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熱帯魚クマノミの海を守れ 沖縄のホテルがめざす観光と環境保護の両立

 沖縄県恩納村(おんなそん)にある東急不動産ホールディングス傘下のリゾートホテル「ハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄」が、熱帯魚のカクレクマノミの育成・保全を目的としたプロジェクトに力を入れている。2021年6月に開始した「瀬良垣島・クマノミ育成プロジェクト」の一環として、12月にはシュノーケリングやダイビング体験を通してSDGsの目標のひとつ「海の豊かさを守ろう」を学ぶプログラムを開始。環境保全への関心を高め、売り上げの一部をクマノミ育成に還元することで持続可能な観光の仕組みをめざしている。

コロナ禍を機に「元気になるホテル」プロジェクト発足

 ダイビングで有名な青の洞窟や人気観光地の万座毛(まんざもう)がある沖縄屈指のビーチリゾート・恩納村。恵まれた自然環境を持続的にしていくために、村は18年に「サンゴの村宣言」を行ない、翌年には国から「SDGs未来都市」に選定されている。その恩納村で、沖縄本島と海中道路でつながり、サンゴ礁が広がる美しい海に囲まれた小さな島・瀬良垣島に建つのがハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄だ。

 開業は「サンゴの村宣言」と同じ18年。「元気になるホテル」をコンセプトに、ホテルの滞在を通して、体と心をフルチャージする体験を提供してきた。コロナ禍でホテル運営が厳しくなるなか、スタッフの声から始まったのが、SDGsの達成に向けての取り組みだ。21年1月に「元気になるホテル」推進プロジェクトチームを発足。役職や部署の垣根を越えて自由にアイデアを出し合い、さまざまな企画を進めている。

 例えば、ホテル近くのビーチの清掃などスタッフ参加型の活動を行なうほか、スパで使用したハーブボールのハーブを肥料としてハーブ園で使用し、育てたハーブを再びスパでトリートメント前の足浴に使用している。またプラスチックゴミの削減をめざし、ホテルオリジナルのステンレスボトルを販売。パイナップル葉繊維で作られた生分解性ストローやカクテル用竹製ピック、木製フォークとスプーンもレストランなどに導入している。

 SDGsに取り組みについて木嶋明子セールス&マーケティング部長は語る。「このホテルは美しい海を守らないかぎりビジネスが成り立たないので、SDGsを常に身近に感じている。このプロジェクトでユニークな点は、環境保全をしつつ、観光資源として生かすことで両立させるコンテンツを開発したこと。推進にあたってはマネジメントの理解を得たうえで全社的な理解を得ることが大切。小さなアイデアを実現し、成功の喜びを少しずつ積み重ねることで若いスタッフを中心にモチベーションアップにつながっている」

なぜホテルがクマノミの育成・保全に取り組むのか

 「元気なホテル」推進プロジェクトの一環として21年6月に開始したのが、「瀬良垣島・クマノミ育成プロジェクト」だ。映画「ファインディング・ニモ」のキャラクターとしてもおなじみのカクレクマノミは、環境変化や販売目的の漁獲などの影響で、近年世界的に個体数が減少しているといわれている。とくに沖縄本島では岸に近い礁地に生息するクマノミが少ないという。

 そこで、ハイアット近くに研究施設を持つ沖縄科学技術大学院大学(OIST)とパートナーシップを組み、海洋気候変動の研究を行うティモシー・ラバシ教授の監修のもと、育成と研究活動に着手した。OISTは科学誌「ネイチャー」に優れた論文を発表し、世界第9位にランクインする世界レベルの研究機関。施設内の水槽でクマノミを飼育し、海水温や二酸化炭素濃度などの環境変化に対する適応性と順応性などを研究してきた。11月末には、生態系を乱さないようにそのクマノミをホテル周辺の海に放流。保護観察しながら生育状況を確認したうえで、クマノミ鑑賞とレクチャーを組み合わせたプログラムの販売をスタートした。

 OISTの河合絵里奈さんによると「放流したクマノミが繁殖に結びつくことが一番の効果なので、そのためにはどういう条件が良好なのかを調査し、追加の放流を検討している。放流したクマノミのペアが住処であるイソギンチャクに住み着いてもらうことが重要」という。ちなみに、クマノミは相性が悪いとケンカをするため、ケンカに勝った強い個体をペアリングして放流するそう。

マリンアクティビティ「クマノミと瀬良垣の海を学ぼう!」を体験

 実際に、クマノミの生育状況を鑑賞し、瀬良垣の海の美しさを体感するために、筆者もマリンアクティビティに参加した。まずは、プロジェクトの背景やクマノミの生態、SDGsの目標のひとつである「海の豊かさを守ろう」を学ぶ約15分のレクチャーからスタート。まったく知識がなくても、子供でも分かりやすく説明してくれるので安心だ。

 インストラクターの説明によると、1回の出産で産まれるクマノミの数は500~800匹。生存率はなんと0.000416%で4回ほど出産しても1匹残るか残らないかという厳しい世界らしい。この日はあいにくの雨天のため短時間のツアーだったが、放流後のクマノミを探検するために、数十年ぶりにシュノーケリングに挑戦した。

 クマノミは、ホテルに程近い内海の比較的浅いエリアにも生息している。生息ポイントまではインストラクターが誘導してくれ、クマノミだけでなく、他の海洋生物の見分け方や生態なども教えてくれる。筆者が発見したのは、まだ生まれたばかりの小さなクマノミだったが、手の届くところで元気に泳いでいる姿を見られるのはなんとも感動的だ。

 実は翌日には晴天になり、抜群の透明度を誇る瀬良垣の海はさらに碧さを増していた。翌日シュノーケリングツアーに参加した人は「すごく楽しかった。なめこや大きな天然のクマノミにも出会えるのでぜひおすすめ」と話していた。

 クマノミ探検ツアーは約75分で、6歳から参加可能。料金はシュノーケリングが大人8080円~、子供5594円~。体験ダイビングが大人1万3673円~、子供9944円~。

 同ホテルでは、畑の赤土が大雨などで海に流出してサンゴなどに悪影響を与える赤土問題にも取り組んでいる。恩納村の農家が畑周辺に緑肥植物を植え、ミツバチを飼育することで持続的に赤土流出を防ぐ「ハニー&コーラル・プロジェクト」に参加。村内で採れたハチミツはスイーツやドリンクに使い、レストランやショップで提供している。

 ハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄のこうした取り組みは、観光地本来の姿を持続的に保つサスティナブルツーリズムの好例として今後も注目していきたい。

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