ファッション

篠原ともえを魅了した“時”の展覧会 「ヴァシュロン・コンスタンタン」の270年を巡る

ヴァシュロン・コンスタンタン,VACHERON CONSTANTIN,篠原ともえ

「ヴァシュロン・コンスタンタン(VACHERON CONSTANTIN)」は、1755年の創業以来、一度も途切れずに時計製造を行っている世界最古のウオッチメゾンだ。現在、創業270周年を記念した体験型展覧会「The Quest(探求): 270年にわたる卓越性への追求」展を東京・神宮前で開催している。メゾンが誇るタイムピースや時計製造ツールが見られる同展に、デザイナーやアーティストとして活躍する篠原ともえが来場。「ヴァシュロン・コンスタンタン」の歴史と革新、職人技の価値に触れ、「旅のような展覧会」と語った。

メゾンの源流をたどる

同展覧会は、全4つのテーマで構成されている。最初の展示室は「遺産と伝統」だ。創業者の一人であるジャン=マルク・ヴァシュロン(Jean-Marc Vacheron)が、1755年に初代見習いと交わした契約書の複製をはじめ、アーカイブ資料や写真、歴史的タイムピースを通して、メゾンの卓越した探求心を紹介する。

篠原は「ヴァシュロン・コンスタンタン」の印象について、「メゾンの本質を形作ってきた巨匠。270年という歴史がその答えを物語っていますよね」と語る。さらに、タイムレスな美しさを「時を超えてもなお人を引きつける力」と表現し、メゾンの創造性とクラフツマンシップに敬意を示した。「モノづくりは、人の手によって丁寧に積み重ねた時間が“真実”として残されていく。時代と共に変わりゆくものの中で、その“真実”を貫くことが、タイムレスな美しさの答えになるのではないでしょうか」。

壁面に記されたメッセージ “できる限り最善を尽くす、そう試みることは少なくとも可能である(Do better if possible and that is always possible)“は、共同創業者の一人であるフランソワ・コンスタンタン(Francois Constantin)が3代目ジャック=バルテルミー・ヴァシュロン(Jacques-Barthelemy Vacheron)に宛てた手紙の一節だ。そのシンプルで強い言葉に、篠原も「いちデザイナーとして、モノづくりへの信念を受け取った」。

受け継がれる匠の技

第2の展示室「工芸技術」では、メゾンが得意とするエナメルや彫金、ジェムセッティング、ギヨシェ装飾といった伝統技術に焦点を当てている。

メゾンが職人技に傾倒するように、篠原が手掛けるデザインもまた、繊細な手仕事や伝統技術をふんだんに取り入れている。「私自身、手仕事の力を信じているんです。創作活動で大切にしているのは、まず伝統技術の歴史背景を解き明かすこと。歴史に触れることで湧き出す自分の心の奥の感情に向き合い、琴線に触れた自分の感性に耳を傾けています。そうすることで、作品からアイデアを語りかけてくれるのです」。そして、アイデアをデザインとして形にするのは篠原自身の手仕事だ。「創作を手掛けるとき、私は“感触”を大事にしています。絵を描くとき、運針のとき、手触りから呼び起こす記憶や、湧き起こる感情を“探求”することで感性が鋭敏になっていくことに強い関心を持っています。手を動かし、心を震わすことのできるクリエイションに生涯をかけて向き合いたい」。

11年を経て完成した傑作時計

続く「高級時計製造」の展示室では、メゾンが2024年に発表した最も複雑な懐中時計 “レ・キャビノティエ・ザ・バークレー・グランドコンプリケーション”を紹介している。時計には、63の複雑機能と世界初の中国暦パーペチュアルカレンダーを搭載。構想11年に及ぶ研究の成果と、精密な時計の細部を見ることができる。

篠原はメゾンのモノづくりへの探求心を目の当たりにし、自身のクリエイションの信念と重ね合わせた。「デザインとは、創造することから始まり、形になるまで果てしない時を経ることが少なくありません。その時間との向き合い方は、とても尊いもの。私が手仕事や伝統技術を取り入れるのも、その背景にある“時間の積層”に敬意があるからです」。

時の原点、天文学と時計

4つの展示室の中で篠原が特に魅了されたのが、最後の展示室「The Quest(探求)」だ。ここでは、数世紀にわたる天文学と時計製造のつながりを体感できる。誕生日や記念日などの日付と場所を入力すると、その日の天空図が一面に現れ、時を計測することの真髄をドラマチックに伝える。

篠原は幼少期から自然を愛し、星空に魅せられ、学生時代は天文部に所属するほど星空に魅せられてきた。「今回の展覧会で、天文学と時計製造は密接な関係にあることを知りました。イマーシブな体験を通じて夜空を眺め、時間を超えて子供心に戻れた瞬間でした」。

メゾンが継承してきた伝統技術から微細な構成部品、天文学と時計のつながりまで──同展では、伝統と革新を融合しながら挑む「ヴァシュロン・コンスタンタン」の壮大な“探求”の旅を体感できる。

INFORMATION
ヴァシュロン・コンスタンタン「The Quest(探求): 270年にわたる卓越性への追求」展

時間:11:00~19:00(最終入場18:30)
定休日:火曜日(祝日を除く)
住所:東京都渋谷区神宮前5-11-1
入場料:無料 (予約来場優先、入場規制あり)
※展示内容は予告なしに変更されることがあります

PHOTOS : KUNIHISA KOBAYASHI
問い合わせ先
ヴァシュロン・コンスタンタン
0120-63-1755