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J.フロントがCO2削減へ本腰 取引先200社に排出量数値化を呼びかけ

 J.フロント リテイリングは20日、取引先を対象に「脱炭素社会に向けた取り組みに関する説明会」を東京・大手町で開催した。傘下の大丸松坂屋百貨店の取引先約200社の担当者が出席し、同社が中長期的に取り組むCO2削減のための方針やアクション、取引先に求めることなどを示した。

 政府は昨年4月、2050年のカーボンニュートラル(実質排出ゼロ)に向け、30年に国内全体でCO2排出を46%削減(2013年度比)する新目標を掲げた。これを受け同社も、まず主力子会社の大丸松坂屋百貨店で数値目標を策定。店舗照明のLED化、社用車を電気自動車に切り替えるなどにより、店舗や社屋からの排出量を60%抑える。このための取り組みとして、19年にリニューアルオープンした大丸心斎橋店本館は全照明をLED化しており、23年までに松坂屋名古屋店、松坂屋静岡店に再生エネルギー電力を導入する。

 ただし、「われわれ大丸松坂屋百貨店だけでのCO2排出量は、サプライチェーン全体でみると5%に過ぎない」と澤田太郎・大丸松坂屋百貨店社長。残りの95%の大部分が、取引先の原料調達や商品製造によるものだと試算。これらサプライチェーンにおける自社以外によるCO2排出は、30年までに40%削減(13年比)を掲げる。

 大丸松坂屋百貨店はCO2の年間排出量を、簡易測定方式(衣料品や化粧品など商品カテゴリーごと、環境省が定めた1トン当たりの製造で発生するCO2排出量の単位に、実際の調達量を掛けて算出する方法)により試算し発表している。今後は取引先からヒアリングしたCO2排出量を合計して算出する方式へ段階的に切り替える。この方式であれば排出量をより正確に算出できることに加え、「廃棄物削減や物流効率化など、お取引先さまの削減努力が数値にダイレクトに反映され、モチベーションにもつながる」とする。

 同社は21年秋には取引先500社を対象にCO2削減に関する意識・活動調査のためのアンケートを実施したが、回答があったのは約3割。そのうち、事業活動で発生するCO2排出量を「算出している」と答えた企業は1割に満たないという結果だった(未回答も「算出していない」に含む)。澤田社長は「CO2削減は当社だけではどうにもならず、取引先の皆さまのご協力が不可欠。まずはCO2の排出量を可視化する仕組み作りから始めていただき、その上でCO2を減らすためにはどういった取り組みができるか、一緒に考えていきたい」と訴えた。

 J.フロントと取引先との質疑応答は以下の通り。

Q.ただでさえ環境配慮型の商品開発はコスト高になる。百貨店販売がポイントや値引きに依存していてば、利益が残らなくなってしまう。この構造は変えられるのか。 (婦人靴メーカー)

A.環境配慮型の商品の価格も上げていただくのも、解決策の一つになる。ただ、店頭だけでその価値を伝えるには限界がある。例えば、商品開発に深く携わった方が弊社の動画コンテンツに登場し、商品のバックグラウンドまでお客さまに伝えることも有効だろう。こういった、価格に対する価値をご理解いただく取り組みにも、手を携えて取り組んでいきたい。やみくもな値引きやポイントアップは、お客さまへの訴求効果が薄れてきている。アプリ会員を対象とした、趣味趣向でターゲティングした効率的なクーポン運用ならば、全体の値引き額は削減しつつ集客効果も望めるはずだ。

Q.大丸松坂屋は定借運営の拡大を進めているが、われわれにとっては初期の店舗投資が重い。こういった部分も考慮していただけるのか。(婦人靴メーカー)

A.定借の拡大方針は変わらない。だが何が何でも定借、というわけではなく、お取引先さまとのていねいな対話を通じて最適な取引形態を模索していく。

Q.小さな企業は、CO2排出量を可視化する仕組み作りにコストを投下する余裕がない場合もある。今後は排出量の可視化が取引の必要条件となっていくのか。(婦人バッグメーカー)

A.(CO2排出量の)可視化ができないから取り引きをすぐにやめるということはない。ただ皆さまにも前進していただきたい。われわれもノウハウで先行している部分はあり、手助けできればと考えている。

Q.商品包装の再生紙化を進めているが、お客さまから「ハレの場ではこころもとない」というお声をいただく。大丸松坂屋の店舗では一部のお客さまからクレームもあると聞く。何かいい手立てはないか。(大手ジュエリーメーカー)

A.百貨店側からも、お客さまへの働きかけを強める。お客さまの目に触れるところに、環境配慮への取り組みに対するご理解が深まるような仕掛けを散りばめ、バックアップしていきたい。

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