ファッション

ランジェリー業界のゲームチェンジャー vol.4 下着専門家を育てるランジェリーカレッジの中根菜穂子

 下着業界はファッション業界に比べるとメディア露出が少なく、またサイズの展開が多いため、在庫管理が複雑、生産工程で使用する資材が多い、生産ロットが大きいなどの理由から新規参入が難しいといわれてきた。大手の下着メーカーおよびアパレルメーカーによる市場の寡占によって、なかなか新陳代謝が進まない印象だったが、ここ数年、D2Cブランドが増加している。また、異業職種からのデザイナー転身やSNSを通じたコミュニティーの活性化など、下着業界では30代の女性を中心に新たなムーブメントが起こっている。下着業界に新風を吹き込むゲームチェンジャーらにインタビューし、業界の今、そして今後の行方を探る。

 第4回に登場するのは、中根菜穂子ランジェリーカレッジ(LINGERIE COLLEGE)代表。ランジェリースタイリストとしてメディアやイベントで活躍する一方、ランジェリーを学び、楽しみ、仕事にするランジェリーカレッジを創設。販売員として6000人以上を接客した経験を生かして、メーカーの枠を超えてランジェリーの魅力と情報を発信し、“ランジェリーで女性の人生はもっと輝く”をモットーに活動の場を広げている。

――ランジェリーカレッジを設立した目的は?

中根菜穂子ランジェリーカレッジ代表(以下、中根):子どもの頃からランジェリーが大好きで、学生時代から下着関連で起業したいと思っていました。ただ、自分でブランドを立ち上げるにもショップを開くにも莫大なお金がかかるという現実がありました。それでも、自分の中にランジェリー以外の仕事をするという選択肢はなく、働きながら将来役立つことを学びたい、経験を積みたいと思い下着の販売職になりました。6年余り百貨店を中心に売り場に立って接客をしていましたが、その販売経験の中で分かったのは、自分の体や下着について悩んでいる女性が本当に多いということ。それまで自分に合った下着に出合わなかったことで、自分の体は人と違うと思い込んでいる人、自分の体を否定し責めている人もいました。その理由を考えると、情報の少なさが原因だということに気付きました。それを解決できる場をつくりたい、悩みに答え、幅広い情報を届けたい、それを一緒にできる仲間を増やしたいと、ランジェリーカレッジを2019年1月に設立しました。現在の私の仕事はランジェリーカレッジの運営が6割、ランジェリースタイリストとしてメディアで対応する仕事が4割というバランスです。

――ランジェリーカレッジの内容は?

中根:自分に合ったブラジャーを選ぶための講座「1DAYランジェリーレッスン」と、業界未経験者でもプロを目指せる「ランジェリースタイリスト養成講座」があります。「ランジェリースタイリスト養成講座」は5日間の「ジュニアスタイリストコース」と、10日間の「マスタースタイリストコース」があり、年2回の募集で5月から5期生の講座がスタートしました。受講者はランジェリースタイリストを目指す人や自分のブランドを立ち上げたりショップをオープンしたい人、ファッションや美容など現在の自分の仕事にランジェリーの知識を生かしたい人が主流です。これまで「ランジェリースタイリスト養成講座」を修了した卒業生が22人いますが、パーソナルスタイリストとして個人のランジェリーショッピングのアテンドを行ったり、一般向けに「1DAYランジェリーレッスン」を開講したり、地方ではメディアで活躍している人もいます。自身のブランドを立ち上げる準備をしている人は3人います。

顧客の中にある正解を見つける手伝いをするのがランジェリースタイリストの役割

――ランジェリースタイリストの定義とは?

中根:メーカーでも販売店でもない、第三の下着専門家で、消費者とランジェリーをつなげることが仕事。ランジェリーに関する知識や技術を習得するのはもちろんですが、講座ではカウンセリングに一番重きをおいています。これは私が約6年間販売職をした中で一番感じたことですが、下着や体について知識を得ても、それを接客で生かすことがとても難しかったんです。売り場でそれがうまくできて、顧客の満足度が上がると、客単価も上がりリピーターになってもらえます。決して自分の考えを顧客に押し付けるのではなく、カウンセリングを通じてときには、顧客自身が気付かない願望を引き出すこと、顧客の中にある正解を見つけるお手伝いをするのがランジェリースタイリストの役割だと思っています。メディアの対応やSNSの発信も同じで、自分の好きなことをただ述べるのではなく、各メーカーやブランドの特徴を理解した上で、プロとして商品提案ができることの重要性を講座では教えています。ファッションやビューティに比べるとランジェリーに関するトピックスのメディア露出はかなり少ないですから、とにかく接点を増やすこと、まずはメディアにランジェリーに興味を持ってもらえるように心掛けています。

――今後、チャレンジしたいことは?

中根:ランジェリーについて話をする場としてランジェリーカレッジのコミュニティーをつくっていきたいです。これまでショッピングアテンドのサービスも講座もリアルにこだわってきました。ただ、コロナ禍で講座もオンラインになりましたし、ランジェリーの選び方などをインスタライブで配信したところ、地方の人など今まで出会えなかった人とつながることができ、「毎週楽しみにしている」「お話を聞いて自分の体が好きになった」といったようなうれしい声も届いています。今後オンラインで、お互いにコミュニケーションできる環境を整えて情報を発信していこうと思います。もう一つは9月に「日本ランジェリースタイリスト協会」の設立を目指しています。卒業生の中にはそれぞれ活躍する人も増えましたし、組織化して、より広くランジェリーの魅力を伝えていきたいです。一般の人向けに、自分の体に意識を向けるきっかけとなる検定や、プロのランジェリースタイリストを目指す人のための検定も予定しています。一般の消費者の間でランジェリーの知識が広がって高まれば、その人の人生が豊かになるだけでなく、商品の価値が伝わり、その結果商品が売れて業界全体が発展すると私は信じています。

川原好恵:ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルス分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター、日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身

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