ファッション

ZOZOがユナイテッドアローズと「ゾゾモ」で目指す、新しいブランドとの共生のカタチ

 ZOZOは2021年11月に「ゾゾタウン」に出店するファッションブランドのOMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの統合)プラットフォームである「ゾゾモ(ZOZOMO)」をスタートした。これにより、「ゾゾタウン」を訪れたユーザーは、サイト上でブランドの実店舗にある在庫有無の確認や、サイト上でそのまま取り置きができるようになった。インターネット上で1500以上のショップ・8500以上のブランドを取り扱い、年間購入者数が1000万人を超える「ゾゾタウン」で、リアル店舗へ誘導する道筋を開いた意義は大きい。開始からもうすぐ1年をむかえる「ゾゾモ」は、ファッションブランドにどんな変化をもたらしているのか。また、「ゾゾタウン」とファッションブランド、両者はOMOをどう進化させていくのか。このプロジェクトをリードするZOZOの片野浩三ブランドソリューション本部 ブランドソリューション推進部 ディレクションブロック ブロック長(プロジェクトマネージャー)と、ZOZOと長く深い取引関係にあるユナイテッドアローズの横田健一郎マーケティング本部 デジタルマーケティング部 部長に語ってもらった。

「ゾゾモ」にも「ゾゾタウン」で
培ったUI/UXのノウハウを盛り込む

WWDJAPAN(以下、WWD):なぜ「ゾゾモ」を? 

片野浩三ZOZO ブランドソリューション本部 ブランドソリューション推進部 ディレクションブロック ブロック長(以下、片野):直接的なきっかけはコロナ禍です。外出が抑制されてファッション業界が影響を受ける中で、ファッション業界全体をもっと盛り上げることができないかと社内で議論していました。

WWD:EC単体で考えるのではなく、業界全体の活性化が必要だと考えた、と。ユナイテッドアローズは多くのリアル店舗を全国に展開していた。

横田健一郎ユナイテッドアローズ マーケティング本部 デジタルマーケティング部 部長(以下、横田):はい。EC単体で見れば伸びていたとしても、なかなか店頭に客足が戻らないこの2年半は当社のようにリアル店舗を多く抱える企業やブランドは苦しかった。

片野:こうした中で生まれた一つの形が、ファッションブランドの実店舗の売上を支援するOMOプラットフォーム「ゾゾモ」です。「ゾゾタウン」上でブランドの実店舗の在庫確認と取り置きができるサービスで、「ゾゾタウン」の膨大なアクセス数を生かし、実店舗に「ゾゾタウン」ユーザーを送客するというものです。昨年11月に700店舗の在庫表示をスタートし、2022年3月末時点で開始時の2倍となる1400店舗以上にまで増えています。多くのブランドに採用いただき、安心しています。

「ゾゾモ」が新規顧客の開拓に

WWD:導入のモチベーションは? 

横田:まず言えるのは、客足が思うように戻らない中で、明確に目的を持ったお客さまを店舗に集客できる点です。もともと店頭で、お客さまがスマホで「ゾゾタウン」のサイトを見せながら「このアイテムはありますか?」と聞かれることは少なくなかった。スタート時から常に一定数の注文があり、購入率も高い。それに数字以上にインパクトがあったのが、新規顧客が多かったこと。つまり、「ゾゾモ」が新規顧客の開拓につながっているということです。これは大きい。

WWD:ユナイテッドアローズとZOZOは、様々な点で深い取り組みを行ってきた企業だが、それでも店頭に関連したサービスの本格導入は初めて。組織の壁や現場の戸惑いのようなものはなかったのか? 

横田:導入のハードルは低かったですね(笑)。その辺は店頭の販売スタッフのための専用ツール「ファーンズ(FAANS)」のアプリの使いやすさなど、全体のサービス設計がよく練られていると感じました。

片野:サービスの設計段階で、サービスを運用する店舗でも使いやすい仕組みにするということには、かなり気を付けました。ショップスタッフの方々が店舗での接客の隙間時間にスムーズな在庫取り置き対応ができるよう、ユナイテッドアローズさんを始め多くのブランドさまのご意見もいただきながら「ファーンズ」は開発しました。その点は、「ゾゾタウン」で培ってきたUI/UXの知見をフルに生かしています。

潜在的な顧客を掘り起こす

WWD:成果は? 

横田:当社の場合、商品力や店頭での接客力は相当に磨き上げてきたと自負しています。ただ、コロナ禍という特殊要因があったにせよ、インターネット上の膨大なトラフィックを店頭に引き込む導線を作る、という点は大きな課題でした。その意味では、先ほど話した「ゾゾモ」を通じた購買意欲の高い新規顧客の開拓は、大きな成果でした。

片野:ユナイテッドアローズさんの店頭での販売力、接客力は本当に素晴らしいです。実際、取り置き商品の店舗購入率は非常に高いです。在庫切れなどの理由で「ゾゾタウン」上での購買につながらなかった「ゾゾタウン」ユーザーを、「ゾゾモ」を通じてブランドさまの実店舗に送客し、実際に店頭の接客を受けたり、店舗の雰囲気などを見てもらうことによって、お客さまの購買行動につなげられる。つまり、これまで潜在的に存在していた購買行動を掘り起こし、新たな需要を喚起している。「ゾゾモ」はファッション業界全体の活性化を目的に始めたプロジェクトですから、この結果を得られたことは大きいです。

「ゾゾタウン」とブランドの
今後は?

WWD:今後は? 

横田:「ゾゾモ」経由のお客さまに新規が多いということはお話しましたが、実際にはセット販売にもつながっている。ブランド側としては、もっともっと「ゾゾモ」の参加店舗やブランドが増えれば、サービス自体の認知度も上がり、お客さま側の利用体験も増える。お客さまも使えば使うほど慣れていき、利用頻度も上がるので、その分だけブランドの店舗側の来店増にもつながる。それにこういった新しいサービスはまずは一度使っていただくことが大事かな、とも思っています。なのでZOZOさんのより積極的なプロモーションにも期待しています(笑)。

片野:ありがとうございます!そういったお声をいただければ、予算の相談もしやすいです(笑)。もちろん私たちも「ゾゾモ」に参加していただけるブランド、店舗をもっと増やしていきたいと思っていますし、「ゾゾモ」の進化やOMOの新しいあり方も常に考えています。

横田:それに「ゾゾタウン」に集まるファッション好きのお客さまは当社のお客さまと比べて平均年齢が若いので、「ゾゾモ」はそのようなお客さまと店舗やショップスタッフとの新たな出会いの架け橋になると考えています。他にもそういったOMOや仕掛けはまだまだやれることが多そうですよね。

片野:仰るとおりだと思います。「ゾゾモ」をスタートしたことで、ブランド・企業との接点を一気に店舗まで広げられ、私たちの視野や考え方もかなり広げていただいています。「ゾゾモ」はECモールのOMOで、ブランドが自社で取り組むOMOとはお客さまの層が異なります。ライトなファッション好きがたくさん集まる「ゾゾタウン」と、コアなファッション好きがたくさん集まる自社ECをうまく組み合わせていただくことで、お客さまにとってより便利な購買体験を提供していけたらと考えています。

PHOTO:YUTA KATO
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「ゾゾモ」担当窓口