(右)藪野淳/欧州通信員:今季は予想以上に暖かく、晴天が続いた。結局、日中は扇子も必要なほどで、Tシャツかシャツ1枚で十分。セーターやアウターなどパリに持ち込んだ服の半分は出番がなかった ILLUSTRATION : UCA
毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2026年10月19日号からの抜粋です)
藪野:2027年春夏のパリ・ファッション・ウイークは、日常生活で着用できることを念頭に置いた、現実的な服作りや地に足の着いたクリエイションが際立ちました。ただ「クワイエット・ラグジュアリー」ではなく、日常着に華やかさや軽やかさを加えることでエレガンスを表現する流れが広がった印象です。
「新しいラグジュアリーのカタチ」が具現化してきた
村上:26年春夏に移籍したデザイナーたちによる「新しいラグジュアリーのカタチ」の模索が、エレガントな日常着となって現れています。特にビッグブランドを渡り歩く移籍組は、「ハレの日だけのラグジュアリー」ではなく、「着ると、ハレの日みたいな気分になれるラグジュアリー」を生み出そうとしているように感じました。
藪野:デザイナーたちによる新しいビジョンをいかに日常に落とし込むか、という段階に進んでいるように感じます。
日常着のエレガントな進化に注目
村上:その意味でやっぱり「さすがだな」と思ったのは、「シャネル(CHANEL)」「ディオール(DIOR)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」ですね。「シャネル」は素材の革新によって、ツイードジャケットを普段から楽しめるスタイルに進化させています。「ディオール」はジョナサン・アンダーソンがデビュー以来挑み続ける「名作ドレスのカジュアル化」の延長線上で、軽やかで気負わず着られる服を提案しています。「バレンシアガ」は、“ハサミの魔術師”と呼ばれたデザイナーが確立したブランドらしく、裁断と縫製を駆使してTシャツにペプラムを生み出したり、ジーンズにバイアスカットのニュアンスを加えたり。アプローチは違えど、いずれも軽やかに仕上げることで「本当にすてきな日常着」へと昇華しています。
藪野:「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」も良かったですね。ジュリアン・クロスナーは創業者からの円滑な継承の好例です。クラシックなイメージの“グラマー”も彼の視点で解釈すると、こんなに新鮮に見えるんだなと感心しました。また、パリコレ期間中の現地では、正式発表前から「サンローラン(SAINT LAURENT)」のアンソニー・ヴァカレロの退任説でもちきりでした。
村上:ヴァカレロの後任には、「クロエ(CHLOE)」のシェミナ・カマリが有力候補として上がっていますよね。一方、「バレンシアガ」のピエールパオロ・ピッチョーリも退任するのでは?と言われています。シェミナは3度目の「クロエ」がどハマりして、顧客が期待するかわいらしさを取り戻した立役者。上述の通りピエールパオロはブランドの本質を現代的に表現する力に長けた大ベテランだから、いずれももう少し、いやもっと、このままクリエイションを見続けたいなって思っちゃいますね。
藪野:本当にブランドには、デザイナーが真価を発揮できる環境と時間の余裕をもってもらいたいものです。