ビューティ

ビューティ企業が次々とスキンケアブランドを買収するワケ 全世界でスキンケアブーム

 現在グローバルでスキンケア市場が急成長しています。例えばエスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)の高級スキンケアブランド「ドゥ・ラ・メール(DE LA MER)」は2018年6月期で売り上げ10億ドル(約1080億円)を超え、同社の中で「エスティ ローダー」「クリニーク(CLINIQUE)」に次ぐブランドになりました。プロクター・アンド・ギャンブル(PROCTER & GAMBLE)の「SK-II」も絶好調で、18年の売り上げは前年比30%増の20億ドル(約2160億円)を突破しました。そのほか外資系企業の18年度の決算はどこも、「スキンケアが好調」と振り返っています。そして先日、ビューティ・パーソナルケア大手のユニリーバ(UNILEVER)が米国発スキンケアブランド「タチャ(TATCHA)」を買収すると発表しました。

 ではなぜ、スキンケアがここまで好調なのでしょうか?日本ではクレンジングした後に化粧水、美容液、乳液、アイクリームと手間をかける人も多く、スキンケアが好調というのはある意味当たり前で不思議に思うかもしれません。ですが、海外では今までメイクの売り上げが圧倒的でした。スキンケア研究が進んでいるフランスでさえ、水道水が硬水のため洗顔はミセラーウオーターで行い、その後クリームのみで保湿を済ませることもあるそうで、そこまでスキンケアの売り上げが伸びていませんでした。こういったスキンケアルーティンが間違っているわけではなく、シンプルな美容法を好むフランス人だったりと、それは文化の違いなのです。

 そういった中でのスキンケア市場の伸長は、最近のグローバルでのウエルネス・ヘルスブームが一因と考えられます。肌の健康にも気を使う人が増えていて、それはエイジングを気にする大人の層だけでなく、最近は若い世代もそのブームからスキンケアをする人が増えているのです。例えば若年層に大人気の米国発「グロシエ(GLOSSIER)」はスキンケア製品だけでなく、メイクも“肌を覆い隠さず、素肌を生かす” ような、健康的なルックをかなえるアイテムを販売しています。「クラランス(CLARINS)」も4月にミレニアル層向けのスキンケアライン「マイ クラランス」をデビューしました。自然由来の成分を88%以上配合している同ラインですが、その発表会では、「世界中で若年層は健康に対する意識が高く、スムージーを飲んだり、エクササイズするのはライフスタイルの一部で当たり前。精神的なストレスに加え、スマホのブルーライトや環境汚染による肌ダメージも高く、ヘルスコンシャスなミレニアル世代にはこれらをケアしたい人が増えている。さらに環境への責任感も強く持っており、ビーガンやナチュラル処方を求めている」と説明していたのが印象的でした。実際、ユニリーバやロレアルはナチュラル系のスキンケアブランドを自社ブランドとして立ち上げたり、買収したりしています。さらにカイリー・ジェンナー(Kylie Jenner)も5月に「カイリー スキン(KYLIE SKIN)」を立ち上げて大きな話題を呼びました。

 また、スキンケアを重視する韓国の化粧品がブームになっているのもその一つの要因と言えます。セフォラ(SEPHORA)ではKビューティ専用のコーナーができていたり、大手量販店のターゲット(TARGET)やウォルマート(WALMART)でも韓国の化粧品が取り扱われるようになりました。K-POPの欧米進出が大きな“韓国ブーム”の火付け役になっていますが、その余波はビューティやファッションにも及んでいるのです。このようにスキンケアへの関心が高まっているだけでなく、対象の顧客も広がっていることが背景にあります。

 そしてスキンケアがここまで大きく売り上げを伸ばしているのは、中国市場の成長も挙げられます。先日米「WWD」が世界のビューティ企業の売り上げランキングを発表し、「WWDビューティ」6月20日号でもその詳細をお伝えしましたが、どの企業も中国市場の成長が増収の要因と述べています。中でもロレアル(L'OREAL)はアジアパシフィック事業の売り上げが初めて北米を上回って同社内での売り上げ規模2位になり、近いうちに1位の西欧をも抜くと考えられていますし、グループ クラランス(GROUPE CLARINS)は中国が17年の4位から、18年に一気に1位に上り詰めました。中国人は日本人と同様にメイクよりもスキンケアを重視する人が多く、富裕層はもちろん、一般消費者も美容にお金をかけ始めているのです。パイの大きい中国市場での高いスキンケアパフォーマンスは今後も大きなポテンシャルとなるでしょう。

 では、次は何のブームが来るのでしょうか?個人的にはスキンケアブームはしばらく続くと思っています。いったんヘルシーな生活に慣れると、“アンヘルシー(不健康)”な生活に戻ろう!と思う人がなかなかいないのと一緒で、肌のケアにこだわり始め、その効果を実感すれば、後戻りする人は少ないのではないでしょうか?世界の人も日本人同様に肌の手入れをするのが当たり前になってくるのではないかと思います。

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