
「T.T」は10月28日、ウィメンズラインを扱う新店舗「T.T 御所南」を京都市中京区にオープンする。総合芸術空間のT.T 祇園に続く、京都で2つ目の拠点となる。京都御所に近い築約150年の京町家に、衣服を起点として建築、庭、茶、工芸、アートを集め、立礼茶室「然美(さび)御所南」も併設する。
茶の湯では、出自の異なる道具を一つの席に取り合わせ、新しい関係を結ぶ。「T.T 御所南」は、その考え方を空間に移した場だという。町家の柱に残る暮らしの名残や歳月が生んだ景色はそのままに、現代の感性を重ねた。
中心は女性のための服 世界の産地の素材を一着に
「未来は過去にある」と語った創設者の髙橋大雅は、10代から集めた欧米のビンテージ服飾資料2000点と、古物や古美術を礎に“応用考古学”を実践してきた。6月にローンチしたウィメンズラインの服作りもそこから始まり、世界各地の産地に広がる。
内モンゴル・罕山(ハンシャン)のベビーカシミヤのファーストカット、アンデス高地のスーパーベイビーアルパカ、1300年以上続く奄美大島の泥染め、60年以上前の旧式力織機で織る岡山のデニムなど、大地が育んだ素材と長い歳月をかけて受け継がれてきた技法を、日本の美意識を通して一着に仕立てる。
門には「無限塔」 建築の随所にドレープ
門をくぐると、髙橋の彫刻作品「無限塔」が迎える。T.T 祇園に据えた3体1組の作品を、ステンレスで新たに制作したバリエーションとなる。反復のなかに変化を重ねながら未来へと続く螺旋には、過去から受け継いだものに新たな解釈を加えて次の時代に手渡す、髙橋の“応用考古学”の姿勢が重なる。
髙橋の彫刻作品「時間の天衣」や平面作品「陰翳礼讃」に表した衣のドレープを、「T.T」と協働を重ねてきた伝統技法の作り手とともに、建築の随所に取り入れた。畳縁には元禄元年(1688年)創業のHOSOOによる西陣織を使い、布の重なりと揺らぎでドレープを表現した。襖には嘉戸浩が主宰する京都・かみ添の唐紙を張り、版木による摺りの重なりでドレープの陰影を写す。照明は、京都・八瀬に工房を構えるガラス作家、佐藤聡による宙吹きガラスで、内側に施したドレープを透して光が繊細な陰影を生む。
奥には、茶室の様式に倣った小間「デニムの間」を設けた。「T.T」のシグネチャーで、もとは仕事着として生まれたデニムを、呉服のようにたとう紙に包んで籠に収め、着物と同じように扱う。髙橋は、着込むほどに価値を深めるという点で、デニムと着物に同じ時間的価値を見いだしていた。床の間には、藍で染めた和紙に雲母を摺り重ねてデニムの織り目を写した嘉戸の掛け軸を掛けた。
立礼茶室「然美 御所南」と4つの庭
髙橋は茶室「然美」を、自らの作品の一つとして構想した。人工の光を極限まで排したT.T 祇園の然美に対し、御所南では大きな開口から向かいの白壁の蔵の反射光が差し込み、異なる陰影を生む。空間の中心には、数千年を土中や火山灰の下で過ごした神代杉の一枚板を据えた。
菓子は、京都を拠点に御菓子丸を主宰する杉山早陽子が手掛ける。「無限塔」から着想を得て四季の移ろいを表した琥珀菓子のほか、「陰翳礼讃」やデニムをモチーフにした菓子も提供する。茶器には、プロダクトデザイナー高橋孝治による常滑の急須を使う。
4つの庭は作庭家の重森千靑が手掛けた。入り口の枯山水は「無限塔」を石組みに見立て、砂紋がその螺旋のうねりに呼応する。大正期の作庭とみられる茶室前の庭では、築山や飛び石を整えながら、植生はそのまま生かした。新しいもので古いものを塗り替えるのではなく、時間の流れが生んだ痕跡を磨き出す“応用考古学の庭”でもある。
然美の入り口には、イサム・ノグチの金属彫刻「Circles」を据えた。髙橋が「T.T」の思想を形づくるうえで衣服と並んで重んじたのが彫刻で、その参照先がコンスタンティン・ブランクーシとノグチだった。母屋の2階は展示空間としても使い、今後は現代アーティストの作品も紹介する。
こけら落としは“水”を手がかりにした展覧会
オープンに合わせ、11月1日までオープニング展「T.T GOSHO-MINAMI EXHIBITION 01」を開く。水の循環と変化を手がかりに、髙橋が「無限塔」を通して向き合った“原点”という概念を考察する。
茶室の入り口と茶室内では、淡路島を拠点とするアーティスト、和泉侃による匂いの作品「Research on Olfactive Display/嗅覚に関する展示方法のリサーチ」を展示し、“潤い”と“乾き”という対極の状態を異なる匂いで表す。茶室を抜けた先では、パリを拠点とするサウンドアーティスト、トモコ・ソヴァージュ(Tomoko Sauvage)の「In Curved Water」を日本で初めて公開する。つるした氷塊から磁器の器に落ちる水滴の音を、器に沈めたハイドロフォンが拾い、室温や水量によって移ろう響きを空間に広げる。
■T.T 御所南、立礼茶室 然美 御所南
オープン日:10月28日
住所:京都府京都市中京区富小路通二条下る俵屋町188
営業時間:12:00〜19:00
■T.T GOSHO-MINAMI EXHIBITION 01
会期:10月28日〜11月1日
会場:T.T 御所南