ファッション

シワに美を見出す「プラダ」に、ボロボロの加工を施した「エムエム6 メゾン マルジェラ」完全復活の2023年春夏ミラノコレ現地リポートVol.2

 ボン・ジョールノ!「WWDJAPAN」欧州通信員の藪野です。日中は日差しの下だと汗ばむくらい暑いのに、朝晩は上着が必要な寒暖差で、なかなか着る服に悩む今季のミラノ。今回は、「プラダ(PRADA)」や「マックスマーラ(MAX MARA)」「エムエム6 メゾン マルジェラ(MM6 MAISON MARGIELA)」が発表した2日目のハイライトをお届けします。

PRADA

 会場は、6月のメンズコレと同じように、紙で作った巨大な家のよう。ただ一つの大きな違いは、メンズでは紙が白だったのに対し、今回は真っ黒だということ。窓の部分には、デンマーク人映像監督のニコラス・ウィンディング・レフン(Nicolas Winding Refn)が手がけたショートフィルムの断片である、赤や青の光で照らされた家の中の様子が映されています。今回のセットにも使われた紙は、服作りにおいて切っても切り離せないもの。実際のアイテムにも紙のような質感や紙をベースにした素材が取り入れられています。

 今シーズン最大の特徴は、意図的に加えたシワ。ドレスやジャケットからニットまで、平面的な生地に立体感と独特の表情を加え、着る人によって変わる個性を引き出します。その背景には、ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)が昔、クローゼットから取り出した服についていたシワに美しさを見出したというストーリーがあるよう。そんな日常生活の痕跡だけでなく、余白の白い部分が残ったプリントや、裂けたかのように見えるスリット、手で摘んだり捻ったりしたようなデザイン、シワ加工が施されたレザーバッグなどにも、不完全な美の探求が見て取れます。

 そして、「プラダ」のスタイルに欠かせないコントラストも顕著です。前面をハサミで切ったようなコットンの白Tシャツに、いくつもコサージュをあしらい、同素材のタイトスカートを合わせてドレススタイルに仕上げたルックは、日常と非日常を対比。コットンポプリンのシャツをアレンジしたロングジョン(ボディースーツ)の上にネグリジェのようにゆったりとしたシアードレスをレイヤードしたり、アウターにネグリジェ風のデザインで重ねたりすることで、昼と夜を交錯させます。また、ミニマルなテーラードジャケットやコートには、背面の襟元にボリュームのあるリボンをあしらい装飾性を加えています。

 今季のウエアは、「プラダ」らしいグレーや、ブラウン、ホワイト、ブラック、パステルなど落ち着いた色合いが中心。そこにアクセントを加えるポップなカラーのバッグやシューズも目を引きます。

MAX MARA

 海や水辺を想起させるコレクションが多い春夏のミラノですが、「マックスマーラ」が目を向けたのは、イタリアからフランスまで続く地中海沿岸のリヴィエラ。そこに関係の深い2人の女性から着想を得ました。一人は、フランス人写真家ジャック・アンリ・ラルティーグ(Jacques-Henri Lartigue)のミューズであり恋人でもあったルネ・ペルル(Renee Perle)。ホルターネックのタンクトップやワイドなセーラーパンツ、つばの大きな麦わら帽、ゴデットを加えてフレアラインを描くスカートなど、彼女が着こなしたタイムレスでシックなリヴィエラ・スタイルが、今シーズンのデザインの軸になっています。そしてもう一人は、リゾート地として知られるフランスのロクブリュヌ・カップ・マルタンに、1929年に別荘「E-1027」を建てたアイルランド人建築家のアイリーン・グレイ(Eileen Gray)。別荘の内装や家具に取り入れられた曲線からヒントを得たしなやかさは、バイアスカットでヘムに動きを出したフルレングスドレスやスカートに落とし込まれています。

 ミラノ2日目にして、次の春夏に向けて気になっているのは、リネン。「マックスマーラ」では、キー素材の一つとして加工や染色をしていないリネンを取り入れ、ボクシーなテーラードジャケットや半袖のトレンチコートから、マキシスカート、ワイドパンツ、ショーツまでを提案しています。

MM6 MAISON MARGIELA

 会場は、コンサートなどが行われるホール。中に入ると、客席にはオーケストラ用の譜面台などが置かれ、舞台に客席が用意されています。今季のショーは、ミラノ・シンフォニカ管弦楽団が奏でる中で、バレエの通し稽古を見るという演出。やっぱり生演奏は、いいですね。コレクションは、キャミソールにレオタード、タンクトップ、セカンドスキンのトップス、リブニットのボレロやアームカバーなど、バレエの稽古着をほうふつとさせるアイテムが満載です。そこに合わせるのは、レザーのアウターと、擦り切れたり穴が空いたりといったダメージ加工で仕上げたジーンズやTシャツ。そんな激しい加工は、履き古したバレエシューズから着想したものだそう。足元にも男女問わずスクエアトーのバレエシューズを合わせ、ウィメンズには「サロモン(SALOMON)」とのコラボ第2弾となるセカンドスキンのようなサイハイブーツも登場しました。

MOSCHINO

 キーワードは、最近の物価上昇でよく耳にする「インフレーション(Inflation)」。英語では「膨張」や「膨らむこと」という意味もある言葉に、ジェレミー・スコット(Jeremy Scott)らしいユーモアたっぷりのひねりを効かせて解釈しました。ランウエイに登場したのは、空気で膨らませる浮き輪やフロート、救命ボートやライフジャケットの要素をドッキングしたクラシックなスーツやイブニングドレス。さまざまな問題を抱える社会の中でもハッピーであるために必要な楽観主義が反映された「モスキーノ(MOSCHINO)」らしいコレクションでした。

BLUMARINE

 「ブルマリン(BLUMARINE)」は、セクシーなマーメイドをイメージ。得意とするY2Kスタイルに、十字架や紋章の様なロゴでゴシックの要素を加えました。中心となるのは、アンティークゴールドの丸いスタッズがあしらわれたウォッシュドデニムのアイテムと、流れるようなラッフルやドレープを取り入れたジャージーやビスコースのドレス。パンツもスカートもヘムラインがフレアに広がり、ドラマチックです。

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