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「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」は4月2日、アジア初となるランウエイショーを中国・上海で実施した。披露したのは、昨年9月にニューヨーク・ハンプトンズでショーを行った2025年春コレクション。同ブランドは、なぜ上海をNYコレクションの再演の地として選んだのか。パトリス・ルーヴェ=プレジデント&チーフ エグゼクティブ オフィサー(CEO)をはじめ、ブランドのビジネスを担うキーマンたちが今回のショーでの新たな取り組みや中国市場の重要性について語った。
上海にハンプトンズの世界観を完全再現
今回「ラルフ ローレン」が上海で披露したランウエイショーは、同ブランドが昨年9月に、ニューヨーク州ハンプトンズにある広大な乗馬施設で開催したショーを忠実に再現したもの。会場となった「ロホ・アート・スペース(Rojo Art Space)」は、日本人建築家・西沢立衛がリノベーションを手がけた、歴史ある鉄鋼工場を活用した施設だ。同社のデイヴィッド・ローレン=チーフ ブランディング&イノベーション オフィサーは「私たちはこの場所を、オアシスのような空間に変容させた。都市の喧騒から離れ、まるで本物の乗馬牧場へと足を踏み入れるような感覚を作り出した」と語った。
発表したのはビーチや乗馬の要素を融合させたコレクション。青空を思わせる多彩なブルー、清潔感のあるホワイトやタンカラーが特徴的だった。ハンプトンズでのショーと同様に、「ラルフ ローレン コレクション(RALPH LAUREN COLLECTION)」と「ラルフ ローレン パープル レーベル(RALPH LAUREN PURPLE LABEL)」「ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)」など、各ラインのメンズ、ウィメンズ、キッズのコレクションを披露した。
ランウエイに豪華キャスト集結
冨永愛が年月を経て再び登場
ランウエイには、中国人モデルのフー・ビンとドゥ・ジュアンのほか、日本からは10代の頃から同ブランドのショーに出演してきた冨永愛が年月を経て登場。笑顔でランウエイを歩いた。またアジア各地から250人を超える豪華なゲストも招いた。日本からは俳優の森星や中条あやみが出席したほか、香港の女優セシリア・チャン、歌手のチャーリーン・チョイ、韓国の俳優ソン・ジュンギ、K-POPスターのクリスタルなど、アジア太平洋地域を代表する多くの著名人が一堂に介した。
上海でのランウエイショーは、東京でのポップアップやドバイでのイベントに先んじて行われた「ラルフ ローレン」のグローバル・プロモーション展開の第一弾だ。ラルフ・ローレン自身が第二の故郷と語るハンプトンズで開催したショーは、同ブランドにとって非常に重要な取り組み。上海をその再演の地に選んだのは、中国市場を、このイベントを通じてブランドの魅力を伝えるのに最適な市場だと判断したから。同ブランドの中国での売上げは直近の四半期で20%以上増加している。割合としてはブランド全体売上げの8%を占めるにとどまるものの、今後の成長が期待される市場だ。ルーヴェCEOは「ハンプトンズでのショーが生み出したブランドストーリーや世界観をグローバルに展開したい」と語り、前述のローレン氏も「このショーが生み出すシネマティックな経験は、中国の消費者の『新たなラグジュアリー』へのニーズに応えるものだ」と説明した。
「見てすぐ買える」ショーの狙い
パトリス・ルーヴェ/ラルフ ローレン プレジデント&チーフ エグゼクティブ オフィサー(CEO) : フランス生まれ。名門グランゼコールESCPヨーロッパを卒業した後に米イリノイ州立大学でMBAを取得。1989年、プロクター・アンド・ギャンブルに入社。29年間勤務し、欧州、北米、日本を含むアジア地域の要職を務めた。2017年にラルフ ローレンに加わり、現在に至る。ECに精通する一方で、小売店と緊密な関係を築いてグローバルブランドをさらに発展させる手腕にも定評がある。
今回のショーでは、中国の堅牢なECインフラを活用し、「見てすぐ買える」形式のライブストリーミングを実施。中国版のTikTokとして知られる「ドウイン(Douyin)」をはじめ、複数のプラットフォームのほか、ブランド公式サイトでもショーをライブ配信し、終了直後には、新設した「ドウイン」のウィメンズ向けストアでEC配信を行なった。ルーヴェCEOは今回の取り組みを「消費者との接点を通じてストーリーテリングと買い物をシームレスかつリアルタイムに結びつける重要な転換点」と表現。「『欲しいアイテムがあるのに、手に入るまで半年待たなければならない』といった状況から脱却するものだ」とメリットを強調し、「ラルフやデザインチームが生み出すインスピレーションや魔法のようなクリエーションを、テクノロジーとバランスよく結びつけ、消費者からの理解を得られた時、私たちは真の成功を手にできる」と語った。
左:「ラルフ ローレン」は昨年12月、上海でドローンショーを披露し、ラルフ・ローレンの功績を振り返るドキュメンタリー「Very Ralph」の中国プレミアを実施した 右:ショー直後の「ドウイン」を活用したEC配信
「ラルフ ローレン」は、コロナ禍以降の経済減速にもかかわらず、中国市場で着実な成長を遂げている。成功の背景には、「オールドマネースタイル」の浸透などの文化的な共鳴に加え、小売ネットワークの着実な拡大がある。中国で直営展開を始めて約10年。現在、本土に約200店舗、中華圏全体では250店舗以上を構える。さらに今後3年間で年間25店舗以上の新規出店を計画し、北京、上海、成都、深圳、香港、台北の6都市を中心に展開する。売上の約7割を占めるのはポロシャツやリネンシャツなどの定番商品だが、ウィメンズアパレルやアウターウエア、ハンドバッグなど成長領域にも注力。特にハンドバッグ分野は拡大が期待されており、“ポロID”バッグや、“ポロ プレイ”バッグなどを主力商品として位置づける。ブランドは今後もファッションを軸に展開しつつ、ライフスタイル全体へと影響力を広げていく方針だ。
問い合わせ先
ラルフ ローレン
0120-3274-20