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約30年ぶりに「シャネル」に選ばれたSAWA 50代の日本人モデルがランウエイに挑戦し続ける理由

PROFILE: SAWA/モデル

PROFILE: (サワ)1990年代からファッションモデルとしてキャリアをスタート。数々の雑誌や広告のほか、パリやミラノ、NYなど海外でも活動する。2021年12月にメンタルメイクコーチング「ゆうなぎ」を設立。モデル業に加え、モデルやクリエイターとして活動する人々のパーソナルメンターも務めている。26年3月の26-27年秋冬シーズン、約25年ぶりにパリ・ファッション・ウイークにモデルとして復帰した。モデル事務所イマージュに所属

今年3月、52歳にして約25年ぶりにパリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)に復帰した日本人モデルのSAWA。「リック・オウエンス(RICK OWENS)」では、経験の浅い若手モデルに交じり、人生初のカラコンに約1.5kgのブーツを身につけ、堂々とランウエイを歩いた。そして前シーズンに続き、9月の2027年春夏パリコレに再挑戦。どれだけ経験を積んだモデルでも、ショー開催前に行われるキャスティング(オーディション)で見せる数秒のウオーキングによって、起用されるかどうかが決まる狭き門だ。そんな中、SAWAは今季、マチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)=アーティスティック・ディレクター率いる「シャネル(CHANEL)」のショーに抜擢された。さらに「マリー・アダム=リーナート(MARIE ADAM-LEENAERDT)」のショーにも出演するなど、ラグジュアリーメゾンから新進ブランドまでその実力を発揮した。

SAWAが「シャネル」のショーを歩くのは、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)時代の1997-98年秋冬シーズン以来、約30年ぶり。それは、SAWAが初めてパリコレに挑んだシーズンでもあった。当時22歳だった自分と、結婚や出産を経て53歳になった現在の自分。再び同じメゾンのランウエイに立ったとき、何を感じたのか。そして、なぜ今も世界のランウエイに挑み続けるのか。着用したルックやマチューの素顔、約30年前との違い、そして今あらためて思う“モデルという仕事”について聞いた。

2度目の「シャネル」は
「人生からの思いがけない贈り物」

WWD:率直に、今シーズンの「シャネル」のショーを歩いていかがでしたか?

SAWA:まだ少し夢を見ているような、不思議な気持ちです。1997年、22歳になる年に初めてパリに来たシーズンに、カール・ラガーフェルドに見つけていただき、初めて「シャネル」のランウエイを歩きました。

あれから約30年。まさか再び「シャネル」のランウエイを歩く日が来るなんて、当時の私には想像もできませんでした。その間に結婚し、母になり、モデルとしてもさまざまな経験を重ねてきました。今回ランウエイを歩きながら、いろいろな場面が走馬灯のようによみがえり、あの頃の自分と今の自分が重なって、何とも言えない感情に包まれました。長くモデルを続けてきたからこそ出合えた、人生からの思いがけない贈り物のような時間でした。フィナーレを終えた後は、自然と涙があふれました。

WWD:着用したルックについて教えてください。

SAWA:全体に細かなビーズを施したツーピースです。一見すると「シャネル」らしいツイードのようにも見えるのですが、近くで見るとビーズで繊細な格子模様が表現されていて、その手仕事の美しさにも「シャネル」らしさを感じました。

透け感のあるトップスに、体のラインに沿うスカート。動くたびにビーズが光を受け、裾のフリンジが揺れます。見た目はとても軽やかですが、実際にはビーズに重さがあるので、テンポの速いウオーキングでは少しハードでした(笑)。

透け感や女性らしい繊細さがありながら、同時に力強さもある。フィッティングで鏡に映った自分を見たときは、「この服、SAWA以外に誰が似合うの?」って思ってしまうほど、うっとりしました(笑)。だって、大胆で女性らしくて、それでいて力強いじゃないですか。そんな相反する魅力が共存した、とても印象的なルックでした。

WWD:マチューから、コレクションの説明や歩き方についてリクエストはありましたか?

SAWA:マチューからコレクションについて細かな説明はありませんでしたが、リハーサルのときに制作チームから言われたのが、「Don’t be serious, but walk strong.」という言葉。「シリアスになりすぎず、でも力強く歩いて」と。フィナーレでは、「心地よく、優雅に、自由に」というようなニュアンスのアドバイスもありました。そのときは感覚的に受け取って歩いたのですが、ショーが終わってから、今回のコレクションが表現していた女性の自由や、人生の中で変化していくさまざまな自分、という背景を知って、とても腑に落ちました。

初めてパリに来た約30年前の自分も、今の自分も、どちらも私自身です。コレクションの背景を知ったとき、自分が歩んできた人生とも不思議なくらい重なって、より特別なショーになりました。

WWD:バックステージで会ったマチュー、どんなデザイナーでしたか?

SAWA:本番前に、マチューが「大丈夫?」と声を掛けてくれました。本当に短いやり取りでしたが、その表情や何気ない仕草からも、彼の愛情や優しさを感じました。そこにいるモデル一人一人に笑顔で声を掛けている姿もとても印象的で、単にデザイナーとモデル、あるいは一緒に仕事をするチームという関係を超えて、温かな家族のようなつながりがあるように見えたんです。「シャネル」という大きな家族そのものを、彼自身がとても愛おしく思っているようにも感じました。何気ない光景でしたが、そこから彼の人柄や、「シャネル」に関わる人たちへの深い愛情が伝わってきました。

WWD:会場のグラン・パレの長いランウエイを歩くコツはある?

SAWA:長いランウエイだからといって特別に何かを変えるわけではありませんが、ウオーキングのリズムと呼吸はいつも意識しています。ただ、今回はリハーサルを終えてあらためてその長さを実感しましたし、歩くテンポも速い!50代の私からすると、もはや競歩に近い感覚でした(笑)。何ともぜいたくなエクササイズですよね。ただ、身体は正直なので、本番ではとにかく足がつらないことを願っていました(笑)。実際にランウエイに出ると、身体の動きに合わせて揺れるビーズのフリンジを感じながら、そのリズムを楽しんで歩くことができました。

WWD:若い世代のモデルとの出会いも多いと思います。印象に残ったモデルは?

SAWA:今シーズンは若いモデルだけでなく、30代以上のモデルたちも多く活躍しているように感じました。さまざまな年齢やキャリア、バックグラウンドを持つモデルが同じランウエイに立っていることを、とても素敵だと思います。私自身も、世代の違うモデルたちと同じ空間で仕事をすることで、たくさんの刺激をもらっています。

今回、「シャネル」のフィナーレ後には、長年トップモデルとして活躍しているリウ・ウェン(Liu Wen)と感動を分かち合いました。彼女とは今回が初対面だったのですが、同じアジア人モデルとして、長年にわたり世界の第一線で活躍し続けている彼女には心からリスペクトしています。その彼女とあの特別な瞬間を共有できたことも、今回のショーの忘れられない思い出の一つです。

30年前と今
それでもパリコレに挑み続ける理由

WWD:約30年前のカール・ラガーフェルド時代と比べ、変わったこと、変わらないことは?

SAWA:当時とはキャスティングの環境も、モデルを取り巻く状況も大きく変わったと感じています。ただ、今回あらためて感じたのは、モデル一人一人が持つ個性や、その人にしかない存在感を見つけてもらえる喜びは、時代が変わっても変わらないということです。

1997年、ブックすら持たずに初めてパリへ来た、まだ何者でもなかったSAWAをカールが見つけてくれた。そして約30年後、今のSAWAをもう一度「シャネル」のランウエイに迎えてもらえた。若かった頃の私と、人生を重ねた今の私。そのどちらにもモデルとしての魅力や可能性を見いだしてもらえたことが、何よりもうれしいです。

WWD:これ以外にパリでのモデルの仕事は?

SAWA:今シーズンも「マリー・アダム=リーナート」のショーに出演しました。「ANDAMファッションアワード(ANDAM Fashion Awards)2026」受賞後のシーズンで、前シーズンに続いて参加できたこともうれしかったです。また、「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」のEC撮影もしました。EC撮影はモデルとして初めての経験だったのですが、もう“着せ替えサーキット”でした(笑)。日本ではなかなか経験できない、貴重な仕事をさせてもらいました。

WWD:50代になった今も、パリコレに挑戦し続ける理由とは?

SAWA:約25年ぶりにパリコレへ戻り、今回が2シーズン目です。あらためて感じるのは、この仕事にはいくつになっても新しい発見や挑戦があるということ。長く続けてきたからこそ得られたものもありますが、今でも学ばなければならないことがたくさんあります。

キャスティングへ行き、選ばれることもあれば、選ばれないこともある。それは約30年前も今も変わりません。だからこそ、今の自分を見てもらい、純粋に選んでいただけることはモデルとして本当にうれしいです。年齢やこれまでのキャリアにとらわれず、今の自分に何ができるのか。そして、日本人の次世代モデルたちに何を残していけるのか。その可能性を、これからも楽しみながら探していきたいと思っています。

WWD:「シャネル」ショーを歩くことは、日本人モデルの一つの夢でもあると思います。

SAWA:「シャネル」のショー日本人モデルの起用は、カールの後を継いだヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)の時代にMikaが起用されていました。マチューの新体制になり、再び日本人モデルがランウエイに立つことが、次世代の日本人モデルにとって少しでも希望になるのだとしたら、何よりうれしいです。

次世代へつなぐ
SAWAが考える“モデルという仕事”

WWD:今回は次女と一緒にパリを訪れたそうですね。

SAWA:今回、私にとってもう一つ特別だったのは、次女を連れてパリコレに参加できたことでした。渡仏前、彼女自身にもいろいろなことがあったので、この旅を通して少しでも世界の広さや、多様な価値観に触れてもらえたらという思いがありました。

キャスティングからフィッティング、本番まで、ずっと同行してくれた娘に、普段日本で見ている“母親としての私”とは違う姿や、一つのショーが出来上がるまでに関わる多くの人たちの情熱を間近で見てもらえたこともうれしかったです。

世界は広く、生き方も可能性も一つではない。今回パリで見たものや出会った人たち、感じた空気が、いつか彼女の人生のどこかで小さな力になってくれたらと思っています。私自身も、そんな娘と時間を共有できたことが何より幸せでした。

WWD:あらためて、SAWAさんにとってモデルとはどんな仕事ですか?

SAWA:モデルという仕事は、ただ服を美しく見せるだけではありません。その服に込められた世界観やデザイナーの思いを自分の身体を通して表現し、そこに自分にしか生み出せないものを重ねていく仕事だと思っています。

30年以上続けてきた今も、この仕事を尊いものだと感じていますし、何より心から大好きで、誇りに思っています。

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