ファッション

豚産出量全国2位の旭市で生まれた、週7着られる「豚革ブルゾン」 千葉発の匠の技

「生まれるべきものが生まれ、広がるべきものが広がり、残るべきものが残る世界の実現」をビジョンに掲げるマクアケによる、“アタラシイものや体験の応援購入サービス”の「マクアケ」には、伝統技術を現代的なアイテムに活用したプロジェクトが数多い。この連載では、全国各地の匠の技に注目。実行者の思いとともに、匠の技をどう活用し、どう訴求しているのかを考える。目指すは、47都道府県の匠の技の探訪だ。今回は、千葉県を訪れた。


今回の技術は…

布帛と豚革の縫い合わせ

ソーイングアサヒは、千葉県旭市に拠点を置く縫製工場です。プロジェクト実行者の高橋照典氏の祖父・高橋文夫氏が1973年に創業し、現在は父・高橋英一郎氏が社長を務めています。

同社はこれまで、国内外のファッションブランドのOEMを主軸にしてきました。しかし、洋服が売れない今、ブランドは生産規模を縮小しつつあります。「昨年は100枚作っていたものが、今年は30枚ということもある」と照典氏。「言われたものを作るだけでなく、自分たちで作って発信していく。それが縫製工場の生き残る道になる」と、2024年にファクトリーブランド「SAC」を立ち上げました。

今回タッグを組んだのは、旭市産の豚革“九十九里レザー”。旭市は全国2位の豚の農業産出額を誇りますが、肉は広く消費される一方、年間40万頭分出る革は活用しきれずにいました。旭市のふるさと納税ではバッグやケースなどの革小物に使われていたものの、衣類での前例はなし。「うちはバッグは作れない。服しか作れないからこそ、服に落とし込めないかと考えた」と照典氏。

しかし、革といえば牛や馬、羊が主流で、豚は一般的ではありません。なめし工場からは、「歴史的に牛革が先に使われたため、いつの間にか牛革を基準に革が“格付け”されてしまった面がある」と聞いたこともあるそう。「柔らかく、軽く、丈夫」という豚革の知られざる魅力を、日常着で伝えることを目指しました。

「マクアケ」でのプロジェクトは、同社にとって2回目となります。前回はロング丈のステンカラーコートとチェスターコートでしたが、今回アイテムとして選んだのはブルゾン。丈を短くしたのには、地方ならではの理由があります。車移動が多いため、丈が長いと座席で裾を踏んでしまうのです。

コンセプトは“週に7回着られる”こと。フォーマルにもカジュアルにも着られるよう、試行錯誤を繰り返し、身幅などのサイズ感を細かく調整しました。「カジュアルに寄せすぎるとスーツに合わないし、タイトすぎると今っぽくない。そのバランス感がすごく難しかった」と振り返ります。

最大の難所は、革と布帛の縫い合わせでした。布帛同士の縫い合わせには慣れているものの、革と縫い合わせようとすると、革が滑ったりミシンが進まなかったりするなど、一筋縄ではいかなくなります。そのため、他の工場からは敬遠されることも少なくありません。今回豚革は襟に限定し、その一部分に国内外のアパレルブランドのモノ作りを支えてきた縫い子の技術を注ぎました。

今後はジャケットやシャツなど、得意とするアイテムで自社ブランドの商品を広げていく考えです。「“九十九里レザー”をきっかけに旭市を知ってもらい、ふるさと納税で豚肉を選んでくれる人が増えれば、相乗効果で地域に還元できる」と、3代目として旭市全体の活性化も見据えています。

“九十九里ブルゾン”の4つのポイント

1.旭市産の
“九十九里レザー”

旭市で育った豚の革を、千葉県食肉公社が加工します。地産・地加工のためキズが少なく、養豚農家が丁寧に育てたため毛穴も目立ちにくいのが特徴。衣類に合わせても映える、上品な質感に仕上げています。

2.2人と環境に優しい
“ラセッテーなめし”

なめしは、豚革を中心に手掛ける山口産業が担当しています。クロムを使わず植物タンニンでなめす独自の“ラセッテーなめし”で、肌に優しい革に仕上げます。この製法だからこそ、デリケートな首元にも直接触れられるようになりました。

3.革と布帛を縫い合わせる
縫製技術

滑りやすく、ミシンが進みにくい革と布帛の縫い合わせは多くの工場が敬遠しますが、ソーイングアサヒは国内外のブランドを支えてきた縫い子の技術で異素材を美しくつなぎました。襟は、立てても倒しても着られるツーウエイ仕様です。

4.“週7で着られる”
素材とサイズ感

中綿には導電性と保温性に優れた“コアブリッドB”を、表地には撥水機能付きのリサイクルナイロンを採用しました。複数回のサンプル作りを経て、スーツにも私服にも合わせられるよう、ジャケットやニットの上から羽織れるサイズ感に仕上げました。

千葉発!
応援購入が高額なプロジェクト3選

“アタラシイものや体験の応援購入サービス”の「マクアケ」で大きな反響が寄せられた千葉県発のプロジェクトを3つ紹介する。

PICK UP 1 : 応援購入総額1085万5748円

【CALM FLAME】研ぎ澄まされたデザインと
徹底した実用性が両立する焚き火台

市川市の竹中製作所が手掛けるアウトドアブランド「エンバーデザイン」のアウトドアギアプロジェクトの第2弾。“カーム フレイム”と名付けた焚き火台は、ファイヤーピットを2軸で支える独自機構で、かがり火のようなたたずまいに。国産の板金技術が安定感を生む。収納時の厚みはわずか3cmだ。

PICK UP 2 : 応援購入総額599万5000円

【いつもの2分が変わる】40年の技術が
辿り着いた、イオン電動歯ブラシの集大成。

千葉県流山市のアイオニックは、長年イオン歯ブラシの研究・実用化に取り組んできたメーカー。新モデルの“イオンパ”は、マイナスイオンと音波振動を組み合わせ、歯垢を浮かせて落としやすくした。4つのモードやタイマーも備えている。手磨き派でも使いやすい1本だ。

PICK UP 3 : 応援購入総額351万80円

西千葉のまちに日本酒の舞台を
つくりたい!

大学時代の仲間同士で起業したさけべーすが、西千葉に“さけべーす はなれ”をオープンする。全国約450の酒蔵を巡る中で出会った漁師や農家から仕入れた食材を、オープンキッチンで炭火焼きする。働くのは、“日本酒への愛が深すぎる”スタッフ。社会人や学生を問わず、語り合える酒場を目指す。

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