今年、日本上陸50周年という大きな節目を迎えた「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」。米国のタイムレスなライフスタイルをいち早く日本に広め、根付かせた立役者でありながら、テクノロジーやスポーツ、サブカルチャーを取り入れ、今もブランドストーリーをモダンにアップデートし続けている。このほど来日したデイビッド・ローレン=ラルフ ローレン チーフ ブランディング & イノベーション オフィサーに半世紀にわたる日本市場との歩み、次世代へつなぐ価値観、そして揺るがぬブランドの信念を聞いた。
米国ファッションの“本物”を届け、
日本人の憧れを形に
WWD:「ラルフ ローレン」の上陸から50年。日本のファッションにおいて果たしてきた影響や役割をどう捉える?
デイビッド:父(ラルフ・ローレン=デザイナー)が初めて来日した当時、日本のファッションの風景は、今とまったく違っていたという。多くの日本人が着ていたのは欧州のブランドであり、存在感のある米国のブランドはほとんどなかった。
そんな中で父は、日本でアメリカン・ライフスタイルを啓蒙するパイオニアとなった。当時の日本人はスティーヴ・マックイーンやクリント・イーストウッドのようなアイコニックなアメリカーナのようになりたがり、「テイク アイビー(TAKE IVY)」を読んでプレッピー・スタイルに憧れた。だが、実物は日本では買えず、自分たちの装いにその憧れを投影することはできなった。そのような中、「ラルフ ローレン」は初めて本物ーーハリウッドのエレガンスやプレップスクールの感性を日本に届けた。
日本人のスタイルを変え、
日本文化に共鳴し続けた50年
WWD:「ラルフ ローレン」の存在は、現在の日本人のファッションスタイルにも色濃い影響を与えている。
デイビッド:ブレザーにジーンズを合わせるような、今日の日本で当たり前に見かけるファッションも、実は「ラルフ ローレン」の感性が根付いている。カジュアルとエレガンスを同居させる着こなし、それを肩肘張らずリラクシーに楽しもうとする感覚。そして服を長く愛し、エイジングを楽しみながら相棒にしていく豊かな価値観。日本人に見られるそれらは、ラルフ・ローレンの哲学への理解がベースになっていると自負している。
一方で、私たちのクリエイションは日本の文化とも共鳴し、常に刺激を受けてきた。自然への敬意、仕事と生活のバランスの感覚、そして謙虚さ。日本はいつも父にインスピレーションを与えてくれた。ここに来るたびに、父はより優れたデザイナーになって帰ってきた。米国は多様な人々が集まる坩堝であり、「ラルフ ローレン」がこれほど普遍的なブランドになれたのも、米国人らしさを体現しながら、多くの文化とつながったからだ。その中でも日本文化は、父の感性に特に強い影響を与えてきた。
新しい世代を魅了し続ける
イノベーションとチャレンジ
WWD:チーフ ブランディング & イノベーション オフィサーとしての職務について教えてほしい。
デイビッド:ブランディングとは、父の頭の中にあるストーリーやビジョンを伝えることと同義。広告、マーケティングコミュニケーション、インターネットといったあらゆるプラットフォームにわたって、そのビジョンを翻訳し届けていく役割がある。
ストーリーテリングの上では、大衆が共感できるイメージやアイデアを見出し、新しい世代にも響かせることが重要だ。だからこそ、絶え間ないイノベーションが必要になる。私たちはインターネットで商品を販売した最初のラグジュアリーファッションブランドとなった。近年ではホログラフィックなショーウィンドウの演出や、フットボール場ほどのスケールのドローンショーなど、常に刺激的な表現にチャレンジし続けている。「ラルフ ローレン」のストーリーを常に新しく、モダンな形で語り直し続けることで、新しい世代を魅了し続けられる。私はこのブランディングとイノベーションを一体のものとしてけん引する役割を担っている。
WWD:Z世代やα世代に響くストーリーテリングとは?
デイビッド:まず私たち自身が、「世界が変わり続けている」という事実に対し、常に向き合い続けること。そして目まぐるしい時代の変化に順応しながら、自分たちの哲学を自然な形で融和させ、魅力的に表現すること。
例えば、昨年のホリデーイベントでは、古き良き米国のマウンテンリビング(山での生活様式)を体験できるビンテージの納屋(農具などを保管する建屋)を忠実に再現し、若い世代はその空間の没入感を非常に楽しんでいた。ウィンブルドンとのパートナーシップでは、試合会場に私たちらしい世界観を演出した特別なホスピタリティーブースを設け、セレブリティーやインフルエンサーたちを魅了し続けている。
大事なのは、それらの体験を通じて「コミュニティー」の存在を感じられるかだ。50年前のブランド創業時よりも、今の若い世代は結びつきを強く希求している。だからこそ「ラルフ ローレン」は、自分たちのスタイルとスポーツやカルチャーの融合に挑み「ラルフ ローレン」にしかできない形で体現している。もうすぐ日本でも、このような体験をお届けできることをうれしく思う。
誇りを持てるコミュニティーが
“生き方”と“夢”を作る
WWD:改めて、「ラルフ ローレン」はなぜいつの時代も“タイムレス”であり続けられるのか?
デイビッド:我々の根底には「長く愛され、時を超える服を作る」という哲学がある。そして、常に変化を続けながらも、トレンドに迎合しない一貫した感性がある。父は「私はファッションスクールに行ったことがないから、ファッションデザイナーとは何かが分からない」と常々言っている。言うなれば、彼はむしろ映画監督に近い。彼は服を通じ、人々の生き方を作っている。
世界は複雑化し、人生もますます複雑になっている。そのような中でわれわれが目指すのは、単にブランドロゴを誇示する“ステータス”ではなく、“夢”を届ける存在であること。そして常に一貫した価値観と信念に支えられ、人々がその一員であることに誇りを持てるコミュニティーであり続けることだ。
ラルフ ローレン
0120‐3274‐20