PROFILE: KOTA/ジェントルイス ディレクター

ファッションデザイナーでインフルエンサーのKOTAは、SNSの総フォロワーが55万人を超えるインフルエンサーでありながら、エニイマインド グループの社員という変わり種だ。同社の「D2C for Influencers」から生まれた自身のブランド「ジェントルイス(JENT LOUIS)」は、8月22日、東京・原宿にブランド初の常設旗艦店をオープンした。黒とシルバーで統一した店内は、カラフルな原宿の街並みへのアンチテーゼだという。デザイナー、MD、データ分析の担当者といった同社のチーム力を活用しながら、自らの夢を叶えることに邁進している。
二人三脚のものづくり

ブランドの立ち上げから約2年、KOTAは社外のデザイナーと組んでいる。きっかけは入社時の相談だった。「本当に価値あるものを届けられているのか。そこがブランドの寿命につながると感じていた」。ものづくりを強化したいと伝えると、事業部長があるベテランのファッションデザイナーを紹介してくれた。
2人の関係は「本当に二人三脚」だ。プライベートでも飲みに行き、ダーツやバイクも教わった。免許を取る前に、そのデザイナーのバイク好きに影響されてヤマハのドラッグスター400を買ってしまったと笑う。こだわりを詰め込めば価格は上がる。そのトレードオフの場面では、デザイナーが作り方の代案を出し、KOTAが客に近い目線で価格を見る。枠だけを決め、生地やシルエットはセッションを重ねて詰めていく。工場との商談にも2人で出向く。
前年割れなしの2年
売り上げは「前年を割ったことがなく、ずっと伸びている」。最初にヒットしたアイテムの袖や加工を変えてアップデートし、ナイロンのテック系素材を差してMDの幅を広げてきた。「素材を変えても『ジェント ルイらしいよね』と言われる要素を落とし込めれば売れる、という答えが見えてきた」。新作は基本的に毎月5〜7型をドロップし、シーズンの立ち上がりには20型前後を投入する。
支えるのは熱量の高い顧客だ。自社ECで1回以上購入した客は約5000人で、うちリピーターが50%以上を占める。開店前には完全チケット制のプレオープンを4日間開き、購入額の上位客には招待状も送った。来場は約200人、客単価は5万3000〜5万4000円ほどだった。KOTA自身もサンプルの段階からほぼ毎日着用し、イベントでは客の「着すぎてやばいです」という声に耳を傾ける。「あくまでリアルクローズなので」。
チームが“守り”を固める
インフルエンサー会社員であることの強みは、チームにある。データ分析の担当者が顧客をセグメントに分け、チケット購入者の過去の購入額を受付で確認できるリストまで用意した。MD担当は、KOTAが出したいものを見て「この日にこれをドロップした方がいい」と助言する。「ディレクターの仕事はここからここまで、と線が引かれていて、僕はそこを全力でやる。MDや生産には守りのプロがいて、引っ張る部分は自分が引っ張る」。
報酬の仕組みも独特だ。固定給に加え、四半期ごとにブランドの成果に応じたインセンティブが支払われる。指標は売り上げではなく利益に置かれている。「売り上げだけなら、セールでも、どのプラットフォームでも売ればいい。でも利益を見てくれるから、ブランドを大事にしながら頑張った分が返ってくる。循環している感じがある」。店を出すことも在庫を持つことも、「会社のバックアップがなければできなかった」。
天井の光に900万円
原宿店の準備には、物件探しから約10カ月を費やした。工事費も素材費も高騰するなか、「一番うまくいった」と胸を張るのが、合皮の壁面とアルミのスピーカーだ。ブランドを象徴するレザーを店に落とし込もうと、造作物のデザイナーに依頼し、工房にも足を運んだ。天井を巡る円形の照明は曲げ加工が難しく、「かなりのお金がかかった」。内装費は予算を超えたものの、その分、売り上げ目標を引き上げた。
目標は、初年度で売上高1億円。店頭には、1年前から手伝ってくれていた内定者インターンに加え、新たに2人のスタッフが立つ。いずれも元はブランドの客で、1人はこの店のために上京し、もう1人は前の仕事を辞めて加わった。
原宿を“ホーム”に
KOTAにとって原宿は「日本のファッションカルチャーの発信地」だ。「ジェント ルイはどこから生まれたのか、と聞かれたときに『東京・原宿』という明確なポジションを作りたい」。さまざまなカルチャーが入り混じる街で、黒と銀の店は今はまだアウェーかもしれない。それでも「ここから広げて、ホームにしていきたい」と語る。
世界観へのこだわりは、自身の服の遍歴にも根がある。かつてはストリート系でスニーカーを集め、韓国ファッションにも惹かれた。ただ、自分のスタイルにコンプレックスがあり、スタイルがよく見える服を探すうちに今の黒に行き着いた。「カリスマ性のあるブランドには、宗教のようにコアなファンがいる」。だからこそ尖らせる部分は尖らせ、インスタグラムやサイト、ルックまで表現を一貫させる。ルック撮影には、D2Cブランドとしては異例の予算を投じている。好きなのは0から1を作ることだ。「ここで生まれたセンスが原宿で評価されて、海外で評価されていくのが一番の夢」。10年後に別のことをやりたくなったときの土台を、今ここで作っているという感覚もある。「今は駆け抜けている最中です」。