ビューティ

LGBTQ+フレンドリーなヘアサロンを全国に 「パンテーン」がサロン業界の意見を大募集

 P&Gのヘアケアブランド「パンテーン(PANTENE)」は、就職活動を経験したLGBTQ+の人たちと「自分を偽らず、自分らしさを表現できる就活」を考える“#PrideHair”プロジェクトに取り組んでいる。同ブランドはムーブメントをさらに広げるため、“#PrideHair・サロン”プロジェクトをスタート。

渡される雑誌、「週末は誰と?」
の質問がちょっと気まずくて
戸惑った

 ワークショップには10人の性的マイノリティの有識者と、4人のLGBTQ+フレンドリーなサロンスタイリストが参加した。ワークショップはまず、「LGBTQ+フレンドリーなヘアサロンとは?」の質問からスタート。すると参加者はまず、過去のちょっと気まずかったり、戸惑ったりした体験を語り出した。ゲイの男性は、「長年、美容室を転々とし、普段はおしゃべりなのに“コミュニケーションしたくないオーラ”を出していた」と語る。その理由は、サロンスタイリストから「今度の休日は何を?」と聞かれると、その次は「誰と?」の質問が続くから。スタイリストに悪気がなくても、「軽い偏見は、当事者には積もり積もってしまう。結果、『コミュニケーションしたくない』と思ってしまったのは、とても残念。でも、簡単に防げるハズ」と話した。トランスジェンダーの女性は、「当初はまだ『ロン毛のお兄さん』と思われ、席に着くと男性誌が配られた。しばらくは友達がヘアカット。女性誌が出てくるまで、大変だった」と語る。スタイリストにもカミングアウトしていたレズビアンの女性からは、「ショートにした時、『短くして男の子っぽくなったら、(隣のパートナーとの)バランスも良いね』と言われ、一気に信用できなくなった」という本音も飛び出した。

 一方美容師からは、今のサロン業界は「『メンズ専用クーポンを発行します!』などのプロモーションも多く、予約の段階から居心地が悪い」との指摘があった。

性別に縛られず
人間として受け入れ、
理想の髪型にしてくれると嬉しい

 FTMのトランスジェンダーの参加者は、現在はそれぞれ、お気に入りのヘアサロンを見つけているようだ。FTMのトランスジェンダーは、「長くてフワフワのパーマから、赤と黒の2ブロックに変えようと思ったとき、スタイリストが『めっちゃカッコいいですね。やりましょう!』と言って、理想通りに仕上げてくれた。過剰な対応ではなく、『そうなんだね』と受け入れ、理想の髪型してくれるのが嬉しい」。「お気に入りが見つかるまで、サロンではずっとウソをつき続け、『ごめん』って思っていた。お互いにハッピーじゃなかった」と言うレズビアンの女性も、「『できる女にしてください』と言うと、キャラも含めて、私と言う人間を掴んでくれる。美容師は、その能力に長けている。隠さず、楽にコミュニケーションできるのが心地よい」と続ける。男性や女性、LGBTQ+やストレートなどの「ラベル」は不要で、一人の人間として接する重要性を説いた。

 FTMのトランスジェンダーからの「どんなに『短く』とお願いしても、ボーイッシュな女の子のショートカットだった」という声を踏まえ、ゲイの男性は「『短い』というイメージは人それぞれだから、LGBTQ+の写真やイラストを集めてカタログ化するなど、写真やビジュアルでイメージを共有できるようにしたら?」とのアイデアを提案。さらには、隣の利用客の偏見に満ちたコメントにスタイリストが“乗っかって”しまい「今、ここでは絶対カミングアウトなんてできないな」と思った経験があるゲイの男性は、「LGBTQ+フレンドリーなサロンのスタンスを、お客さんにも表明できるようになれば」と願う。

宣誓・共感してくれるサロンを
増やしてLGBTQ+に情報提供

 ワークショップ2つ目のテーマは、プロジェクトをヘアサロン、そして当事者に知ってもらうための手段について。LGBTQ+フレンドリーなヘアサロンを増やす術について、先駆的なサロンスタイリストは「他の美容師の体験談を知ることができたら、接客は変わる。策定するガイドラインを解説するセミナーがあれば」とリクエスト。インクルーシブ(包摂・包括性。個々の違いを受け入れつつ、それを踏まえて仲間だと捉える考え方)なプロジェクトゆえ、チェックリストを設けて遵守できれば合格などとするのではなく、「ガイドラインを手に取り、読んで、深く理解したければ機会を設け、共感してくれたら賛同サロンと認定して良いのでは?」や「『これからLGBTQ+フレンドリーなサロンを目指すんだ』と宣誓してくれれば十分ではないか?」などの考えが多かった。
 
 賛同サロンが簡単に探せる情報提供は、LGBTQ+の当事者とヘアサロンの双方にとってメリットがあるという。情報の可視化についてのアイデアも飛び交った。

 またサロンに広げるには「LGBTQ+が人口の何パーセントに及ぶかを説明し、『ビジネスのためフレンドリーにならなくちゃ』と思わせる現実路線も必要」という意見、当事者に伝えるには「ドラァグクイーンがユーモアを交えてサロンに『ダメ出し』を連発して、改善し、LGBTQ+フレンドリーなサロンになるまでの動画をアップしたら?」などのユニークなアイデアも飛び出した。

トランスジェンダーが実体験語る
動画には当事者もアライも賛同

 「パンテーン」は、“#PrideHair”というハッシュタグのもと、実体験を伝えながら皆でより良い就活のあり方を考える活動をスタート。トランスジェンダーが就職活動の実体験を語る動画の再生回数は2000万回を超え、当事者のみならず、LGBTQ+をサポートしたいと願うアライの賛同も多かった。一方でジェンダーに対する誤解や思い込みは少なからず存在し、「知らなかった」「気づきを与えてくれてよかった」などの反響も届いたという。これを受け「パンテーン」は、ヘアサロンが「誰もが、自分らしい髪になれる場所」になることを目指し、ガイドラインの策定をスタート。今後は活動を広めて賛同サロンを増やし、ユーザーがLGBTQ+フレンドリーなヘアサロンを簡単に見つけられるような情報提供も考える。ガイドラインは、2021年の1月下旬に発表したい考えだ。同ブランドは「#PrideHair」と言うハッシュタグで、プロジェクトに賛同するヘアサロンや個人の声を募集している。

 P&Gでは、役員や人事部門、面接官に対してLGBTQ+をはじめ、多様性への理解を深める研修を実施している。面接を行う社員の先入観を少しでも排除するため、14年からはエントリーシートの写真欄を削除、19年には性別欄に“その他”という選択肢を設定した。21年には生年月日情報も削除することで、年齢による先入観も排除する。

問い合わせ先
パンテーン