サステナビリティ

三井不動産と考える“SDGs時代”の「人が主役の街づくり」 日本橋編

 三井不動産は「人が主役の街づくり」「街づくりを通して、持続可能な社会の構築を実現」を理念に掲げる。全国で展開する三井ショッピングパーク・ららぽーとや三井アウトレットパークといった商業施設では、子育て世代を軸にした施設環境やサービスの充実で、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を推進する。東京・日本橋では「残しながら、蘇らせながら、創っていく」のコンセプトの下、地域の人々と開発を進める。ミヤシタパーク(MIYASHITA PARK)(東京・渋谷区)では、南北2つに分かれていた旧渋谷区立宮下公園を1つにし、公園・商業施設・ホテルが一体となった次世代型の複合施設として、環境配慮の施策を積極的に行う。“SDGs時代”にフィットする三井不動産のサステナブルな取り組みを全3回の短期連載で紹介する。第2回は、同社が開発を進める「日本橋イーストエリア」を紹介する。

「日本橋イーストエリア」を
多様な人々が集まる場に

 三井不動産は2004年のCOREDO日本橋(東京・中央区)の開業を皮切りに、「残しながら、蘇らせながら、創っていく」をコンセプトに官民地域一体となって、日本橋再生計画を推進してきた。2019年ごろからは昭和通りを境にウエストエリアとイーストエリアという個性の異なる2つのエリアを合わせた「GREATER日本橋」を舞台に、多くの仲間を巻き込むオープンな街づくりを推進。同社は、イーストエリアをより活性化させるため、個性的な路面店舗の誘致を行うなど、新たな賑わいを生み出している。

 現在、イーストエリアの開発を主導するのは、入社2年目の若手社員、ビルディング事業企画部事業企画グループの金子亮介(以下、金子担当)だ。「街を持続的に発展させるには、多様な人々が集まる場であることが大切」といい、風情ある街の風景を残しながら、コミュニティーをつなげるエンタメコンテンツがあふれる街づくりを実践する。

アーティスト支援型の
ホテルでクリエイティブな
コミュニティーを広げる

 21年4月にオープンしたアートホテル「ビーエヌエー ウォール(BnA_WALL)」(東京都中央区日本橋大伝馬町1-1)は、地域に根差したエンタメコンテンツに価値を置く金子担当の肝いり企画だ。「旅人がパトロンになるホテル」というユニークなコンセプトを導入したアーティスト支援型のホテルで、宿泊費の一部が客室の内装デザインを手掛けたアーティストに還元される仕組み。客室は全26部屋で、23組の気鋭アーティストやアートディレクターらが参加した。中にはYOSHIROTTENやカワムラユキらが手掛けた部屋もある。地下1階にはスタジオを構え、宿泊者は1階からアーティストの制作過程を見学できる。

老若男女が集うエリア唯一の
フードホールや
地元に開かれた
コーワーキングスペース

 「ビーエヌエー ウォール」の向かいに位置するのは、20年9月にオープンしたイーストエリア唯一のフードホール「カミサリー 日本橋(COMMISSARY NIHONBASHI)」(東京都中央区日本橋本町3-11-5)。細長い通路には、ピザショップの「ピザ スライス(PIZZA SLICE)」、タコスショップの「北出タコス(KITADE TAKOS)」、クラフトビール専門店「アワークラフト(OUR CRAFT)」、ベーカリーの「チガヤ ベーカリー(CHIGAYA BAKERY)」、カフェ「マインド スパ(MIND SPA)」の5テナントが並ぶ。フードを調理する工場を併設し、作り手の顔が見える直売所となっている。ニューヨークで経験を積んだ「北出タコス」の北出茂雄オーナーや「ピザ スライス」の猿丸浩基氏らが手掛けていることもあり、店内はブルックリンのような雰囲気。地域の住人やオフィスワーカーのほか、これまで同エリアに少なかった若年層も集う。金子担当は、「老若男女さまざまな人たちが行き交う街を作ることが私たちの理想だ。日本橋を若い人たちにとっても身近に感じてもらえるきっかけになった」と話す。

 また、6階建てのコーポラティブオフィス「ソイル 日本橋(SOIL Nihonbashi)」(東京都中央区⽇本橋⼩⾈町14-7)は、21年12月にオープンした。近隣に住む人々が利用する公園と隣接するビルの立地を生かして、地域内外の人々の交流が生まれるローカルコミュニティーの拠点としての役割を担う。金子担当はある絵を見ながらSOIL運営会社の代表と交わした会話が忘れられないという。その絵は、80人がそれぞれ80の遊戯をしている「子供の遊戯」(ピーテル・ブリューゲル)である。「『公園は公の園であり、この絵のような景色を創りたい』という代表の想いに共感。この堀留児童公園で代表とともに、その景色を実現したいと思った」と話す。

 1階はカフェベーカリー「パークレット(PARKLET)」で、店内から公園へ自由に出入りできる。2階は会員制コワーキングスペースとして、自由席と固定席を用意。3階以上は個室オフィス(5階は桂屋ファイングッズの染色工房)で、ローカルと繋がりが深いベンチャー企業や建築・デザイン関連会社などが多く利用する。公園に面した大きく開放感のある窓からは、仕事中も遠くから子どもの笑い声が聞こえる。今後、入居者同士がつながり、地域の子どもたちも参加できるイベントやワークショップを定期開催していくことを目標にしている。

「いろんな“障がい”で
社会参加できない人に手を
「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」

 21年6月にオープンした「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」(東京都中央区日本橋本町3-8-3)は、D&Iを実装した店舗として話題を集める。店内で接客するのは、身体障がいなどさまざまな理由で社会参加が困難な人が遠隔で操作するロボットたちだ。

 開業当初から同カフェで働く柳田幸樹さんは三重県在住。高校生のときに事故に遭い、四肢に麻痺を抱える。これまでは翻訳の仕事など自宅で一人で作業することが多かった。そんな柳田さんは同カフェと出合い、再び人との交流を楽しみながら仕事しているという。現在は週4日のペースで勤務。柳田さんは、「お客さんをはじめ、カフェで働く店員さん、パイロットの仲間との出会いもありがたかった。普段の生活では関わりが少ない子どもたちともこのカフェでは交流できる。世界が広がり、人と話すことを避けていた過去よりも今の方がはるかに楽しい」と話す。

 “パイロット”と呼ばれる操縦者には現在約70人が登録している。金子担当は、「“パイロット”の中には、身体的障がいを抱える人以外にも子育て中のママや海外赴任中の人もいる。このカフェでは、さまざまな“障がい”を持つ方々も含めて、多様な人々がつながる場が実現できていると実感している。このスポットを起点に日本橋をインクルーシブな街にしていきたい」という。

 「日本橋イーストエリア」では、これまで上記の施設を含む約10の新施設が開業した。「面白い種」としてまかれた一つ一つの施設がそれぞれの魅力を発揮し、多様な人々が集まる街へと進化している。金子担当は、「日本橋を拠点に構える三井不動産は1941年に設立したが、江戸時代から残る店も多いこの地域では、まだまだ新参者という立場。この街のさらなる進化につながるような無形資産も残していきたい。今後は日本橋エリア全体でテナント同士のつながりが生まれ、自然にクリエイティブなアクションが生まれる街にしていきたい」と話す。

PHOTOS:KAZUSHI TOYOTA
問い合わせ先
三井不動産 広報部
03-3246-3155