ファッション

アウトドアからK-POP衣装まで、「テックウエア」の正体とは? ポッドキャスト連載:考えたい言葉 vol.17

 「WWDJAPAN」ポッドキャストシリーズの連載「考えたい言葉」は、2週間に1回、同期の若手2人がファッション&ビューティ業界で当たり前に使われている言葉について対話します。担当する2人は普段から“当たり前”について疑問を持ち、深く考え、先輩たちからはきっと「めんどうくさい」と思われているだろうな……とビビりつつも、それでも「メディアでは、より良い社会のための言葉を使っていきたい」と思考を続けます。第17弾は、【テックウエア】をテーマに語り合いました。「WWDJAPAN.com」では、2人が対話して見出した言葉の意味を、あくまで1つの考えとして紹介します。

ポッドキャスト配信者

佐立武士(さだち・たけし):He/Him。入社2年目、ソーシャルエディター。幼少期をアメリカ・コネチカット州で過ごし、その後は日本とアメリカの高校に通う。早稲田大学国際教養学部を卒業し、新卒でINFASパブリケーションズに入社。在学中はジェンダーとポストコロニアリズムに焦点を置き、ロンドン大学・東洋アフリカ研究学院に留学。学業の傍ら、当事者としてLGBTQ+ウエブメディアでライターをしていた。現在は「WWDJAPAN」のソーシャルメディアとユース向けのコンテンツに注力する。ニックネームはディラン

ソーンマヤ:She/Her。入社2年目の翻訳担当。日本の高校を卒業後、オランダのライデン大学に進学して考古学を主専攻に、アムステルダム大学でジェンダー学を副専攻する。今ある社会のあり方を探求すべく勉強を開始したものの、「そもそもこれまで習ってきた歴史観は、どの視点から語られているものなのだろう?」と疑問を持ち、ジェンダー考古学をテーマに研究を進めた。「WWDJAPAN」では翻訳をメインに、メディアの力を通して物事を見る視点を増やせるような記事づくりに励む

若手2人が考える【テックウエア】

 「テックウエア(Techwear)」は、“テクニカル”または“テクノロジー”と“ウエア”を掛け合わせた造語。科学や技術を応用した素材や機能的なデザインで、実用性を追求する服だ。先進的イメージから、近未来的なファッションスタイルという“見かけ”のイメージも付随することが多い。

 雨などが洋服にしみてしまう問題を解決するため、ゴアテックス(GORE-TEX)などの防水素材が登場したように、課題をテクノロジーで解決するのが「テックウエア」のオリジンだ。「テックウエア」を検索すると「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」や「ナイキ(NIKE)」などスポーツやアウトドアブランドが出てくるのは、機能性やパフォーマンス性を重視したアイテムが多いからだろう。しかし、「ユニクロ(UNIQLO)」の“ヒートテック”や“エアリズム”に代表される防寒性や透湿性を重視したインナーなど、「テックウエア」と呼べるアイテムは多岐に渡り、多くの人の日常に溶け込んでいる。ハイファッションでも、「ディオール(DIOR)」が2022-23年秋冬コレクションで、南極観測隊の防護服などを作るスタートアップ企業と協業した温度調整機能のついたスーツや防弾チョッキを彷彿とさせるアイテムを発表し、話題になった。

 インターネットを中心に、「テックウエア」はサブカルチャーの1つになり、さまざまなプラットフォームでコミュニティーが存在している。サブカルチャーとしての「テックウエア」は、モノトーンでSF的な美意識が顕著で、「Y-3」や「アクロニウム(ACRONYM®)」などのブランドが頻繁に登場する。K-POPでは、BLACKPINK(ブラックピンク)やグループ自体がSFコンセプトを持つaespa(エスパ)らが多く衣装として着用することで、機能性よりもスタイル的な定義を連想することも増えた。

“サイバーパンク”との違い、日本との関係性

 “サイバーパンク(Cyberpunk)”ファッションは、SFを体現したファッションとして、現在では「テックウエア」と同義で使用されることもある。元々、SFのサブジャンルとして小説から始まった“サイバーパンク”は映画や音楽、ファッションのジャンルにもなった。“サイバーパンク”は、小説「ニューロマンサー(Neuromancer)」や映画「ブレイドランナー(Blade Runner)」などの作品がインスピレーション源であることから、装飾やアクセサリーなど実用性よりも世界観を重視した、コスプレ的な要素がある。また、イギリスのサイバー系ファッションブランド「サイバードッグ(CYBERDOG)」は、音楽イベントなどでのコーデを想定しており、ネオンカラーを多用する。しかし、“未来”のイメージは時代と共に進化し、近年はミニマルでより洗練された印象のスタイルが増え、テックウエアとの境界線が薄れてきた。特に、インターネットトレンドやK-POPに見る近年の「テックウエア」は、SF的なテーマ性も重視しており、“サイバーパンク”から多大な影響を受けている。2つのジャンルが融合し始め、同義語として扱われる背景にある。

 “サイバーパンク”は、日本の高度経済成長期の1980年代に生まれたジャンルのため、東京を中心に香港やソウルなどアジアの都市をインスピレーションにしていることが多い。それまで未来は西洋を中心に描かれてきたが、東アジアに技術的に“抜かされてしまう”という恐怖を描く、“テクノオリエンタリズム”が垣間見れるジャンルでもある。アジア的なデザインや漢字の使用などが、未来風のファッションに使用される理由だ。実際、「テックウエア」コミュニティーに人気のブランドは、「ハムカス(HAMCUS)」「ヘインソ(HYEIN SEO)」「ポストアーカイブファッション(POST ARCHIVE FASHION)」「吉業重工」などアジア出身のデザイナーが名を連ねている。

【ポッドキャスト】

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