PROFILE:(きぐま・たろう)IT企業を経て、「ヴォーグ ジャパン」や「GQ ジャパン」でデジタルメディアの編集、動画制作、ウェブプロデューサー業務に携わる。「カーサ ブルータス」のデジタル メディアディレクターを経て、2020年にハースト・デジタル・ジャパン入社。「エル デジタル」のチーフ ウェブ プロデューサーとしてSNSで同時配信した初のイベント「ELLE Active! Festival 2021」プロジェクトをけん引。22年9月から現職 (同中)(たきぐち・さおり)14年ハースト婦人画報社入社(現ハースト・デジタル・ジャパン所属)。「エル・デコ」本誌を中心に、「エル・デコ デジタル」やSNSにも携わる。毎年秋に行う「エル・デコ デザインウォーク」をけん引するほか、今年は「ミナ ペルホネン」特集を担当。30周年企画では「エル・ショップ」と連携した企画を行う (さかた・りょうこ)17年ハースト婦人画報社入社(現ハースト・デジタル・ジャパン所属)。「エル・マリアージュ」を経て、「エル・デコ」へ。21年から「エル・デコ デジタル」専任となり、SNSを含むデジタル部門全般を担当
PHOTO : SHUNICHI ODA
ハースト婦人画報社の「エル・デコ(ELLE DECOR)」は9月、木熊太郎新編集長を迎えた。木熊編集長は、IT業界出身。複数の出版社のデジタル化に携わった。デジタル、建築&インテリア、そしてイベントまでを一通り経験しているマルチタレントだ。新体制においては、雑誌づくりの経験が豊富な滝口沙音里エディターや坂田綾子デジタルエディターらと、雑誌とデジタル双方の利点を同時に最大化するという視点を基軸に、ブランド力のさらなる拡大を目指す。木熊編集長は「デジタルの速報性と幅広いリーチは紙媒体とは比べ物にならず、良いコンテンツは永遠に読まれるもの。一方の紙媒体は、エモーショナルな表現に長けている。『エル・デコ』のユーザーはこれから、毎日ウェブやSNSで情報に触れて、2カ月に1度紙媒体で体験する」と意気込む。
まず紙媒体は、「もはや高級品。ラグジュアリーな『エル・デコ』のプリントメディアは、“仕立てる”くらいの気持ちで作っていきたい」と話す。インテリア実例の厚みを増しながら、今後は広い意味でのデザイン、例えばデジタルデバイスや電気自動車に関するコンテンツづくりにも挑戦する。「日本のブランドやデザイナーを誌面、そしてデジタルで世界の『エル・デコ』に届けたい。今後は各国にリフトしてもらえるように日本版のプレゼンスを高めたい」。また、インテリアの世界でもサステナビリティーの重要性が高まってきた。ここでは、ファッションの世界でサステナビリティーについての発信を深める「エル・ジャポン(ELLE Japon)」との連携なども考える予定だ。
デジタルでは、新たなデザインの世界も含めて「編集者が『エル・デコ』ユーザーに読んで欲しいものやブランディングに必要なコンテンツは、公開当初は1000PVでも構わない。」という。とはいえ、せっかくアップするならデジタルでもベストを目指したい。こんな時に役立つのが、木熊編集長の知見や経験だ。坂田エディターは、「今は『こうすれば、正解が導き出せる』が見えてきたところ」と話す。数字は「じわじわ上がっており、クライアントが出稿したいと思ってくださる」レベルに達しつつある。今後は、エンゲージメントが高いSNSからの流入を狙う方向性にシフトする。
おうち時間の拡大に伴い、インテリア業界にはフォローの風が吹いている。木熊編集長も、「今、外の世界は少し厳しい。守ってくれる存在としての家での生活の質を上げたいという思いは、自分も含めて実感します。もちろん生活の質を上げても厳しい問題は解決できないかもしれないけれど、前向きな気持ちの源泉にはなり得ます」と重要性を説く。
だからこそ「エル・デコ」は、多角的なコンテンツの発信でインテリア業界をサポートする。22年目を迎えた「エル・デコ デザインウォーク」は、連動イベントを開く80~100のブランドや店舗の情報をタブロイドにまとめながら、オンラインでのトークイベントやリアルなイベントを開催。滝口エディターは「秋にはタブロイドを持ちながら店舗を回り、インテリアデザインを楽しんでもらえたら。普段は敷居が高いインテリアショップにも訪れるきっかけにしてもらい、裾野を広げたい」と意気込む。
紙媒体からデジタル、そしてSNSやイベント、他社のコンサルティングまでビジネスを拡大し続けるメディアの編集長に話を聞きました。