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デジタル革新とオムニ推進で体をメンテするワコールに

 ワコール(WACOAL)は、2019年にスタートした3Dボディースキャナーによる身体計測とAI(人工知能)接客の「3Dスマート&トライ」サービスに続き、昨年はアバターを活用した接客「アバカウンセリング パルレ(以下、パルレ)」を導入するなど、デジタル革新を加速している。今後、デジタルデータを基にした新事業などを通してゆくゆくは下着という枠を超えて幅広い意味でのウエルネスをサポートする企業への成長を目指している。

WWDジャパン(以下、WWD):20年後のワコールの企業像とは?

伊東知康社長(以下、伊東):ワコール=下着のイメージだと思うが、20年後は“ウエルネス”のワコール“といわれるようになりたい。“女性の美をサポート”するという思いから始まった会社だが、今の時代に置き換えるなら”美”、”快適”、“健康”に加え、精神的にも生き生きといられる、広義の意味でのウエルネスをサポートする企業になるべきだと考える。また、「ワコールっていいよね」「ワコールがなければ困る」と言われるような魅力のある企業になりたい。ワコール人間科学研究所(以下、人科研)が1964年以降に蓄積してきたデータを活かしたモノ作りは継続しながら、“ボディーメイク”だけでなく”ボディーケア”という新しい価値を提供していく。商品だけでなく、研究データと「3Dスマート&トライ」のサービスによるデータなどのデジタルデータ両方を活用し、ウエルネスのためのプラットフォーム作りをしていくつもりだ。新事業や他社と協業して時代に合う新しい価値を提供したい。

リアル店舗は“商品を買う場所”
から“体をメンテする場所”に

WWD:20年後の企業像実現に必要な要素は?

伊東:消費者視点で、時代に合った商品やサービスを創造し提供できるようなクリエイティビティーのある組織であることが大切だ。「3Dスマート&トライ」などのデジタル施策で気付いたのは、リアル店舗は単に下着を買う場所ではないということ。消費者がわざわざ店舗に行く理由は、店舗でしか得られない情報や体験があるから。リアル店舗のコンセプトを、“商品を買う場所”から“体をメンテナンスする場所”へと変えて、より心地よい場所にするべきだ。下着屋のイメージを変えれば下着を買う価値も変わる。そのような価値のある店作りをしていくことが重要だ。店頭販売を担う約3500人のビューティアドバイザー(以下、BA)に求められる役割も変わり、商品紹介だけでなく、顧客一人一人に寄り添うコミュニケーション力や想像力が求められる。

垣根や既成概念を越えた価値作り

WWD:昨年10月末に「3Dスマート&トライ」表参道東急プラザ原宿店でアバター接客「パルレ」を始めたがその反響と今後の展開予定は?

伊東:「面白そう」「楽しそう」と興味を持って来店してもらっている。体の悩みはセンシティブで「アバターだから何でも気軽に相談できる」という声も多い。原宿という立地もあり来店者は20〜30代が多く、予約状況は1カ月先までほぼいっぱいだ。このサービスを他の「3Dスマート&トライ」店舗へ導入することも検討する。また、アバター接客を通じて販売員のリモートワークを可能にし、新しい働き方につなげたい。これらデジタルのサービスは人科研、BAなど部門を越えて出来上がった新しい価値。今後も新しい価値を作っていくには、部門の垣根や既成概念を越える必要がある。

WWD:ボディーケアという新しい価値を提案したが手応えは?

伊東:昼、夜、スポーツとシーン別に下着でできるバストケアを提案したところ、特に若い層からの関心が高く、睡眠時用の“ナイトアップブラ”が市場で定着しつつある。「CW-X」のスポーツブラも好調だ。ブラジャーの役割はバストの形を整えるだけでなくケアするものとして市場の開発を進めていく。

成長のためのブランド再編に着手

WWD:21年以降の具体的な戦略は?

伊東:保有する約300万人分の顧客データを見ると、約半数が1年以内に購入実績がある。今後は、顧客と“深く、広く、長く"つながることが成長の柱だと考える。前期はECの売り上げが全体の約15%を占め、25年3月期には約25%にまで伸ばす計画だが、オムニチャネル戦略の一環としてECだけでなくリアル店舗の価値作りも大きなポイントだ。一方でブランド再編も進めており、21-22年秋冬シーズンにはブランド数を56(19-20年秋冬)から約40に絞る。それにより必要なところに効率的な投資を行い、成長につなげていく。既存の仕事を80%の労力で成し遂げるにはどうすれば良いか知恵を絞り、残りの20%で新しいことに挑戦していきたい。

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ワコールお客様センター
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