 前篇・事件 / 後篇・裁判」にて、オーディションでメインキャストに選ばれ、俳優としての活動を開始。現在、舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』世界5カ国で上演中。27年1月〜舞台「リアルワールド」(東京芸術劇場プレイハウス 他)に出演予定。27年前期 連続テレビ小説「巡るスワン」(NHK)への出演が決まっている。

漫画「じゃあ、あんたが作ってみろよ」などで現代の生きづらさや等身大の人間模様を丁寧に掬い取ってきた漫画家・谷口菜津子の「まめとむぎ」が、新たにテレビ東京でドラマ化された。W主演を務めるのは、独自の透明感とクールな眼差しを持つ齋藤飛鳥(清水麦役)と、確かな表現力で現場に生気を吹き込む富田望生(米田まめ役)。正反対に見える2人が現場で培ったのは、過度な共感や同調を求めない、心地よくも誠実な連帯だった。劇中の重要なモチーフである「発酵」を手がかりに、役へのアプローチ、不器用な自己との向き合い方、大人になってからの距離感、そして自身を整えるサードプレイスについて話を訊いた。

塩麹のように「ほぐれていく」関係性

——現代の生きづらさや等身大の人間関係を描いてきた谷口菜津子さんの原作に触れた際、表現者としてどのような魅力を感じましたか?

富田望生(以下、富田):登場人物がみんな愛くるしいんです。最初に「クセが強いな」と感じる人物であっても、突発的な劇的変化ではなく、日々の時間を共に過ごす中で徐々にほぐれていく。料理で例えるなら、塩麹を入れると全体がまろやかになって素材の味を包み込んでくれるような感覚です。「こういうドラマチックな出来事があったから成長した」という直線的な積み上げではなく、生活の中で本来持っていた角が取れて、周りの硬いものがほぐれていく、というような。階段を一段ずつ上るというより、ふわーっとぐるっと、成長していく。そういうふうに人間味が深まっていくのが、谷口先生の描く世界の魅力だと思います。

齋藤飛鳥(以下、齋藤):まさに望生ちゃんが言った通りですね。人は無理に変わらなくても生きていけるし、他者に必ず影響を受けなければいけないわけでもない。それでも、誰かと過ごす中で自然と柔らかくほぐれていく。谷口先生の視線はすごく愛情深いと感じます。完璧な人間なんていなくて、どこか不器用で生きるのが下手な部分こそが、愛すべき人間味として描かれているんですよね。

——実際に撮影を重ねる中で、ご自身が「ほぐれた」と実感する瞬間はありましたか?

富田:ご飯を食べている時もそうですし、現場で誰かと誰かの強張りが解けた瞬間を見ているだけでも、自分自身が自然とほぐれていく。

齋藤:人のほぐれている姿を見て、こちらもポーンと照らされるような感覚があり、その温かな連鎖がずっと続いていく感じです。

「逃げない強さ」と「一生懸命さ」がもたらす引力

——演じられた麦とまめ、それぞれのキャラクターをどのように捉えていますか。また、似ている部分はありましたか?

齋藤:私が演じた麦は、生きていくのがあまり上手ではないタイプなんだろうなと思いました。自分や周囲を大切にしながら生きていくことがあまり上手にできない女の子。でも真面目で、ピュアな心も持っているので、周りの影響を受けて、ちゃんと変化することができる人。私自身も器用に生きられるタイプではないので、すごく共感しました。だから似ているというより、「麦ちゃんみたいにしっかり生きたいな」と刺激をもらう存在でした。

そして麦ちゃんの好きなところは「最終的に逃げない」ところ。最初は自分の過ちや自分を責める人たちから逃げてしまいがちで、まめの眩しさに引け目を感じていた部分もあったはずです。けれど、まめや周囲から刺激を受ける中で、自分がしたことや批判的な声の理由にきちんと向き合おうとする。それって言葉にするほど簡単ではないからこそ、すごく魅力的な強さだと思います。

富田:まめちゃんはとにかく真っ直ぐで、思い立ったらすぐ走り出してしまう女の子。でもその勢いの根底には「相手を思う気持ち」や「今ここにいられることへの感謝」がちゃんとある。だからこそ、一生懸命なんですよね。私と似ている部分は……なんだろう。

齋藤:似てるところあると思う! 撮影現場でも、まめちゃんが持ち前の明るさで場の空気をガラッと変えてくれるように、望生ちゃんが現場に来るだけでみんなの温度が上がるんです。「役としてのまめ」が来たのか、「望生ちゃん」が来たのか分からなくなるくらい重なっていて、その存在感にすごく助けられました。

富田:うれしい! たとえ過去に他者から受け入れてもらえない経験の方が多かったとしても、「ここに一歩足を踏み入れてくれたなら、いい空間にしたい、いい気持ちになってほしい」と願うのがまめちゃんなんですよね。そこは、現場づくりに向き合う自分自身の姿勢とも重なる部分がある気がします。

重なり合う食の共通点

——2人の間には、人としても役としても心地よい温度感の一致を感じます。現場でのコミュニケーションを通じて、共通点や親近感を覚えたエピソードはありますか?

富田:撮影の合間に「あれが好き、これが好き」という日常の雑談をよくしていましたね。カメラのセッティング中に私がふと「冷やし中華食べたいな」と呟いたら、「同じこと思ってた!」ってなったり(笑)。

齋藤:細かいことですが、さっきも「すき焼きは豚肉が美味しいよね」という話で盛り上がったりして。そういう日常の些細な味覚や感覚の一致が、現場のあちこちで見つけられた気がします。

富田:ただ、もともとの性格が一緒かと言われると、決してそうではないんですよね。正反対の2人が、同じ方向を向いて一緒に階段を上っていく感覚。劇中の2人がお店を盛り上げようとする姿勢と、私たちが現場で「いい作品を完成させたい」と願う熱量は、すごく似通っていたと思います。

齋藤:まさに私たちは“リアルまめとむぎ”という感じでしたね。

「腐敗」を「発酵」に変えるそれぞれの意識

——劇中では人間に美味しい変化が起こることを「発酵」と呼んでいます。挫折や過ちを腐敗で終わらせず、自身の糧(発酵)へと変えるために、2人はどんな意識を持っていますか?

富田:「認めること」と「受け入れること」だと思います。それがたとえ自分のダメな部分であっても、なかったことにせず、人生の糧として自分の中に落とし込むこと。私自身の話でいうと、嫉妬とか悔しい気持ちがあった時はバイトをしました。

中学生からこの世界に入ったので、一般的なアルバイトの経験がなかったんです。でも、演じる役柄は市井を生きる生活者が圧倒的に多い。その度に「普通の生活の感覚が欠落している」と痛感していたんです。ある時、同世代への嫉妬や悔しさを感じたタイミングで、よく行くご飯屋さんや和菓子屋さんで「バイト募集」の張り紙を見つけてはスキマ時間で時給1000円ほどのバイトをさせてもらいました。1時間をかけて地道にお金を稼ぐ苦しさや、生活のありがたみ、その実感を正しく知れたことが自分にとっては重要で。それも心の中にあった焦りや魔物を払ってくれた発酵期間だったと思います。

齋藤:望生ちゃんの言う「受け入れる」ことも大切ですが、私は「ちょっと逃げること」も同じくらい大事だと思っています。何でもすぐに受け入れて、反省して、きれいに消化できるほど強い人間ばかりではないでしょうし。私自身、すぐに距離を取ったり逃げたりしてしまうタイプですが、その「逃げた時間」や「距離を置いた経験」も、後から振り返れば全部発酵のプロセスの一部になるんだと今は考えています。

劇中の「人間に美味しい変化が起こることは発酵なんだよ」という言葉が私は好きで、腐るか発酵するかは解釈次第なんですよね。腐っているなと思ったら、「まあこれも一個の経験だし、もっと未来に進んでいったら笑えるようになっているだろうな」と思うようにしています。

大人の心地よい連帯とサードプレイス

——大人になるにつれ、他者との距離感の取り方は難しくなります。2人が心地よい人間関係を維持するために、プライベートや現場で意識している「マナー」はありますか?

齋藤:望生ちゃんはすごい上手だよね。よくしゃべってくれるし。

富田:でも私はどちらでもよくって、近づいてくれるなら嬉しいし、離れていくなら「また新しい発見を探しに行ったんですね」ぐらいの気持ちでフラットに考えています。意識しているのは「スケジュールや関係性をガチガチに決めすぎないこと」ですね。「ここに行って、これをして、相手を喜ばせなきゃ」と考えすぎると無理が生じて長続きしないので。

実際にこの前、友達と地方へライブを観に行ったんですけど、日程と宿泊先だけ決めていて、何時の新幹線に乗るかも翌日いつ帰るかもお互いに決めていませんでした。それでも心配なく楽しめる仲間だと長続きするので、自分が無理をしないことはとても大切にしています。

齋藤:私は人と接することが本当に下手で……(笑)。これまでは「協調性を持たなくては」と無理に頑張ろうとしていた時期もありましたが、今は「人と接することが上手ではない自分」のまま、周囲に理解してもらったり、そこに少し甘えさせてもらったりするようなフェーズに入りました。今回も、無理にグイグイ距離を縮めようとアプローチするのではなく、「望生ちゃんなら、私のこの距離感を分かってくれるかな」と自然体で委ねていました。無理な演出をしないことが、結果として一番嘘のない関係性に繋がった気がします。

——麦にとって発酵居酒屋「大豆堂」がサードプレイスになっていくように、2人にとって職場や自宅以外で「ここに行くと素の自分に戻れる」という場所があれば教えてください。

富田:私は「公衆浴場(銭湯)」が好きで、日常的に通っています。お湯に浸かったら気持ちがほぐれ、水風呂で引き締まる。サウナにいる人も一人で来ている人も、みんな他人に干渉しないですよね。あの空間に身を置くと、自分が抱えている悩みや疲れが「なんてちっぽけなんだろう」とストーンと腑に落ちるんです。

齋藤:私は「海」ですね。何時間でもぼーっと眺めていられます。海を見てモヤモヤが即座に解決するわけではなく、ずっとぐるぐる考え続けてしまうこともありますが、海と対峙しているうちに、自分なりの「落としどころ」や出口が見つかる。自分を一度ちっぽけな存在に戻して、答えを持って帰るための大切な場所です。

PHOTOS:TAMEKI OSHIRO
STYLING:[ASUKA SAITO]YUDAI ICHINOSAWA(TEN10)、[MIU TOMITA]MIREI IKEDA
HAIR & MAKEUP:[ASUKA SAITO]MAIKO INOMATA(TRON)、[MIU TOMITA]MARIKO CHIBA

[MIU TOMITA]イエローシャツ 16万2800円/アランポール(THE WALL SHOWROOM 050-3802-5577)、リング 46万6400円/ビジュードエム(ビジュードエム 六本木ヒルズ 03-6271-5353)

作品概要

◾️テレビ東京ドラマ24「まめとむぎ」
2026年10月2日スタート
毎週金曜 深夜24時12分〜24時52分放送
放送局:テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送
原作:谷口菜津子「まめとむぎ」(双葉社)
出演:齋藤飛鳥、富田望生
濱尾ノリタカ、石川瑠華、山谷花純、橋本淳、長井短、八木アリサ、タカハシシンノスケ、嶋田久作、ふせえり 他
脚本:山田能龍、太田勇(テレビ東京)、畑中みゆき、金子学
監督:畑中みゆき、太田勇(テレビ東京)、原島孝暢
オープニングテーマ:BIBI「Yochi!」
エンディングテーマ:仲川瑠夏「朝にならないで」(Sony Music Labels Inc.)
チーフプロデューサー:北川俊樹(テレビ東京)
プロデューサー:太田勇(テレビ東京)、池本翔(ユニオン映画)
制作:テレビ東京、ユニオン映画
製作著作:ドラマ「まめとむぎ」製作委員会
https://www.tv-tokyo.co.jp/mamemugi/

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