ファッション

「ベドウィン」とコラボも ロサンゼルス発のサステナブルスニーカー「クレイ」のこだわりのモノづくり

 ロサンゼルス発のシューズブランド「クレイ(CLAE)」は、快適な履き心地と洗練されたビジュアルで認知を拡大中だ。リサイクル素材やビーガンレザーを使用し、再生可能エネルギーのみで工場を操業するなど、サステナビリティへの配慮が前提となったものづくりを実施する。その取り組みが共感を呼び、フランスのジュエリーブランドが販売員のユニフォームとして「クレイ」のシューズ採用したケースも。日本では2022現在、百貨店やオンラインなどで約30店舗を展開する。「コロナ禍以前から業績の年間成長率は20〜30%を維持している」と語る「クレイ」を率いるジェローム・トゥイリエ(Jerome Thuillier)=ブランド・グローバル・ディレクターにブランドが伝えたいメッセージやものづくりのこだわりなどを聞いた。

ブランドのコアバリューの
更なる強化を進める

WWD:ブランドのDNAは?

ジェローム・トゥイリエ=ブランド・グローバル・ディレクター(以下、トゥイリエ):「クレイ」は2001年にロサンゼルスで生まれたブランド。履き心地が良く、清潔感があり、洗練された素材を使ったスニーカーが、クラシックシューズとスポーツスニーカーの中間的ポジションとして人気を集めた。特にスケーター界隈では、スケート後にそのまま出かけられる、“アフタースケート”のシューズとして注目を浴びた。色使いや形、ロゴの使い方などがシンプルな見た目で、スニーカーとしては挑戦的なデザインだったと思うが、そのミニマルなところが愛される一因だろう。良い“テイスト”を持ったお客さまに支持されてここまできた。

WWD:ブランド・グローバル・ディレクターとしてどこまでブランドを統括する?

トゥイリエ:スケート業界に何年もいたので、「クレイ」というブランド自体は、ユーザーとして初期のころから気になっていた。正式に現職に就いたのは15年だが、数年前からコンタクトは取っていた。ヨーロッパに拠点を設け、マーケティングを担当するオフィスを作るというアイデアを掲げてディレクターに。フランスとロサンゼルスをつなげながら、デザインなども見ている。「DCシューズ(DC SHOES)」や「ヴェジャ(VEJA)」で得た経験は市場の理解に役立ち、今日に生きているだろう。最高の“カクテル”を作るためのレシピを作っている気分だ。

生産エネルギーや使用素材にこだわり
環境問題に対する確かな理念

WWD:「クレイ」のサステナビリティへの取り組みはどのようなものがある?

トゥイリエ:立ち上げ当初はオーガニック・コットンなどの素材を取り入れつつ、常にビーガン素材を使ったスニーカーをそろえていた。15年に入社したとき、製品の素材調達から改善したいと考えた。まずはビーガン素材の取り入れを増やし、そのほかの合成樹脂(プラスチックやポリ塩化ビニール)で作られていたパーツは全て、プラスチックごみのリサイクル素材などに変更している。これまでリサイクル素材で作られていなかったシューズの設計を見直している。メイン商材のレザーシューズはレザー・ワーキング・グループ認証のレザーを使用。ベトナムに拠点を置くパートナーは再生可能エネルギーのみで運転しながらレザーを生産している。太陽光や風力発電で生まれたエネルギーを使用し、生産に使用する水は工場内で循環させる。時間をかけて改善してきたところだ。早い段階からさまざまな素材の仕様に乗り出していたので、多くの試行錯誤がある。われわれがまずは道をかき分け、多くの人がその道に続くよう整えるのが使命だと思っている。

WWD:スニーカーはどのくらいの割合でリサイクル素材を使用している?

トゥイリエ:スニーカー単位では、完成品の数値を示すのは難しい。インソールは100%リサイクル素材を使用しているが、他の部分は22年現在、50〜70%となっている。ほぼ全ての製品に異なる割合でリサイクル素材を用いている。動物性レザーの丈夫さも理解して使用しているが、ビーガンレザーを使ったスニーカーは10%程度だったものが22年現在は50%を超えている。

WWD:ビーガンレザーへの完璧な置き換えを目指す?

トゥイリエ:動物性レザーは耐久性に優れていることは間違いない。ただそこだけにフォーカスすると動物の福祉などが考慮されなくなってしまう。現段階では、バランスを見つけることが鍵だと思う「クレイ」は動物性レザーの代替となる植物由来の素材を積極的に取り入れており、レザーの質感や見た目の美しさには自信がある。

WWD:サステナビリティのゴールは?

トゥイリエ:5年前、私の目標は現在とは大きく異なっていた。今までやってきたことをすごく誇りに思っている。これからの目標は、100%リサイクル素材を使ったスニーカーを、生産コストを抑えて作ること。材料がリサイクルされていたとしても生産にエネルギーを使うので、完璧とは言えない。いつか、中古でシューズが出回る代わりに、スニーカーを庭に植えるとそこから植物が生えるようになるかもしれない。そんな未来を信じている。

「クレイ」のストーリーを
日本のフットウエアファンに

WWD:ブランドのメイン市場は?

トゥイリエ:フランスやイギリス、ドイツを中心とする西ヨーロッパ。“ロサンゼルスらしさ”がヨーロッパやアジアで良い反応を生んでいると実感する。ロサンゼルスといえばサーフィンや西海岸の雰囲気をイメージする人が多いと思うが、実際はかなり複雑な都市だ。海岸を外れると、周りはより広い自然に囲まれていて、砂漠もある。セレブリティーも多く暮らし、多くの産業が生まれている。とてもユニークなエリアだ。

WWD:日本ではリーガルコーポレーションが販売しているが、日本市場は今どのフェーズにあると思う?

トゥイリエ:まだまだ初期段階だ。シンプルなもの作りというのは、実際すごく難しいことで、最高の品質と快適さを追求しなければ成立しない。だから、時間をかけて、そのストーリーを伝えていきたいと思っている。だからこそ「ベドウィン & ザ ハートブレイカーズ(BEDWIN & THE HEARTBREAKERS)」(以下、ベドウィン)とコラボレーションもした。

コラボを通して
多面的な魅力を創造

WWD:これまで「アニエスベー(AGNES B.)」などともコラボをしてきた。11月19日に発売した「ベドウィン」とのコラボレーションアイテムのこだわりは?

トゥイリエ:コラボレーションをしたアイテムは一生残るので、コラボ相手はブランドや調達方法、パッションなど、細かいところまで見て決定している。「ベドウィン」を立ち上げ、ディレクションする渡辺真史とはコラボについてだけでなく、スケートボードや旅行、ロサンゼルスについてなど、同じバックボーンを共有するから生まれるニッチな対話ができた。話すうちに、どのように「ベドウィン」のビジョンと、「クレイ」の環境問題への理念を融合できるかを考えていった。コラボスニーカーには「ベドウィン」のアパレル製作時の残布を使って、パッチワーク風にアレンジしている。

WWD:フランスではポップアップも開催している。日本での出店計画は?

トゥイリエ:フランスの百貨店ル・ボン・マルシェ(LE BON MARCHE)でのポップアップは売れ行きも良く、好調だ。ブランドのストーリーや背景をじっくりお客さまとコミュニケーションできる良い機会となった。来店して初めてブランドについて知った人、ロサンゼルスから観光で来ていたフランスで「クレイ」に出合った人など、さまざまな来店客とつながれた。日本でももっとブランドについて伝えていきたい。

問い合わせ先
リーガルコーポレーション
047-304-7261