フォーカス

「エージー」の自社工場は水の完全循環を実現!


 原料となる綿花の栽培、インディゴによる糸の染色、洗いによる加工と、ジーンズができるまでにはステップごとに大量の水が必要となる。2000年にロサンゼルスで誕生したジーンズブランドの「エージー(AG)」は、工場用水の再利用に取り組み、19年についに一貫生産の自社工場で完全循環のウオーターフィルタレーションシステムを完成させた。年間200万着のデニムウエアを製造する同ブランドの取り組みは、ジーンズ業界のサステイナブル化を大きくけん引するだろう。

2019年、ついに工場排水を
100%リサイクル

 「エージー」のアイコンといえば、08年に発表した“エイジド(AG-ed)”シリーズだ。洗い加工でリアルなビンテージ感を表現し、“プレミアムジーンズ”ブーム後も売り上げを維持した。「エージー」の先見性はそれにあぐらをかくことなく、09年には洗いに代わる加工技術としてレーザーを導入したことにある。さらに10年にはオゾン加工も採用し、水のみならず化学薬品の削減にもアプローチした。そして19年7月、ウオーターフィルタレーションシステムを本格始動した。1日38万ガロン(25 mプール4 杯分)の工場排水を飲める状態にまで浄化し、蒸発する15%を除く100%をリサイクルしている。ロサンゼルスの降雨量は東京の4分の1ほどで、水が貴重なこともあるが、とかく水を使うジーンズ業界に大きな一石を投じるアクションといえる。

ほかにも見つけた「エージー」
自社工場のここがスゴい!

 ユル・クー「エージー」最高経営責任者(以下、CEO)兼プレジデントは、「“プレミアムジーンズ”ブームに沸いた00年代もわれわれは自社工場でジーンズを一貫生産しており、それは当時アメリカで唯一の存在だった」と振り返る。現在の「エージー」のロサンゼルス工場は約3万1500平方メートルで、500人のスタッフが働く。さらにメキシコにこの1.5倍の工場を持ち、全商品の90%を自社生産する。

 工場の屋根にソーラーパネルを設置し工場の動力の25%をまかなったり、コストダウンのためレザーパッチなどの部材はもちろんブランドタグや社員の名刺まで内製していたりと驚くことはさまざまあったが、ブランドのアイデンティティーとも言えるエイジング加工や1日1500本を加工するレーザーマシンなど、特に気になったものを写真とともに解説したい。

サンプル作りのための
ぜいたくな空間

 デザインルームのすぐ隣には、サンプル作り専用の部屋がある。スタッフに話を聞くと、「デザイナーと隣接することでコミュニケーションが密に取れる」と答えた。実際に取材中も、サンプルを手に話をするデザイナーとサンプル師の姿が見られた。かつてOEM 用の縫製場だったためこの広さを持ち、さまざまなサンプルを1週間で形にする。

「エージー」を先導する
カリスマ経営者の存在

 「エージー」を率いるのは1951年、韓国・釜山生まれのクーCEOだ。75年にアメリカに移住し、縫製工場を設立。2000年に“デニムの神様”ことアドリアーノ・ゴールドシュミット(Adriano Goldschmied)と共に「エージー」をスタートさせた。04年、ゴールドシュミットがビジネスから退くと、「エージー」の商標権を取得した。

 クーCEOの下で23年間働くエベリン・ソン(Evelyn Song)=プロダクション・ディレクターは、「彼は単なる経営者ではなく、プレーングマネジャーだ。われわれと工場で食事をし、同じ時を過ごす。だから労働者の気持ちがよく分かる。それが“工場のプロ”であることだと思う」と述べ、ロン・バラットバット(Ron Balatbat)=デニムデザイン・ディレクターも「『エージー』のスペシャリティーは、クーCEOの多大なる経験とビジョンにある。ベストな素材、先進のテクノロジー、可能な限りのツールと機会を僕らデザイナーに与えてくれる」と話す。

PHOTOS : NORIHITO SUZUKI
問い合わせ先
エージージャパン
03-5946-8990