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特集 CEO2024 ファッション編

【バロックジャパン 村井博之社長】女性事業部長を2倍に、組織を活性化

PROFILE: 村井博之/バロックジャパンリミテッド社長

村井博之/バロックジャパンリミテッド社長
PROFILE: (むらい・ひろゆき)1961年生まれ、東京都出身。84年立教大学文学部を卒業後、中国国立北京師範大学への留学をへてキヤノンに入社し、中国での支店開設などに携わる。97年に日本エアシステム(現日本航空)でJAS香港社長に就任。2006年にフェイクデリックホールディングス会長兼社長に就任、07年にフェイクデリックホールディングスなど3社を統合しバロックジャパンリミテッド設立。08年から現職 PHOTO:SHUHEI SHINE

中国事業に早くから注力してきたバロックジャパンリミテッドは、中国のゼロコロナ政策で、2022年は足踏み状態となった。コロナの収束と共に23年は回復基調に乗ったが、中国市場の完全回復はもう少し先になりそうだ。今後は国内外で店舗のスクラップ&ビルドを進めていくと共に、手薄だった分野での新ブランド開発も進める。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

チャレンジ精神ある若手を登用

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年は女性登用が目立った。

村井博之社長(以下、村井):事業部長クラス以上で、女性登用を進めている。現在、女性の事業部長は4人、販売統括部長も含めれば5人だ。社員の8割が女性であることを考えれば決して多くはないが、まずは大きな一歩。25年2月期に向けて、この人数を倍にしたい。もともと女性がパワフルな会社であり、販売や企画、PRなどの現場で高い能力を発揮している人材は非常に多い。マネジメント層にも女性が入ることで、試行錯誤をしながら物事を前進させる力が会社として強くなったと感じている。コロナ明けの社会は前に戻るのではなく、これまで経験したことのない世の中になる。そこに迅速に対応できるスピード感のある人、やる気があってチャレンジの意志が強い人をどんどん登用していきたい。植田みずき(常務執行役員)やバロックチャイナ統括の女性幹部はいるが、そういった会社の創成期をけん引してきたメンバーではない、この10年前後で入社した女性社員の抜擢は、23年が一番多かった。

WWD:女性登用による活性化は、どんな成果を生んでいるか。

村井:成長率が大きく、25年2月期に向けて大幅拡大を考えている「スタイルミキサー(STYLEMIXER)」の事業部にも、昨年4月に女性事業部長が就任した。事業部長がチームで一番若く、経験豊富なMDやデザイナーが後輩を盛り立てている。「スライ(SLY)」の事業部も今、同様のチーム編成だ。「スタイルミキサー」は郊外SCへの出店が主だったが、23年3月にリニューアルした原宿の旗艦店「ザ シェルター トーキョー(THE SHEL'TTER TOKYO)」でも売り上げをけん引し、出店先として都心の可能性も出てきた。来期の売上高は大幅増を見込む。

WWD:中国事業はコロナで苦しんだ期間が長かった。

村井:中国は日本や米国に比べて立ち直りに時間はかかったが、いよいよ回復してきた。ただ、都市によって回復具合には差がある。地方都市では一旦店舗数を減らし、北京や上海、天津、杭州、深圳では出店するという、スクラップ&ビルドを進める。モノ作りの面ではASEANでの生産比率を約20%にまで高め、中国に偏っていたサプライチェーンを是正してきた。ただ、中国は販売拠点も多く、日本からの距離も近い。パンデミックが収まったことで、改めて最適なサプライチェーンを構築する。

WWD:中国も国内ブランドが成長して市場環境が大きく変わっている。

村井:中国において、「日本のブランドだから」というだけでは購入の大きなモチベーションにならない。とは言え、当社のブランドは中国で既に一定の規模や認知度がある。一時期は中国に約300店を出店していたが、コロナによって採算性が悪化した店舗を閉鎖し、現在は約270店に縮小した。コロナを経てデベロッパーも勝ち組、負け組が明確になった。これからは従来以上に出店先を精査する。

WWD:24年の消費をどう予測するか。

村井:国内はリベンジ消費が一巡し、特にわれわれが対象としている若年層向けでは、消費は堅実になっていく。人口も減っていく。当社のブランドは決してマス向けではなくニッチだ。ニッチブランドを手掛ける企業として、こうした状況の中でどう収益性を担保していくかを考える必要がある。従来手薄だったゾーンでも積極的なブランド展開を進める。例えば40代向けのマーケットだ。海外は、既に基盤整備が済んでいる中国や米国事業を主力にしつつ、新たな形で事業を広げていきたい。「エンフォルド(ENFOLD)」が22年秋に、新世界百貨店と組んで韓国進出しているのが先行例だ。24年は海外事業についての種まきの時期。「マウジー(MOUSSY)」「スライ」以外のブランドも、順次中国に上陸させていく。

WWD:ニッチな新ブランドとは、具体的にどんなものか。

村井:今までは売上高10億円以下のブランドには積極的に取り組んでこなかった。ただ、嗜好は多様化しており、規模の大きなブランドを目指そうとすると、エッジの利いたデザインや世界観を得意とする当社らしさが生かせない。極端なことを言えば、利益が出ていれば売り上げは10億円でもいい。10億円ブランドが10個あれば100億円だ。ブランドを立ち上げたいという声は社内で非常に多い。20年にスタートした「へリンドットサイ(HERIN.CYE)」で昨年は初の実店舗を新宿ルミネ2に出店し、9月にはEC専業の新ブランド「ミエル クリシュナ(MIEL CRISHUNANT)」をローンチした。

WWD:長い夏や暖冬など、気候変動の影響も年々拡大している。

村井:CO2排出量は、スコープ1、2(店舗やオフィスなど、自社による直接排出と、電力使用などによる間接排出)で30年までに21年度比で50%削減、スコープ3(取引先工場など事業に関連する他社の排出)で衣料品1点あたりの排出量を30年までに20%削減する。作り過ぎも問題だ。30年までの目標として最終残在庫の廃棄ゼロ、焼却ゼロも掲げた。サステナビリティのために何に取り組むか、われわれの中での理解が徐々に深まり、1つ1つアクションプランを達成していく。

会社概要

バロックジャパンリミテッド
BAROQUE JAPAN LIMITED

2000年にフェイクデリックとして設立し、「マウジー」「スライ」が“平成ギャルブーム”をけん引し大ヒット。08年にバロックジャパンリミテッドに商号変更。13年に中国の靴小売り大手ベル・インターナショナルとの合弁会社バロックチャイナを設立し、中国出店を加速。16年に東証1部(現プライム)市場上場。23年2月期の売上高は前期比0.5%減の588億円、営業利益は同21.9%減の21億円

問い合わせ先
バロックジャパンリミテッド広報
03-5738-5775