ビューティ
特集 CEO2024 ビューティ編

【資生堂 魚谷雅彦会長CEO】未来の経営リーダーの輩出を目指す

PROFILE: 魚谷雅彦/資生堂会長CEO

魚谷雅彦/資生堂会長CEO
PROFILE: (うおたに・まさひこ)1977年、ライオン歯磨(現ライオン)入社。米国コロンビア大学経営大学院でMBAを取得。クラフト・ジャパン(現モンデリーズ・ジャパン)副社長を経て日本コカ・コーラで社長、会長を歴任。2013年4月、資生堂のマーケティング統括顧問に就任。14年4月に社長CEO就任、23年から現職 PHOTO : HIRONORI SAKUNAGA

世界で勝てる日本発のグローバルビューティカンパニーを目指す資生堂は、「守り」から「攻め」に転じる躍動の年として昨年、中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」を策定し始動した。スキンビューティ領域を強化し新しい価値を提供するとともに、経営理念の「ピープルファースト」の考えのもと、創業の地から世界で活躍できるリーダーの輩出を目指す。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

“ほとばしる”熱量を持ち
ビジネスの成長と変革を実現する

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年を振り返ると。

魚谷雅彦会長CEO(以下、魚谷):コロナ禍を経て、お客さまはより自身の肌や健康状態、ライフスタイルに合った商品を求め、質の高いカウンセリングを重視する傾向が強くなった。パーソナルビューティパートナー(PBP=美容部員)は知識と技能にさらに磨きをかけ、顧客満足度の高い接客へとつながっている。その中で「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」は、100年以上にわたる技術を生かした高品質な商品の開発と生産、顧客サービスが総合的に効果を発揮し、力強い成長を見せた。効果実感のある商品力は大前提だが、品質やデザインの細部に至るまでラグジュアリー感を大事に、サステナビリティ含めてブランド独自の世界観を打ち出せている。今後「シセイドウ(SHISEIDO)」とともに、資生堂の看板ブランドとしてさらに成長させていく。

WWD:中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」の重点領域として人財育成も推し進めている。その一環で、次世代を担う経営リーダーを育成する施設「Shiseido Future University」を昨秋、創業の地である東京・銀座にオープンした。

魚谷:日本も含めたグローバルで企業が永続的に成長するためには、多様性が重要だと考える。資生堂は日本で誕生し、考え方の根底に“日本”があるが、市場とお客さまは“世界”に広がっている。生活スタイルも違えば、言語も文化も違う。日本から海外の拠点に駐在員を派遣する時代もあったが、いまは世界中で資生堂のパーパスや企業文化、ピープルファーストの考え方、われわれの目指す姿に共感してくれる人が増え、仲間が集まっている。その仲間が力を発揮できる環境をつくるため、そして多様な価値観を持つ人たちに認められる企業になるためには、“ほとばしる”パッションとエネルギーを持ち合わせ、全体を包含できる突出したリーダーが必要だ。「Shiseido Future University」では、自らビジョンを描き、長期的な視点で企業価値を高め、変革を実現する経営リーダーの育成を目指す。

WWD:具体的には。

魚谷:国内外のグループ会社から選抜した次世代の経営リーダーとなる人財を中心に、オリジナルのリーダーシッププログラムを実施する。ビューティカンパニーにふさわしい美への感性や心の豊かさを育むため、150年にわたるDNAやヘリテージからインスピレーションを得られるようなスペースや、生け花や茶道などの日本文化を本質的に捉えるコンテンツも用意する。また、世界中から集まる参加者がフラットに交流できるスペースを設け、日本特有の自己主張をしてはいけない空気感や同調しがちな考えを壊したい。自分の意見が言い合えるようになれば化学反応が起き、新しい商品やサービスのアイデア、そしてイノベーションが生まれるだろう。事業も組織も多様化が進んでいるが、資生堂の“原点”を忘れないよう、創業の地である銀座からグローバルリーダーを輩出することに大きな意味があると感じている。

WWD:グローバルに活躍できる人財の投資を強める一方で、30年までに“スキンビューティ”領域で世界No.1を目指している。各市場をどのように捉えているか。

魚谷:スキンケアは、マイクロバイオームやダーマコスメ、サステナビリティなどの切り口で細分化が進んでいる。また、フレグランスも香りのみならず機能に着目した開発が行われるなどイノベーションが起きている。“スキン”の周辺領域でもあるインナービューティにおいては、もともとの東洋思想である医食同源、飲む・食べることで体や肌がきれいになるという思想がコロナ禍でより顕著に表れた。

WWD:そこで既存の化粧品ブランドを強化するとともに、ウェルネス領域展開への第一歩として、2月1日からインナービューティ事業を本格始動する。

魚谷:インナービューティに関しては、コラーゲンドリンクの“ザ・コラーゲン”を手掛けているものの、われわれは飲み物や食べ物の経験値が低い。カゴメが肌のことに触れた広告を打ち始めたのを見て、直感的にこれだと確信してカゴメの社長に直接ご相談して、2020年に共同研究を開始した。一方で、対症療法の薬ではなく体質改善に期待できる漢方にも興味があった。肌の調子を良くすることにつながるだろうとツムラに声を掛けたところ、共感を得てこちらも共同研究を進めている。両社とも、ビューティは踏み込んでいない領域であったが、「より良い社会を実現していきたい」という思いが一致して業務提携につながった。2月に立ち上げるインナービューティブランド「シセイドウ ビューティー ウエルネス」を通じて、2社と共同研究・開発した商品を日本国内で発売する。今後、他の食品系メーカーとの協業も視野に入れ、新たな健康美習慣を「Jビューティ ウエルネス」としてグローバルに発信し、新市場の創造を目指す。

会社概要

資生堂
SHISEIDO

1872年創業。スキンケアやメイクアップ、フレグランスなどの化粧品を中心とした事業のほか、レストラン事業など幅広く展開。自社開発やオープンイノベーション、戦略的M&Aなどを推進し、より健康的な肌を実現するスキンビューティ領域を強化。企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、本業を通じてより良い世界の実現を目指す

問い合わせ先
資生堂
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