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「マリー・アントワネット・スタイル」展を見るべき理由とは? 王妃が愛した宝飾品からコッポラ映画の衣装まで約200点が集結

歴史上最もファッショナブルといっても過言ではない、王妃マリー・アントワネット(Marie Antoinette、1755〜93年)は、激動の人生と数々の逸話で知られ、当時からファッションアイコンでもあった。彼女の装いやインテリアは、現代に至るまでファッションやデザイン、映画などに広く影響を与え続けてきた。

横浜美術館で開催中の特別展「マリー・アントワネット・スタイル」は、8月1日の開幕から、数時間もの入場待ちや、一部の限定グッズがすぐに完売するなど、大きな話題を呼んだ。現在も高い注目度を保ちながら、11月23日まで開催される。

連日SNSで混雑の様子が伝えられているが、気になっている方には、早めに見に行くことをおすすめしたい。今後、マリー・アントワネットをテーマにした展覧会が、これほど充実した内容で国内開催される機会は、そうそう訪れないかもしれないからだ。

日本国内は横浜のみの開催
V&A企画の貴重な世界巡回展

本展は、英国の国立博物館の1つであり、デザインや装飾美術のコレクションで世界的に知られるヴィクトリア&アルバート博物館(Victoria and Albert Museum、以下V&A)が企画している。世界各国で巡回展が行われてきたが、日本国内では横浜美術館でのみの開催。ドレス、ジュエリー、家具、絵画や版画、写真など、日本初公開作品に、国内のミュージアムが所蔵する関連作品も加えた約200点による3部構成だ。

あらゆる点で新しい様式(スタイル)を生み出した王妃の革新性と人物像、ドラマチックな人生に迫る。さらに、その「スタイル」がいかに時代を超えて世界中の人々を魅了し、現代に至るまで多くのクリエイターたちにインスピレーションを与え続けているかを、日本オリジナルの内容でひも解いていく。

愛用したドレスやジュエリー、
当時の人気ぶりが伝わる貴重な品々を展示

Chapter 1「マリー・アントワネット:スタイルの源泉 1770―1793」は、オーストリア皇女だったアントワネットが、1770年、14歳の春に王太子妃としてフランスに嫁いで以降、王妃として宮廷に持ち込んだ新たな視点や趣向にまつわる品々を紹介する。

当時のフランスは、植民地と奴隷制を基盤とした国際的なプレゼンスに加え、文化においても中心的な役割を担っていた。その中でアントワネットは、堅苦しい宮廷の慣習に挑み、衣装のみならず、インテリアや音楽、ライフスタイルまで、あらゆる面でシンプルで洗練された自らの趣向を反映させた。そのスタイルは瞬く間に国内外で大流行し、ルイ16世治下のフランスにおける高級産業、とりわけファッションと織物産業の発展に多大な影響を与えていく。

例えば、18世紀の最もフォーマルなドレスの形式だった「ローブ・ア・ラ・フランセーズ」。ドレスには、柔らかな風合いのつるバラと花束の連続模様が施された、シルクの白いボーダーのテキスタイルが使われている。これには日本の絣(かすり)のように、図案を計算して絞り染めした縦糸で生地を織り出すという高度な技術が用いられ、彼女もお気に入りの1着だったという。

また、即位から10年ほどたった30歳ごろのアントワネットをかたどった胸像には、堂々とした王妃の風格が漂う。丁寧に結い上げられた髪は、シルク製と思われる柔らかなリボンと真珠で飾られているのもポイントだ。実際のアントワネットの髪は、灰色がかったブロンドだったともいわれ、「王妃の髪」と名付けられたその色は、ガウンや乗馬用具などさまざまなものに用いられた。

一方で、あまりにも斬新なスタイル故に、民衆からは想像もつかないほどのぜいたくの象徴と受け止められるようになっていっていく。革命の機運が高まる中、アントワネットは次第に反体制派の標的となり、命を落とすことになってしまう。

今回、日本初公開となったのは、天然パール119粒を連ねたネックレス。自身と愛する家族の運命が変転しつつあることを悟った彼女が、フランスからの脱出を画し、密かに故国 オーストリアに運ばせた宝飾品の1つだ。

革命後、それらはオーストリアに逃れた娘マリー・テレーズ・シャルロット(Marie Therese Charlotte)とブルボン=パルマ家に継承されたが、現在まで残存していたことが公になったのはつい最近。フランス革命から200年以上もたった2018年秋だった。

華やかさと悲劇の象徴
アントワネット・スタイルは時を越えて私たちを魅了する

Chapter 2「マリー・アントワネット:追憶と偶像化1800–1940」は、アントワネットの死後、19世紀から20世紀初頭にかけて1つの偶像として確立していく過程をたどる。数々の出版物を通じて世界へ広まっていった彼女の美意識を、さまざまな人々や品物を通して紹介する。

例えば19世紀には、ナポレオン3 世の皇后ウジェニー・ド・モンティジョ(Eugenie de Montijo、1826~1920年)をはじめ、王党派の支持者たちがアントワネットのスタイルを懐古。スペインからフランスに嫁いだウジェニーは、同じく外国から嫁いだアントワネットに心を寄せ、自らのイメージづくりにおいても王妃を参照したという。

一方、ブルジョワたちは、その家柄の正当性を主張すべく、アントワネット風の装いやインテリアを取り入れた。またアントワネットの装いが仮装舞踏会で人気のテーマとなり、時に物語の主人公にも重ねられ、王妃に関わる品々がヨーロッパ各国で収集される一因にもなった。

そしてChapter 3「永遠に新しく ― マリー・アントワネット・スタイル」では、アントワネットが作り上げたスタイルに、現代のクリエイターたちがさまざまなかたちでインスピレーションを得て生み出したファッション、デザイン、映画、音楽などを紹介。

特に注目したいのは、ソフィア・コッポラ(Sofia Coppola)が脚本・監督を務め、キルスティン・ダンスト(Kirsten Dunst)が主演した映画「マリー・アントワネット」(2006年)にフォーカスした展示エリアだ。

本作は、マノロ・ブラニク(Manolo Blahnik)が手掛けたピンヒールのパンプスや、ポップミュージック、色とりどりのマカロンなど、18世紀の宮廷に「現代」を織り込んだ構成が話題となり、第79回アカデミー賞でミレーナ・カノネロ(Milena Canonero)が衣装デザイン賞を獲得した。

「アントワネットは常にインスピレーションの源」と語るマノロは、制作当時、カノネロの「アカデミックにならないように」という言葉を踏まえつつ、現存する王妃の靴を確認し、素材の選択から細部の装飾までこだわり抜き、全て手から仕上げたそう。

映画に登場したドレスやシューズの数々、貴重なデザインスケッチなども展示されている。パステルカラーやリボンなど、アントワネットが好んだディテールを取り入れたファッションは、洗練された美しさの一方で、退廃や破壊も表現している。さらには、女性らしさへの問いかけや多様性といった、現代社会の課題にまで視点を広げているとも言える。

このほか、多数のメゾンのランウエイを彩ってきたルックや、彼女の生涯がテーマになった作品は数知れず、舞台やミュージックビデオへの引用も尽きない。それはマリー・アントワネットという存在が、時代も国境をも超え、これからも私たちのミューズであり続けていく、何よりの証しだろう。

そして本展を巡ってみると、ドラマチックな生涯を送った歴史上の人物ではあるものの、確かに彼女はあの時代を生き、今を生きる私たちとも地続きの存在である、と実感できるはずだ。

◾️マリー・アントワネット・スタイル
会期:8月1日~11月23日
時間:10:00~18:00(11月21日、22日は20:00まで) ※入館は閉館の30分前まで
料金:一般 2500円/大学生 1600円/中学・高校生 1000円
休館 木曜日(11月19日は開館)
会場:横浜美術館
住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1

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