
100年の美学を現代に紡ぐ
洗練とぬくもりが共存する空間
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店内は地下1階から地上3階までの計4フロアで構成する。オーク材などの木のぬくもりに、シルクのカーペットや大理石のテーブル、ビンテージ家具を組み合わせ、まるで邸宅のような心地よい空間に仕上げた。1階にはアクセサリーやレザーグッズ、スカーフ、ストールとともに一部のウィメンズウエアをそろえ、2階ではウィメンズコレクションをゆったりと見渡せる。
3階に上がると、ブランケットやテーブルウエアなどをそろえたホームコレクションが広がる。イタリア人アーティストのサルヴァトーレ・エンブレマのジュートを用いた作品「Untitled/Moustache」や、ミラノ・デザインウイーク2026で初披露したブランケット「オラ・ドーロ」といった作品が空間を彩る。さらに、鏡張りの扉の奥には、完全予約制のVIPルームを設置。華やかなムラーノガラスのシャンデリアを配したウィメンズの部屋と、ウオークインクローゼットを思わせる落ち着いた色調のメンズの部屋をそれぞれ用意し、特別なショッピング体験を提供する。
地下1階はメンズフロア。初期のブティックで使用していたオープンタイプの什器「パンタロナイオ」が、メゾンの歴史を物語る。そして、同店ならではの見どころとも言えるのが、同じ地下1階に設けた「ロロ・ピアーナ・アトリエ」だ。ここではビキューナやベビーカシミヤ、「ザ・ギフト・オブ・キングス®︎」など、メゾンが誇る希少な天然素材の魅力や、それらを製品へと昇華させる職人技を紹介。さらに、大切なウエアを長く愛用するための修理やケアサービスも提供する。最高品質の素材を追い求めてきたメゾンの歴史と哲学を、買い物を通じてより深く知ることができる空間になっている。
10月29日~11月1日には、メゾンの100年にわたる素材探求の歩みをたどるインスタレーション“Master of Fibres”を開催する。カシミヤの原毛を使った彫刻的な展示に加え、イタリア・ヴァラッロに保管する膨大な歴史的アーカイブから貴重な資料を公開する。希少な天然繊維を追い求め、最高品質のテキスタイルへと昇華させてきた「ロロ・ピアーナ」のモノ作りの神髄に迫る。
「ロロ・ピアーナ」は、
無限の可能性を秘めた魅力的なメゾン
WWD:表参道に旗艦店を構える理由は?
フレデリック・アルノー=ロロ・ピアーナ最高経営責任者(以下、フレデリックCEO):表参道は、世界有数のショッピングエリア。昔から多くのブランドが拠点を構えているが、「ロロ・ピアーナ」は初出店だ。「ロロ・ピアーナ」は1924年にテキスタイルメーカーとして創業し、繊維や糸から徹底的にこだわり、創業以来、最高の品質を追求してきた。完成した製品を作りを始めたのは、セルジオとピエール・ルイジ・ロロ・ピアーナ兄弟の時代に入って以降の80年代のこと。そして99年、日本初のブティックを構え、今に至っている。ずいぶん昔のように思えるかもしれないが、ラグジュアリーの世界では、実はごく最近のことだ。私たちは今なお、日本との絆や歴史を築いている最中だ。だからこそ表参道の店舗は、大きな意味を持つ。戦略的市場の日本のお客さまは洗練されており、ディテールや職人技へのこだわりが強い。「ロロ・ピアーナ」の価値観は、日本の感性と深く共鳴する。
WWD:店舗を通じて、どんなメッセージを届けたい?
フレデリックCEO:表参道店は、「ロロ・ピアーナ」がこれまで手掛けた中で最も大きな店舗の1つ。だからファサード(店舗の外観)さえ、これまでで最も独創的だ。早い段階で通行人がファサードを目にするのは明らかだったから、「であればむしろ、ファサードのストーリーを伝えよう」と考えた。そこで私たちは、建築家の青木淳氏による初期のスケッチや着想源、色彩、そして特注のテラコッタタイルを柔らかな曲線状に連ねた織物の縦糸のようなデザインまでを公開した。カシミヤのように繊細でありながら、建築として力強いファサードは、「ロロ・ピアーナ」が大切にしてきた「本物の素材が生む高揚感」をかつてないスケールで表現している。
日本の店舗として初導入するのは、ミラノのモンテナポレオーネの旗艦店で開発した「アトリエ」だ。「アトリエ」は、私たちのノウハウや職人技をご覧いただく場所。特に日本の「アトリエ」では、繊維や生地に焦点を当てる。例えばカシミヤでは、その柔らかさや暖かさ、耐久性のほか、(特殊な防風・はっ水メンブレンを2枚のカシミヤ生地の間に包み込んだ)革新的な加工法の「ストームシステム®」を紹介したい。「ストームシステム®」によって、カシミヤでも洋服ははっ水性を誇り、雨の日にも着られるようになった。「ストームシステム®」を搭載したカシミヤの“アイサー・ジャケット(ラグジュアリースポーツのために開発した、最高品質素材を用いた機能性の高いアウター)”なら、スキーだって楽しめる。ゲレンデでも、きっとエフォートレスでエレガントだ。「アトリエ」では、こうしたストーリーを大切にしたい。日本にゆかりのある、デニムもお披露目したい。「ロロ・ピアーナ」はデニムにカシミヤを交織して「キャッシュデニム®︎」を生み出した。冬に最適で、暖かさと柔らかさを兼ね備えている。日本といえば、アイウエアも重要だ。セルジオが立ち上げたアイウエア事業では、独自のミネラルレンズを採用し、抜群の透明度を誇っている。
材料から完成品まで、
最高品質への飽くなき追求
フレデリックCEO:いくつかの要因があるだろう。まずは、価値観。最高品質へのこだわり、職人技、そして普遍性が、若い顧客層にも強く響いている。私たちは自分たちのビジョンを貫き、トレンドを追わない。自分たちが最も得意とすることを継続し、磨きをかけている。さらにここ数年は、新しいシルエットを取り入れている。パンツやジャケットの新しいパターンからシルエット、スタイリングで、持ち味を保ちつつ新鮮な要素も加えている。一方で古くからのロイヤルカスタマーは、私たちにとって最強のアンバサダーだ。メゾンへの愛着を語り、「憧れ」を形作ってくれる。
WWD:ミラノの近郊には、原材料を糸にする工場、糸から生地を製造する工場、そして直近はニットという最終製品を生み出す工場などを構えている。
フレデリックCEO:私たちは、原材料の調達から完成品に至るまで、メゾンの製造能力と長年のパートナーシップを融合させ、バリューチェーン全体において比類なき専門性と管理体制を築き上げてきた。これは、最高品質を追求する上で極めて重要だ。ピエール・ルイジは、モンゴルやオーストラリアにいち早く赴き、現地の牧畜のあり方を理解しようと努めるところから始めた。最高品質というのは、何よりも自然から生まれるものだ。モンゴルにあるカシミヤ関連の各施設において、「ロロ・ピアーナ」は何十年にもわたりノウハウを蓄積してきた。他の施設も同様だ。直近ゲンメに設立した素晴らしい製造拠点は、編み立て(パーツを1つずつ編んで作ること)からリンキング(編み上げたパーツをかがり合わせていく工程)、洗浄、アイロン掛けまで、全ての工程を一つの拠点で、細部と品質に徹底的にこだわりながら行っている。自社のリソースだけでは賄えない場合は卓越した技術で知られる戦略的パートナーと連携し、彼らの事業を支援または出資している。最近ではダブルフェイスのカシミヤに関する技術を持つ企業を買収した。その技術は、2層のカシミヤ生地を合わせ、特殊な仕上げや縁の処理をすべて手仕事で行うというもの。これは習得に何年もかかる熟練の職人技だ。技術を習得するには、長年の修練を要する。この技術を維持するためには、買収がベストだと判断した。こうした考えは、バッグなどのレザーグッズにも及んでいる。バッグを手掛け始めたのは10年前だが、ラインアップを拡大し地位を向上させると同時に、ノウハウも蓄積・発展できるよう努めている。
WWD:そうやって生まれた製品の発信方法もユニークだ。独自のスタイリングをプレゼンテーションで見せている。
フレデリックCEO:長い時間をかけて築き上げたスタイルコードは、毎シーズンのコレクションのタイトルや見せ方でも表現している。2027年春夏は、「ソリューションズ・フォー(Solutions for)」と銘打った。セルジオは、常にお客さまのことを考え、彼らの姿を思い描いた。また彼自身も、例えば夏にポルトフィーノのヨットの上で過ごしたりする上で、「適切な装い」の必要性を感じていたという。快適さとエレガンスを両立させるための装いが必要だ。海外なら雨のヴェネツィアで開かれるガライベント、日本ならニセコのゲレンデなど、さまざまな時間と場所にふさわしい装いを提案したい。さらに次のコレクションに向けては、顧客を中心に据えた哲学を掲げながら、新しい「アーキタイプ(典型的なスタイル)」を開発している。スタイル、快適さ、そしてエレガンスなどの多面的な側面を、糸から生地、そして製品の製造までを手掛ける中で培ってきたノウハウや卓越した職人技で形にできる「ロロ・ピアーナ」は、無限の可能性を秘めた魅力的なメゾンだ。
糸から完成品に至るまでの最先端施設を開設

新施設「ロロ・ピアーナ・ゲンメ」は、敷地面積8000㎡以上の広さ。1階には製造施設、2階にはオフィスを構えた。1990年代以降初となる新しい製造拠点では、今後数年間で約300人の従業員を採用し(現在は約200人)、次世代の職人や人材の育成にも力を注ぐ。施設は自然を職場の一部として取り込み、建物は表参道の旗艦店同様、丸みを帯びたリズミカルなラインで「ロロ・ピアーナ」の繊維の柔らかさや流動性を表現する。太陽光発電のパネルなどを備えたガスフリーの施設で、雨水も積極利用するなどサステナビリティも意識した。「ロロ・ピアーナ」がこの土地を取得したのは、1987年のこと。かつては1世紀以上にわたり綿の紡績工場だった場所を梳毛と紡績の工場として活用したのち、今回「ロロ・ピアーナ・ゲンメ」として再生している。給水塔や管理棟など、旧施設の一部はそのまま。歴史ある工業施設の姿を保ちつつ、新たな息吹を吹き込んだ。自然光を最大限に取り入れたり、状況や人の有無などに応じて光量を自動で調整したり、視界を遮るカーテンを廃したりで、互いのコミュニケーションを促しながら、精緻な視認などの業務をサポートする。
「ロロ・ピアーナ・ゲンメ」では、カシミヤやビキューナ、メリノウールなど、最高品質の素材から紡いだ糸を、ぜいたくなニットウエアへと仕上げる。主な工程は、研究開発、プログラミングと編み上げ、縫製と仕上げ、洗浄、そしてアイロンがけ。研究開発では、デザインチームが構想したニットの編み目を試作することから始める。プログラミングと編み立てでは、CADを用いてニットの構造やステッチを開発し、すでに100台に迫るニットマシンを動かす。縫製と仕上げは、リンキング(編み上げたパーツを組み合わせていく工程)から加工、検品などを担当。いずれの工程も高度な専門性と職人技が求められるパートで、それぞれのニットは手仕事で仕上げた後、さらに職人が美しく整える。最後の洗浄とアイロンがけは、「ロロ・ピアーナ」ならではの風合いを実現しつつ、耐久性やシルエットまでを検証する工程だ。
施設で用いる糸は、オーストラリアやニュージーランド、モンゴル、ペルーやアルゼンチン、ボリビアなどの遠く離れた国々からの恵みだ。「ロロ・ピアーナ」は現地でも細心の注意を払って選別・収穫した素材を、「ロロ・ピアーナ・ゲンメ」の近郊にある紡績工場で梳毛した後に紡績する。ここではイタリア最高峰のメゾンらしい色彩とクオリティーへのこだわりを発揮し、さまざまな原材料をブレンドすることで、美しく繊細なニュアンスを帯びた色合いの糸を生み出す。「ロロ・ピアーナ・ゲンメ」では、この最高の糸を使い、さらにノウハウやクリエイティビティ、卓越した職人技を盛り込むことで、至高のニットを生産する。
「ロロ・ピアーナ」は、こうした職人のノウハウを培い、磨き上げ、継承するため、「ロロ・ピアーナ・ゲンメ」の中に「アカデミア・デイ・メスティエリ」を構えた。これは、一連の工程に関する技をトレーニングし、個々人がそれぞれの目標に向かってスキルアップするためのプログラムに焦点を当てた施設だ。
ロロ・ピアーナ ジャパン
03-5579-5182