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勢いに乗ったきっかけはSNS!? 2020年「LVMHプライズ」のセミファイナリストたちが語る

 2月14日、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)が開催する2020年度「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE以下、LVMHプライズ)」のセミファイナリスト20組が発表された。

 今回のセミファイナリストは、「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」「チョポヴァ ロウェナ(CHOPOVA LOWENA)」「レイブ レビュー(RAVE REVIEW)」「ピーター ドゥ(PETER DO)」「ヘルムシュテット(HELMSTEDT)」など、インスタグラムをはじめとしたSNS上ですでに高い知名度を持つデザイナーが多いことが特徴だ。

TOMO KOIZUMI

 セミファイナリストの中でSNSの影響を最も実感しているデザイナーを挙げるとしたら、それは「トモ コイズミ」を手掛ける小泉智貴ではないだろうか。2018年10月。伊「ヴォーグ(VOGUE)」のサラ・マイノ(Sara Maino)が、ラッフルを幾重にも重ねたカラフルでボリュームのある小泉のデザインを自身のインスタグラムに投稿したことがきっかけで事態は急展開を迎えた。

 小泉のデザインはジャイルズ・ディーコン(Giles Deacon)やグウェンドリン・クリスティー(Gwendoline Christie)を通じて、人気スタイリストのケイティ・グランド(Katie Grand)の知るところとなり、ケイティが小泉にメッセージを送ってから1カ月も経たずして18年2月にはニューヨークの「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」のショップで小泉にとって初のランウエイショーが実現した。ショーにはベラ・ハディッド(Bella Hadid)、カレン・エルソン(Karen Elson)、ローワン・ブランチャード(Rowan Blanchard)ら有名モデルが参加し、「トモ コイズミ」のショーは一夜にして世界中のSNSを駆け巡った。

 コスチュームデザインのみを手掛ける小泉は、これまでに歌手のマイリー・サイラス(Miley Cyrus)や英女優のソフィー・ターナー(Sophie Turner)の衣装を手掛け、ニューヨークのメトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)で開催された「キャンプ:ファッションについてのノート(Camp: Notes on Fashion)」展でも2着が展示された。

 小泉は、LVMHプライズを受賞した場合はコマーシャル・コレクションの立ち上げを計画しているという。

CHOPOVA LOWENA

 インフルエンサーのスージー・ロウ(Susie Lau)も愛用している「チョポヴァ ロウェナ」は、ビンテージのエプロン、ピローケース、タペストリーやテーブルクロスといったブルガリア産のリサイクルのフォークロア生地を使ったキルトスカートなどを展開している。ブランドとしては今季で3シーズン目を迎えるが、すでにセレクトショップのマッチズファッション(MATCHESFASHION)やドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)、ブラウンズ(BROWNS)など30カ所で販売されている。

 同ブランドのデザイナーのエマ・チョポヴ(Emma Chopova)とローラ・ロウェナ(Laura Lowena)は共にセント・マーチン美術大学(Central Saint Martins)を卒業。二人はファッションショーではなく、フォトグラファーのシャーロット・ウェールズ(Charlotte Wales)とともにブックを制作しており、チョポヴは「私たちは何か違うことがしたい。古くて退屈な方法より新しいアプローチ法に興味があるの」とコメントした。

 彼女たちのインフルエンサーとの関係性もそこから生まれた。「ソーシャルメディアを活用するというよりは、人に会って商品をプレゼントすることで自然に成長したという方がしっくりくる。人を好きになってつながることで、欲しいと思ってもらうことが重要だった」と語っている。

RAVE REVIEW

 スウェーデン発のブランド「レイブ レビュー」を手掛けるジョセフィーヌ・ベリークヴィスト(Josephine Bergqvist)とリヴィア・シュック(Livia Schuck)は、ブランドとして2年目となる18-19年秋冬のコレクションで、チェックのビンテージのウール素材を継ぎ合わせて制作した同ブランドの代表的なブランケットコートを発表。それがインフルエンサーのヤンカ・ポリアーニ(Janka Polliani)、エルザ・ホスク(Elsa Hosk)、ヴェロニカ・ハイルブルンナー(Veronika Heilbrunner)らの目に留まったことから一躍注目を浴びるようになった。

 シュックは、「ブランドを世界展開していく上で、それはただの始まりに過ぎなかった。ソーシャルメディア、特にインスタグラムは私たちのブランドの成長に大きく関わっている。とても本質的な方法だと思う」と語っている。また、今季のコペンハーゲン・ファッション・ウイークで初めてのショーを行ったところ、ほとんどのバイヤーがSNSを通じてアプローチしてきたという。

 「レイブ レビュー」はマッチズファッション ドットコム、LN-CC、トトカエロ(TOTOKAELO)などで販売している。

PETER DO

 14年の「LVMH グラジュエーツ プライズ(LVMH Graduates Prize)」で優勝したピーター・ドゥ(Peter Do)はインフルエンサーとの関わりはないが、「アメリカでのブランド展開においてインターネットが極めて重要だった。僕たちはミレニアルブランドだ。チームのメンバー12人とは全員ブログサイトのタンブラーやフェイスブック、インスタグラムといったSNSを通じて知り合った。僕たちのブランドはインターネット上で立ち上がったようなものだよ」と語っている。

 ドゥは「セリーヌ(CELINE)」のフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)の下で経験を積んだ後に活動の場をニューヨークに戻し、次の秋冬シーズンはネッタポルテ(NET-A-PORTER)、バーグドルフ・グッドマン(BERGDORF GOODMAN)、ジョイス(JOYCE)など40カ所で自身のブランドを展開する。

 ドゥはインスタグラムで18万5000のフォロワーを抱えており、コレクションの制作からチームの日常に至るまでを公開している。「みんな明らかにインスタグラムを楽しんでいる。だからブランドが発足したとき、すべてを隠さずみんなに見せたいと思った。イケア(IKEA)に家具を買いに行ったら自分で組み立てるし、コストコ(COSTCO)にランチを買いにも行く。フォロワーはそれに反応するし、インスタグラムはそうして成長してきた。僕たちはファンシーなパーティーやきらきらした部分ではない日常を見せている。重い生地を運んだりしているところとか、他の人が見せていない部分を公開している」とコメントした。同ブランドは、そうした透明性が支持の高さにつながってきた。

HELMSTEDT

 エミリー・ヘルムシュテット(Emilie Helmstedt)は逆に、明るい色で手描き風のプリントを施した独自のデザインで表現する自身の美的世界観をクリエイトする場としてSNSを活用している。コペンハーゲンをベースに活動する「ヘルムシュテット(HELMSTEDT)」は、デンマークのコンセプトストアのホリー・ゴライトリー(HOLLY GOLIGHTLY)や仏プランタン(PRIMTEMPS)、伊リナシェンテ(RINASCENTE)、ラグジュアリーECサイトのモーダ・オペランディ(MODA OPERANDI)、ブラウンズなど20の小売店で取り扱いがある。

 「27歳の私はコンピューターと共に育ち、若い頃からiPhoneを使っている。だからSNS上でコミュニケーションを取ることは私たちにとってすごく自然なこと。誰もがインターネットとつながっている時代に私のブランドが誕生してよかった。20年前だと今のようにみんなに知ってもらうのは難しいと思う。私はブランドのクリエイティブ・ディレクターだから、インスタグラムに情熱を注いでいるわけではない。でもSNSは無視することのできない存在よ。コレクションの創作活動の源を生み出すためにこのプラットフォームに多くの時間を費やしているの」とコメントしている。

 実際のところヘルムシュテットは、ソーシャルメディアがないとファッションのイメージが湧きにくいという。「本当にすべての業界がインスタグラムと関わりがあると思う。ちょっとおかしくて少し恐ろしくもあるけど。だってインスタグラムがなくなったらブランドをどうすればいいの?」と、物思いにふける様子で語った。

 セミファイナリストは、パリ・ファッション・ウイーク期間中の2月27〜28日にパリのLVMH本社でコレクションを披露し、68人の審査員によってファイナリスト8組が選出される。審査員にはインフルエンサーのスージー・ロウも加わっており、グランプリは6月5日に発表される。