ビジネス

「ほめられるビジネスモデル」の実現へ 開始2年半、大丸松坂屋の衣料品サブスクが見据える先

「ほめられるビジネスモデルにしたい」

そう語るのは、大丸松坂屋百貨店が運営する衣料品のサブスクリプションサービス「アナザーアドレス(ANOTHERADDRESS)」のリーダーを務める田端竜也氏だ。

同サービスは外出がままならないコロナ禍の2021年春に始めた。初年度は50ブランドを取り扱い、利用者数に制限をかけたため登録会員数は6000人。それが23年11月時点では6万人・276ブランドへと拡大した。これまでに延べ16万着を貸し出した。会員の平均年齢は43歳で、大丸松坂屋やグループのパルコで1万円以上の買い物実績がない人9割を占める。サブスクを通じて新しい顧客と接点を持てた。

衣料品の大量生産・大量消費・大量廃棄が問題視される中、社内ベンチャー型の組織として田端氏が発案した。サブスクなら客は高価なデザイナーブランドでも手軽に楽しめる。大丸松坂屋としては店舗で接点がなかった客とつながることができる。レンタルで着用して気に入れば購入してくれたり、ブランドのファンになってくれるかもしれない。百貨店事業とサブスク事業は敵対するのではなく、相乗効果が見込めると確信していた。

作って売るだけの一方通行ではなく、衣料品が循環する流れを作る。事業パーパスは「ファッションニューライフ(ファッションの楽しさと持続可能な未来の融合)」。掲げる理想に「メゾン マルジェラ」「マルニ」「ビューティフルピープル」といった人気ブランドも共感し、取り扱い商品どんどん増えていった。百貨店の長年ののれんの力も味方した。

12月1日からは新事業「リアドレス(RE ADDRESS)」を始めた。レンタルで汚れや傷が生じてしまった服を染め直したり、パッチワークしたりして貸し出す。黒染めで知られる京都紋付(京都市、荒川徹社長)や有力なデザイナーと協業し、一点ものの服として打ち出していく。レンタルされているうちに汚れや傷がついて、貸し出しができなく商品が2000着ほど溜まっていた。これらを廃棄せずに新たな価値を吹き込む。

9月には現代アートのサブスクにも進出した。田端氏はアナザーアドレスを単なる服のレンタルにとどめる気はない。「想定以上だったのが、さまざまな知見が蓄積されていくこと。どんな服やブランドが人気なのか、何回貸し出されるのか、お客さまがどう評価(レビュー)したのかといったデータは宝の山になる。また服のクリーニング、修繕、保管、物流についてのノウハウも新しい事業に転用できる。大きなプラットフォームに化ける可能性を秘めている」と話す。

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