
左から、コーヒー農園Fazenda Amizadeのマルセロ・カイシェタ・バルボサ・パテルノ
氏、後藤将ティピカホールディングスCEO、星野正則ドトールコーヒー社長、コーヒー倉庫ACAUAのレイナルド・オリーニ・ロッチャCEO、土壌改善ソリューションを提供するFERTINUTRIのジェイム・サンチェス・ネト共同創業者
投機マネーの流入で価格上昇「コーヒー2050年問題」
これまでコーヒー生豆の取引価格は先物市場の国際価格を基準として決定されてきた。しかし、近年は投機マネーの流入が激しく、過去1年間で約112%の価格変動が生じている。こうした価格の不安定さは生産者の収入に直接的な影響を与え、短期的な価格変動への対応が優先される結果、中長期的な視点での品質や生産量の安定が困難となっている。同様に、バイヤーにとっても調達コストの予測が難しくなり、経営の不確実性が増している。これにより、消費者へのコーヒー提供価格の上昇も進行しており、いわゆる「コーヒー2050年問題」を背景に、コーヒー産業全体のサステナビリティが脅かされている。
今回の覚書締結を契機に、ティピカは「世界中の志を同じくする生産者とバイヤーが同社のプラットフォームを通じて、実際のコストおよび付加価値に基づく長期固定価格の新たな枠組みによるダイレクトトレードを推進し、コーヒー取引の品質と経済性を向上させ、持続可能で発展的なコーヒー取引の実現を目指す」としている。
ドトールは年間取扱量の10%、1000トンの取引へ
ドトールはこの取引で年間最大1000トンのコーヒーを最大10年間取り扱う。1000トンは、同社の年間のコーヒー取扱量の10%に相当する。26日に開かれた会見でドトールコーヒーの星野正則社長は、「コーヒー生豆の価格高騰に加え、日本側においては円安による為替の影響もあり、非常に厳しい状況が続いている。今後の見通しも不透明である中、価格の安さだけを追求した品質の低いコーヒーを提供するのではなく、我々の使命はお客様に本当においしいコーヒーを適正な価格で安心して楽しんでいただくこと。その意味で、今回のような取り組みは、有益だ」と話している。
ティピカHDの後藤将CEOは、「ティピカは2019年からコーヒー生産者とロースターをつなぐダイレクトトレードプラットフォームの信頼を地道に築いてきたが、コーヒーの生産と取引は、国や地域によってビジネス習慣や宗教、文化などが大きく異なる非常に複雑な市場。ただオンラインプラットフォームを構築しただけでは機能しない。その中で今回、ドトールコーヒーからの強いコミットメントを得られたことは、大きな前進だ。例えば、『これだけの物量を、これだけの期間で』というような明確な条件があることで、生産者に対しても安定的な需要があることを示すことができた。これは非常に意味のある一歩だ」と話している。
ブラジルで148年続くコーヒー農園Fazenda Amizadeのマルセロ・カイシェタ・バルボサ・パテルノ氏は、「長年コーヒーに携わってきて、自分が知る限り、このような仕組みは世界初だ」とその意義を語っている。