ファッション

メタバースの大本命「ZEPETO」、2.9億人のアバターが新時代のファッションを生み出す

 スマホを通じて仮想空間上でアバターが動く、いわゆるメタバースのまさに象徴的な存在が「ゼペット(ZEPETO)」だ。Z世代を中心に世界中に2億9000万ユーザーを抱え、しかもその数はどんどん増えている。すでに同アプリ内では350万以上ものアイテムがリリースされ、アバターたちが着用している。韓国ネイバーグループ傘下の「ゼペット」は、何を変えるのか。スノー・ジャパン(SNOW JAPAN)の日本事業統括の崔 智安(チェ・ジアン)氏に聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):「ゼペット」の成り立ちは?

崔智安(以下、崔):もともとはSNSアプリ「スノー(SNOW)」の派生として生まれた。だが今では、非常に多彩な機能があり、実は一言で定義するのは難しい。顔認識機能を生かし、自撮りをベースに自分でアバターを作成して動くアニメーションも作って、それらを普通のSNSのように投稿もできるし、ゲームをしたり、自分で街や空間を作って他人を招き、その中で遊んだり、おしゃべりすることもできる。しかし、なんと言っても最大の特徴は、いつでもどこでも、アバターを通じてコミュニケーションを取れることだ。ユーザーは世界中に2億9000万人を抱えており、彼ら/彼女らはすでに、髪型、メイク、服装、体型を自由に選び、人によってはファッションと同じように、それらを毎日変えたアバターでコミュニケーションを取っているのだ。

WWD:ユーザーの属性は?

崔:最大のユーザーを抱える中国を筆頭に、日本、米国、韓国、フランス、イントネシア、タイ、メキシコに広がっている。多いのはアジアだが、フランスや米国などでも急速に広がっている。共通しているのはユーザーの7割以上が13〜24歳の女性、つまりはZ世代であることだ。重要なポイントは、Z世代の多くが、「ゼペット」というメタバース上で、アバターを使ってコミュニケーションを取ることが当たり前になりつつあり、コミュニケーションの日常的な手段の一つに「メタバースとアバター」が登場しているのだ。これは注目すべき大きな変化だ。

WWD:これまで「グッチ(GUCCI)」「クリスチャン ルブタン(CHRISTIAN LOUBOUTIN)」といった高級ブランドから、「ナイキ」「アディダス」などのメガブランド、ディズニー、サンリオといった世界的なキャラクターホルダー、ブラックピンクなどの超大物アーティストまで、幅広い企業やブランドとコラボレーションしている。なぜブランドやIPホルダーは「ゼペット」とコラボするのか?

崔:最大の魅力は、「ゼペット」が世界中の多くのZ世代をユーザーとして抱えているからだろう。Z世代、いわゆるデジタルネイティブ世代に対して、大手といえども、多くの企業は課題を抱えていた。つまりデジタルネイティブのZ世代にどうアプローチすべきか、と。日本ではあまりそう感じないかもしれないが、世界的にはZ世代がマーケティングのトレンドや発信力でオピニオンリーダー的なパワーを持ち始めている。Z世代との接点をどう作るのか?あるいはブランド体験をどう提供するのか。そこに「ゼペット」がぴたりとハマった。

WWD:「ゼペット」の場合、「グッチ」のようなブランドであってもアイテムの価格はそう高くない。ブランディングを重視する高級ブランドにとっては珍しいことだ。その理由は?

崔:アバターの服に数万円を払うか、という考え方もあるし、そもそも「ゼペット」はユーザーの体験ということを特に重視している。価格をある程度標準化することで、より多くのユーザーがいろいろなブランドやファッションを体験できる。多くの企業やブランドにとっても、先ほども言ったように「ゼペット」を新しい接点として捉えており、「ゼペット」のこうした考え方に理解を示している。

WWD:メタバースという点で見た場合の「ゼペット」の強みは?

崔:「ゼペット」は仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、ゲームなど、メタバースに必要とされるあらゆる要素を含んでいる。特筆すべきは、これまでのSNSは、主要な機能が2次元のフィード(投稿)に過ぎなかったが、「ゼペット」ではアバターを軸にした空間になっていること。これは非常に大きなゲームチェンジだ。

WWD:そうしたメタバース空間で、ファッションはどのような意味と役割を持つのか?

崔:まさに最も重要な要素だと言っても過言ではない。アバターとは、髪型、メイク、服装、体型の組み合わせだ。つまり、ファッションがほぼ全てと言っていい。「ゼペット」の中心ユーザーであるZ世代は、自己表現を特に重視する年代であり、しかも我々の分析ではファッションを軸にした、例えば「クール」「おしゃれ」のような感覚は、グローバルで共通のコモンセンス(共感覚)だ。ただ、ファッション、あるいはファッションブランドに関して再定義する必要はあるかもしれない。「ゼペット」では想像しえるすべての世界を作り出せるからだ。

WWD:というと?

崔:「ゼペット」ではアイデアさえあれば簡単に表現できるため、誰もが新しいクリエイターになれる可能性を秘めている。誰もがブランドを作ったり、アイテムを生み出すことができるのだ。すでに200万人以上が、新たな「ファッション」アイテムを生み出している。日々、「ゼペット」上で新しいアイデアと表現が生まれており、中には「ゼペット」内独自のトレンドも生まれている。これまでのリアルの世界では、あり得なかった現象だ。その一方で、既存の“プロ”のファッションブランドはまだ本気を出しているとは言い難い。私の見るところ、これからのファッションは服をデザインするだけでなく、体験まで含めてデザインする必要がある。ファッションショーだけを例に取っても、リアルの世界ではこれだけの奥深い表現や演出をしているにもかかわらず、「ゼペット」を含め、デジタルの世界でそれだけの表現に取り組んでいるブランドは決して多くはない。

WWD:今後「ゼペット」、あるいはメタバースで既存のファッションブランドが成功する秘訣は?

崔:何よりもまずは、挑戦することだろう。日本企業は実感としてコンサバティブだと感じることは少なくないし、新しいこと、理解できないことに対するハードルが高い。メタバースでは世界で通じるファッション感覚が重要だと話したが、加えてシビアな話だが、ある程度の知名度も必要だ。この2つに適応する日本のブランドは数多くあると思うが、個人的には「ビームス」のようなセレクトショップや、Z世代の顧客を多数抱えるファストファッションブランドには注目している。特に日本のセレクトショップの場合、ファッション感覚にグローバルで強い共感を呼ぶ可能性を感じている。日本発のコンテンツという意味では、ファッションではないが「鬼滅の刃」「呪術廻戦」のようなアジアで高い知名度を持つコンテンツはとても可能性がある。

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