アイウエアブランド「アイヴァン(EYEVAN)」が創業50周年を迎えた。 “着るメガネ”をコンセプトに、日本のカルチャーを詰め込んだデザインと世界に誇る精密なクラフトマンシップからなるプロダクトは日本国内のみならず、世界中でも愛されている。これまでの50年を祝福し、さらにこれからの50年への思いを込め、9月29日に都内のスタジオで1日限りのイベント「EYEVAN 50th Anniversary Runway 眼服 EYEWEAR」を開催した。同イベントを手掛けたのは、アートディレクター、クリエイティブ・ディレクターとして活躍するRak。総合演出と映像監督には、Rakが信頼を寄せるペリメトロン(PERIMETRON)のOSRINを、そしてショーの核となるパフォーマーには菅原小春を起用。旧約聖書「創世記」をテーマに、観客の期待をはるかに超える全く新しいランウエイショーを作り上げた。
誰も見たことのない
裸のランウエイ
ショーのテーマは、眼服。「ファッションショーは、モデルが服を全身にまとってランウエイを歩くものだが、眼に服を着せるだけの裸のランウエイを作りたかった」と、ブランドの大ファンであるRakが50周年を特別なものにしたいと一から企画し、テーマも自身が考えた。Rakが特別なランウエイのために選んだモチーフは、旧約聖書。禁断の果実を食べる罪を犯したアダムとイヴに、神によって罰として与えられた羞恥心と死が服をまとうことや死生観の概念を生んだという、誰もが知るストーリーを「人間が初めてアイウエアを“着る”瞬間」として落とし込んだ。アダムでありイヴである、人間の原点の存在を演じたのは菅原小春。4匹の蛇にそそのかされ、初めてメガネを手に取り装った瞬間、魅せることへの欲求に出合ってしまう。複雑ながらも、美しい約12分間の創造の物語だ。
誰もが息をのむ12分間
東京タワー真下のスターライズタワーで行われたショーには、100人のゲストが招かれた。ドレスコードはオールブラック。明かりのない会場に不規則なベース音だけが聞こえる中、ゲストたちは暗闇の一部となりながら息を潜めてショーの開始を待った。開始予定時間の20分ほどが過ぎたころ、さらなる闇の深まりとともにショーがスタート。何語とも知れぬ不思議な言葉やいたずらな笑い声などが流れると同時に、円形の深紅のステージが浮かび上がり、菅原小春を筆頭に5人のダンサーが登場。4人は蛇を、菅原小春は男女を超越する存在としてアダムとイヴとの両方を肉体的表現で魅せた。スタイリストのRemi TakenouchiとコスチュームデザイナーのKumiko Takedaによる限りなく裸体に近づけたスキニーな衣装は、彼らの美しく躍動する筋肉を際立たせ、その美しい動きの1つ1つに観客たちは許可された携帯電話での撮影さえも忘れて魅入っているのが印象的だった。
信頼でつながったクリエイターたち
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奇跡が重なりイメージがカタチになった1日に
もともとブランドの大ファンだったアートディレクターのRak。“眼服”というコンセプトから、世界観の創出に至るまで自身1人で行うなど並々ならぬ覚悟でプロジェクトに臨んだ。「ブランドに企画を持ち込んだのが1年前。実現できたら意味があると思ったアイデアを、OSRINをはじめとする尊敬するクリエイターたちとブランドが一緒になって現実のものにしてくれた。正直プレッシャーはものすごかったけれど、このチームだから絶対にできるという安心感があったからこそ完走できた思う。 “裸のランウエイ”を作りたいと思って始めたプロジェクト。舞台上で服をまとっているのは眼で、それこそがファッションなのだと伝えたかった。プロダクトを紹介するショーではなく、このようなランウエイの形にしたのは、このショーを創造することそのものがブランドのスタンスを体現するものにしようと思ったから。洋服のブランドにも、ツールとしてのメガネにもできないことを成し遂げられたという自信は大きい」。
このチームだからこそできたショー
King GnuやMr.Childrenなど数々のミュージックビデオやアートワークを手掛けるOSRIN。ディレクターとしてRakの理想とする世界観を具現化する重要な役割を担った。「どう仕上げようかRakの頭の中をのぞきながら、細部に至るまでとことん彼女のやりたいことを形にする作業に没頭した。Rakを筆頭に、スタッフとは本当に盛んに意見交換しながら、できたものを壊しては造るの繰り返しで完成まで持っていく作業。音楽にも美術にも、こんなにも修正を入れるのは初めてだったが、その初めての経験が皆の結束力をより強固なものにし、なおかつ自分たちのキャパシティーを広げる要因にもなったと思っている。だからこそ、世界中を探しても絶対にここでしか見られないショーが完成したと自信を持って言える。実際、納得のいく形になったのはショーの前日。そして今日の本番がもっとも素晴らしいものになり、本当にうれしい。終わった今もアドレナリンが出ている」。
初めての素晴らしい体験
国内外で活躍する世界的ダンサー/コレオグラファーの菅原小春。今回のショーでは圧巻のパフォーマンスを見せ、観客を未知の世界へと誘った。「アダムとイヴをテーマに踊ることを考えたとき、まず頭に浮かんだのは“解放”と“生死”。服や立場や名誉など、何もかも脱ぎ捨てた解放された姿で、一生答えの出ない人生を歩む姿をダンスで表現したかった。あえて美しく見せることはせず、即興性を感じさせるものに落とし込んだのはその考えからだ。本来ダンスは言葉の代わりに、体や目で観客に語りかけるもの。それなのに、このショーではメガネで視界や視線を奪われ踊らなくてはならず、それは本当に新しい、私自身経験のないものだった。踊っていると不思議とフィルターを通して目が合う瞬間を感じられたのがとても面白かった。小学生のころから知る4人の美しいダンサーと、私が演じるアダムとイヴ。そしてブランドを軸にして集まった仲間たちが愛情でつながった、素晴らしいショーになったと思っている」。
まだ、こんなにも感動できる自分がいた
ショーを彩る印象的な音楽を担当したMONJOEは、DATSやyahyelの中核としての活動をはじめ、数々のアーティストに楽曲を提供するトラックメーカー。旧知のOSRINからの誘いにより今回のプロジェクトに参加することとなった。「OSRINに見せられた楽曲の企画書には、求める音に対しての抽象的なキーワードが添えられているだけ。そのワードから音を作るという、新しく、刺激のある楽曲制作過程となった。制作期間は長く、これだけ時間をかけられるのなら絶対にいいものを作りたいと思ったし、OSRINの全く妥協しない姿勢に影響を受け、自分だけではできないものを作ることができたらいいなという期待もあった。職業作家としてではなく、いちクリエイターとして参加させてもらえたのがうれしかった。今日、ショーが始まってから終わるまでずっと鳥肌が立ちっぱなしで。こんなことは今までになかったこと。まだこんなにも感動できる心が自分にあったんだ、と驚いている」。
信頼する仲間がいてこそ実現できたショー
舞台デザインを担当した宮守由衣は、OSRINと数多くの現場をともにしてきた仲間の1人。だからこそ「最後はOSRINが形にしてくれる。信じているから大丈夫だと突き進んでこられた」と話す。「本番を終えて、ものすごく込み上げるものがあった。こんなに感動できることは普段の仕事ではないことなので、この気持ちの高まりにとても驚いている。制作期間が長く、他の仕事をしていてもどこかでこのショーのことを考えながら過ごしていた。通常の仕事とは違い、それぞれのセクションが同時に進行したので、ダンスや音楽の完成形を自分なりに想像しながら舞台デザインをまとめていった。最終的には舞台を建て込みしながら、全てが1つにまとまった感じ。デザイン画はもちろんあったけれど、実際に建て込みする中で自分の表現を最大限に形にすることができたと思う。無事に終わった安堵感と、終わってしまった寂しい気持ちでいっぱいだ」。
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