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「ザ・ノース・フェイス」が「プリマロフト」を選ぶわけ

 ファッションも機能性やサステイナビリティーを追求する傾向の中で存在感を高めているのが、ポリエステルを主原料とする“化繊綿(わた)”だ。中でも三井物産アイ・ファッションが扱う「プリマロフト(PRIMALOFT)」は、日本におけるブランド化繊綿のトップシェアを占める。「プリマロフト」を20年以上にわたって使用するアウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」の大坪岳人ディレクターにそのわけを聞いた。

機能的かつサステイナブル、
さらにイージーケア

 本格派アウトドアブランドで、ファッションとしても幅広い層に受け入れられている「ザ・ノース・フェイス」は1990 年代から「プリマロフト」を採用している。大坪岳人「ザ・ノース・フェイス」ディレクターは、「化繊綿は、もともとはダウンの代替品として生まれたが、われわれは化繊綿とダウンを全くの“別物”と捉えている」と話す。ダウンはロフト(かさ高)があり、コンパクトに畳んでも復元力が高い。しかし、水濡れや汚れによって重くなり、保温性が損なわれるのが弱点だ。

 また偏りを防ぐためにバッフルと呼ばれる隔壁が必要で、デザインも制限される。一方、化繊綿は保温性などをキープしながら薄く仕上げることができ、デザインへの対応力が高い。ダウンほどではないがかさを出すこともでき、何といっても家庭で洗濯できるのが特徴だ。「商品設計上、中綿に採用すべきはダウンなのか化繊綿なのか、アイテムごとに考えている」という。

 多くの化繊綿ブランドの中で「プリマロフト」を指名し続ける理由については、「最大の魅力は、ダウン以上の柔軟性だ。体に“追従してくる”着心地は、ほかの化繊綿ブランドにはない個性と言える。われわれが求めるロフトをクリアしてくれるので、バッフルなしのデザインに使うことが多い」と答えた。シーズン商品であるダウンウエアは、夏の間コンパクトに畳めて収納できることも大事な要素だ。ダウンは収納時に湿気を含んでロフトが失われることがあるが、「『プリマロフト』は、すぐにかさが回復する。そもそもほかの化繊綿ブランドはコンパクトに畳むこともできない」と述べた。

 2019-20年秋冬シーズン、「ザ・ノース・フェイス」はブランドのアイデンティティーとも言える“キャンプシエラ”シリーズに“プリマロフト ゴールド インシュレーションラックス エコ(以下、プリマロフトラックス)”を採用した。“プリマロフトラックス”は軽量性、保温性、はっ水性、通気性、柔軟性などに優れた「プリマロフト」の最高峰アイテムで、リサイクルポリエステルを100%使用したサステイナブル素材でもある。大坪ディレクターは、「“シエラパーカ”はダウンウエアのオリジンとも呼ばれる、『ザ・ノース・フェイス』の最重要アイテムだ。そのアイコンに再生素材の“プリマロフトラックス”を採用することで、ブランドが今何を大事に考えているかを表現したかった」と説明する。実際、「ザ・ノース・フェイス」はダウンを回収、洗浄、再販売して循環させる「グリーンダウンプロジェクト」など、サステイナブルな試みを多数実践している。

知ってるつもりの
「プリマロフト」とは?

 「プリマロフト」は、アメリカのプリマロフト社が開発・製造する化繊綿ブランドだ。最近では軽さや保温性、はっ水性など化繊綿の持つさまざまな機能が認知され、そのリーディングブランドである「プリマロフト」を店頭で指名買いする客が増えている。“PRIMALOFT”と書かれた赤い逆三角形のロゴを、中綿入り衣料のタグなどで見かける機会も増えた。プリマロフト事業は1983年、当時の最先端素材メーカーであった前身のオルバニー インターナショナル(ALBANY INTERNATIONAL)社によってスタートした。米陸軍の「ダウンに変わる新素材を」というリクエストに完璧に応え、その高い品質が世に知られることになった。

「デザイン面では
産みの苦しみもあった」

 企画・開発を統括する大坪ディレクターは「デザイン面では産みの苦しみもあった」と言う。“シエラパーカ”はダウンのためにデザインされたアイテムであり、「それを化繊綿用にリデザインする際、チーム内でかんかんがくがくの議論があった。しかし機能性に優れ、質が高い“プリマロフトラックス”の存在が追い風になった。『プリマロフト』は今や、『ザ・ノース・フェイス』を作る上で欠かせないブランドになっている」。

プリマロフトの副社長
が語る未来

 機能的でサステイナブルな新素材を開発し続けるプリマロフト社のヨッヘン・ラゲマン(Jochen Lagemann)副社長に、同社が考える未来について聞いた。「化繊綿の技術競争はハイレベルだが、『プリマロフト』はその中で最も軽量で保温性に優れた素材として認知されている。ダウンは断熱材として魅力的だが、水濡れなどの弱点があることは確か。化繊綿はそのソリューションの一つだ。またダウンは、動物愛護の観点からエシカルな素材とは言えない。サステイナビリティーを追求する当社としては、再生ポリエステルや生分解性原料などを使用したクリーンな化繊綿の開発に、いっそうまい進する。現在、世界中の800を超えるブランドが『プリマロフト』を採用しており、アジアでのファッションおよびライフスタイル需要も着実に伸びている。われわれの武器は83年以来培ってきた開発力だ。これを将来的にも維持し、各ブランドひいてはエンドユーザーに快適さを提供し続けたい。より多角的に答えを示せるよう、さまざまな業界とパートナーシップを結ぶ必要もあるだろう。そして、その準備をしている」。

 アウトドアブランドを中心に、ライフスタイルブランドにも浸透している「プリマロフト」。ダウンの代替品という枠を超え、「プリマロフト」独自の価値を生み出している。

PHOTO : KAZUO YOSHIDA, TEXT : MASASHI TAKAMURA

問い合わせ先
三井物産アイ・ファッション 機能テキスタイル事業部
06-6226-3532