ファッション

アダストリアがイズミと組んでGMSの婦人服平場改革 新ブランド「シュカ」をプロデュース

 アダストリアがGMS(量販店)の衣料品売り場のリブランディングに乗り出す。中国、四国、九州地区に大型商業施設、ゆめタウンを展開するイズミとの協業により平場向けの新ブランド「シュカ(SHUCA)」を立ち上げ、9月15日からゆめタウン広島、同じく広島のゆめタウン安古市で発売開始した。22日にはゆめタウンの44店舗に拡大するほか、イズミの自社ECサイトでも今後販売していく。アダストリアにとっても、GMSとの協業ブランド開発は初めての試みとなる。

 今回の取り組みは、アダストリアが得意とするモノ作りとMD力、空間プロデュース力を生かし、コンセプト設定から商品編集、空間演出までトータルでコンサルティングするもの。イズミがこれまで直営の衣料品売り場で取り込めていなかった30~40代女性に向けて新ブランドを開発し、衣料品平場全体の改革につなげていく。

 同プロジェクトを担うのは、アダストリアのBtoB事業専任の営業組織である法人営業部。2021年9月にBtoBプロデュースの「アダストリア・ライフスタイル・クリエイション」を本格始動している。同年10月にイズミの直営ライフスタイル本部と方向性を確認した後、社内横断でイズミプロジェクトを立ち上げ、1年かがりでオリジナルブランド開発と直営売り場改革に取り組んできた。

 今回の狙いについて、アダストリアの木村治社長はこう語る。「既に何社かの取引先から同様の話は届いている。ゆめタウンには当社もテナントとして出店しており、ブランドの中で売り上げ上位の店舗もあるなど、イズミとのつながりは長く深い。GMSの衣料品不振は聞いていたが、そうは言ってもこの市場の規模は結構大きい。これまでのような仕入れ商品の集積ではお客さまはついてこないので、オリジナルブランドを作った。商品回転を速めることで売り場の鮮度が上がり、今までにない平場が作れる」

 一方、ゆめタウンの婦人服平場をミレニアル世代向けにもっとおしゃれにしたいという思いを抱いていたイズミは、GMS特有の問題に直面していた。「コロナ禍で食品が好調な反面、衣料品部隊は高齢者の来店が激減し、一気に売り上げが落ちた。食品を買っている30〜40代のお客さま向けの商材も、これまでテナント任せになっていた。MDを改革しない限り、次のステップはないと考え、アダストリアの力を借りることにした」と、イズミのライフスタイル本部・沼本真輔本部長は明かす。

 複数メーカーの仕入れ商品を集積する衣料品平場では、トータルコーディネート提案が難しい。「衣料品業界は(アイテムごとに仕入れ先が異なる)タテ割りの世界なので、横串を通した提案がなかなかできない」と、イズミのライフスタイル本部・横山聡部長。「MDに一貫性がないとスタイリングが上下でバラバラになるし、お客さまの方を向いていない偏った提案になってしまいがち。そこで一番の課題であるMDの改革に着手した。われわれの30年間のスピードがいかに遅かったかがコロナ禍で身に染みて分かったので、考え方を変える」。こうしたイズミの要望に応えられる企業として、横串を通したアイテム提案が可能なアダストリアに白羽の矢が立った。

商品だけでなく、什器や見せ方も監修

 「シュカ」では、何かと忙しいミレニアル世代の女性がシンプルに着回しできる普段着のコーディネートを提案する。「1枚で決まるシンプルかつ“サマミエ”するシルエット」や「トップスとボトムスで1万円前後という値頃な価格設定」「オンオフ着こなせて適度にトレンドを取り入れたデザイン」が商品の特徴。立ち上がりはキルティングベスト(税込5390円)、カーディガン(3630円)、テーパードパンツ(3190円)など約40アイテムをそろえ、客の反応や売れゆきを見ながらMDを修正していく。

 モデル店舗となるゆめタウン広島では、婦人服平場の半分近くにあたる約132平方メートルを新ブランド売り場にリニューアルした。空間プロデュースや什器環境など細部にわたるまでアダストリアが全面的に監修。オリジナル什器や床、柱まわりなど、商品がよく見えるように工夫するのはもちろん、売り場を回遊できる雰囲気作りを重視した。

 新ブランドの初年度売り上げ目標は非公表だが、既存の仕入れ商品を6割まで絞り込みながら、売り上げは婦人服平場全体でリニューアル前の2割増しを見込む。「この売り場を今後どれだけ進化させられるか、どれだけ付加価値を作れるかが一番の課題。婦人服だけでなく、新しいカテゴリーにも挑戦していきたい」と、イズミの沼本本部長。

 GMSの売り場改革に意欲を燃やすアダストリアの木村社長も「GMSの直営売り場とテナントの一番の違いは、人をつけてしっかり接客をするかしないかということ。両者が協業すれば、ハイブリッド型の販売方法も可能になるはず。イズミの本気度が改革のスピードにつながると思う。新ブランドにとどまらず、いずれは平場全体をプロデュースしていきたい」と話す。

 広島は、アダストリアの主力ブランド「ニコアンド(NIKO AND…)」がスタートした地であり、ここから成長が始まったという思い入れのある地でもある。イズミとの協業を成功させれば、アダストリアにとってBtoB事業を拡大させる好機となる。イズミにとっては、衣料品平場の改革という長年抱えてきた課題の解決につながる。