ビューティ
特集 CEO2024 ビューティ編

【ファイントゥデイホールディングス 小森哲郎社長】技・生・販の一貫体制で効率化と売り上げ拡大を実現

PROFILE: 小森哲郎/ファイントゥデイホールディングス社長

小森哲郎/ファイントゥデイホールディングス社長
PROFILE: こもり・てつお)大学院卒業後、外資系コンサルファームを経て、40代で「日本企業の経営革新に携わりたい」という思いを胸に経営者の道へ。その後は経営のプロとしてさまざまな業界でCEOを歴任。数々の会社の社外取締役も務める。21年よりファイントゥデイ社長兼CEO。23年の持株会社制移行に伴い、ホールディングスの代表取締役CEOも兼任 PHOTO : YOHEI KICHIRAKU

誰もが毎日を心豊かに、前向きに過ごすための日用美品の提供を目指すファイントゥデイホールディングス。2021年に資生堂のパーソナルケア事業を引き継いでファイントゥデイ資生堂を設立し、23年に社名から資生堂の冠を外して生産拠点や研究所の営業を開始。技術開発から生産、販売までの一貫したビジネスシステムで飛躍を目指す。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

日本の美意識で育んだブランドを
地域のニーズや風土に合わせて展開

WWDJAPAN(以下、WWD):社名変更後は活発な動きがあった。

小森哲郎社長(以下、小森):23年1月1日付で持株会社制に移行し、ファイントゥデイホールディングスが事業開始した。同年4月に資生堂の久喜工場を前身とするファイントゥデイインダストリーズが当社の完全子会社となり、7月にグループ初となる研究所“ファイントゥデイ ビューティーイノベーションセンター”を豊洲に開所、12月に資生堂の子会社でありベトナム工場を運営するShiseido Vietnam Inc.を取得した。これにより、創業以来推進してきた技術開発から生産・販売に至るまでの一貫したビジネスシステムが整ったことになる。21年の会社設立当初は300人程度だった従業員も、今や3000人近くまでになっている。

WWD:パーソナルケア領域を手掛けるが、その概念とは?

小森:われわれがパーソナルケアと呼んでいる分野は、世の中ではトイレタリーと言われる。元々の事業の名前が資生堂ファイントイレタリーで、トイレタリーにファインがついていることからも分かるように、単なる消耗品ではなくちょっと高級感がある化粧品に限りなく近いコンセプトを掲げていた。われわれが提供しているのは、機能性を超え、情緒的価値まで含めた商品、使うことで前向きになるなどの行動変容まで起こさせるような商品だ。当社には、資生堂で育まれた美意識を持ち、長年化粧品に携わってきた人材が豊富だ。その力を発揮した化粧品的なアプローチやコミュニケーションができるのは強みだ。

WWD:今後、目指すところは?

小森:「世界中の誰もが、素晴らしい一日を紡ぎ、いつまでも美しく、豊かな人生を送れるようにすること」をパーパスに掲げている。その実現に向け歩んでいくと同時に、100年続く企業を目指している。化粧品企業における一事業から、1000億円以上の売り上げと高収益を出すパーソナルケアカンパニーとして、生産ラインの効率化やITの仕組みの変革、海外拠点の再編成など一つ一つ手掛けてきた。事業運営と組織づくりを、全員の力でコツコツ、スピード感をもって同時並行させてきたので、社内では自分たちの会社を“ビッグベンチャー”と捉えている。

WWD:小森社長自身、ファイントゥデイは社長として4社目。これまでの経験が生きている?

小森:業界が違っても、いい会社というのは「早く課題を見つけて早く手を動かす」という共通点がある。当社はそれを「自律的な課題解決のガバナンス」と呼んでおり、その方針を就任初日に全社員に伝えた。それぞれの問題は1人で解決できることではなく、部門を超え、国・地域を超えて解決する必要がある。普通、特別なことをやらないと社内の一体感は生まれないものだが、当社は乗り越えるべき課題がたくさんあり、日々それを共有し、チームを組み、知恵を出し合って全員で解決していく土壌ができている。それを支えているのが、日用品・化粧品企業をはじめ、自動車や航空、製薬業界など、あらゆる産業から来た豊かな人材で、それは財産でもある。人材の多様性が企業文化となり、事業面以外のESGも進みやすい。TCFDレポートの作成やエコバディス社のサステナビリティ評価で“ゴールド”を獲得したのはいい例だ。パーパス実現のためには、事業とESGを両輪で回すのが非常に重要であり、それが構造的にできているのが当社の特徴でもある。

WWD:新ブランド「プラストゥモロー(+tmr)」も発売する。

小森:ファイントゥデイとして初となるオリジナル新ブランドで、高価格帯のプレミアムヘアケア市場へ参入する。11月に全国のアットコスメストアで先行販売し、2月には一気に全国展開する。品質やパッケージデザインにこだわったのはもちろんだが、本体ボトルにリサイクルPETを採用したり詰め替え用パッケージに植物由来のプラスチックを使用したりするなど、事業とESGを両輪とするパーパス経営を体現する商品だ。

WWD:今後の海外戦略をどう考える?

小森:現在、中国、アジア太平洋地域で11の拠点があり、売り上げの半分以上を海外が占める。韓国や台湾など成熟した市場がある一方で、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピンなどもプレミアム商品人気が急速に進み、今伸び盛りだ。“パーフェクトホイップ”の「専科(SENKA)」とヘアケアブランドの「ツバキ(TSUBAKI)」は成長著しく、日本で大人気の「フィーノ(FINO)」も各市場に展開している。商品の良さをどのように伝えていくか、現地できっちりプランニングしていくことと、グローバルにモノを考える思考と体制が重要だ。「プラストゥモロー」をはじめ、新ブランドを海外で販売する可能性もあるが、いずれも日本でしっかり基盤を固めることが先決。日本の美意識で育んだブランドを、地域のニーズや風土等に合わせて展開するというのが、われわれの勝利の方程式だ。

会社概要

ファイントゥデイホールディングス
FINETODAY HOLDINGS

資生堂から「ツバキ」や「専科」、「ウーノ(UNO)」などのパーソナルケア事業(日用品事業)を引き継ぎ、21年7月に“ファイントゥデイ資生堂”として事業開始。23年1月1日付で社名を“ファイントゥデイ”に変更すると共に、持株会社制に移行。海外も含む全拠点、および技術開発・生産・販売の各機能がより一体となり、自律したメーカーとしていっそうの企業価値の向上を加速させる

問い合わせ先
ファイントゥデイお客さま窓口
0120-202-166

TEXT : YOSHIE KAWAHARA

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