ファッション

素材の再生から伝統技術まで「フリーズ・ソウル」で見るサステナブルなアート表現

新セクションで広がる素材とクラフツマンシップをめぐる試み

今年で5回目を迎えたアートフェア「フリーズ・ソウル」(FRIEZ SEOUL)。「フリーズ・ソウル」というと、まず語られるのはアジアのアートマーケットとしての急成長ぶりだが、サステナビリティの観点からも見てみたい。同アートフェアは、世界のギャラリーが個別にブースを構える”ギャラリーズ”のほかに、”フォーカス””マテリアル プラクティス”"スポットライト”「というエリアがある。今年から新設された"マテリアル プラクティス”は現代アートとデザイン、そして工芸が交差する領域にフォーカスした素材そのものに光を当てる試みを紹介するエリアだ。ここで注目を集めたのが、ロンドンのチャールズ・バーナンド・ギャラリーが出展したスタジオ・ファーザーモアのダイニングテーブル「ディオーネ」。リサイクルアルミニウムにダイクロイックコーティングと真鍮を組み合わせたもので、素材の再生と洗練されたデザインを両立させていた。本会場から少し離れたイタリア大使公邸でのサテライト展「イタリー アット フリーズ : ザ ゴールデン トレース」も注目だ。ここでは、韓国人アーティストのイ・スギョンが、陶片を金箔で継ぎ合わせたシリーズ作品の「Translated Vase」を、イタリア人アーティストのアンドレア・フランコリーノと2人展形式で発表。割れて捨てられるはずだった器の破片を、実用品でも彫刻でもない新たな立体へと再構築した。

サステナビリティとは、単に環境負荷の少ない素材を使うことではない

アーティストたちは、アートとサステナビリティをどう考えているのだろう。その問いを考える手がかりとなるのが、会場で注目を集めたモビール アゴラだ。韓国を代表するアーティストデュオであるムン・キョンウォン&チョン・ジュンが手掛けた参加型のインスタレーションで、色も形も異なるリサイクルプラスチック製の椅子を円形に配置。来場者が座り、プラスチック汚染や気候危機について語り合う場となった。

キョンウォンとジュンの意図は、プラスチックの使用を減らすという単純な発信ではない。彼らは、「私たちは再生プラスチックを“人新世(アントロポセン)の化石”として捉えている。それは、人間の欲望が生み出すシステムによって使い古され、廃棄された物質。鑑賞者は、この椅子に座ることで、消費と廃棄が延々と繰り返される循環に、自分自身も加担しているという事実と身体的に向き合うことになる。素材をリサイクルすることは、単に資源を循環させるための行為ではなく、絶え間なく続く生産と廃棄の循環を批判的に考える対象へと転換することだ」と述べている。この作品のメッセージは、プラスチックのリサイクルが環境問題解決になるということではなく、リサイクルを入り口に、なぜ私たちはこれほど大量に作り、消費し、廃棄するのかという仕組み自体に目を向けさせることにある。持続可能なアート制作とはどのような意味を持つのか尋ねると、キョンウォンとジュンは、「サステナビリティは、洗練されたブランディングや、免罪符のようなものとして扱われがちだ。環境に配慮した素材を選ぶことやカーボンフットプリントを削減することは、現代のあらゆる作り手が担うべき基本的な責任だが、それによって作品の本質的な目的が正当化されるわけではない。私たちにとって、本当の意味でのサステナブルなアートとは、単に"無害なもの”を作ることではない。持続不可能な社会システムの論理を、絶えず揺さぶり続けることだと考える。リサイクルプラスチックを用いるのは、廃棄物を美化したりロマンチックに描いたりするのではない。それは、大量生産がもたらす疲弊と、過剰消費がもたらす傷跡を可視化し続けるための"翻訳”のプロセスだ。物質の循環を超えて、私たちの考え方や生き方そのものを変えるような批判的な摩擦を持続させること。それこそが、私たちにとってサステナブルなアートの本質」と語った。

忘れてはならないのが、「フリーズ・ハウス・ソウル」で竹のアートを披露した日本人作家の存在だ。四代田辺竹雲斎は、約7000本の割竹を用いたインスタレーション「INVISIBLE FOREST」を発表。竹雲斎にとっても、サステナビリティとは単に環境負荷の少ない素材を使うことではないという。彼は、「私にとってサステナビリティとは、次の世代に竹という素材、竹林、そして何百年も受け継がれてきた技術を残すこと。そして、その技術を守るだけではなく、現代に合う形へと進化させることだ。私自身も、初代から受け継いできたものを時代に合った表現へと進化させて、次の世代へつないでいきたい」とコメント。作品に使った竹は一度展示して終わりではなく、解体後に別の場所で新しい作品として生まれ変わる。竹雲斎は「自然も、文化も、技術も、人間も、互いにつながり、影響し合いながら循環していく。作品を通してその循環を考え、未来へつないでいくことが、私自身のサステナブルなアート制作だと思っている」と語った。

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