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連載 W杯出場国ユニホームの小話

【連載】知っておきたいサッカーW杯出場国ユニホームの小話vol.1 なぜ日本代表はブルーなのか

 世界最大級のスポーツの祭典、2022年FIFAワールドカップ・カタール大会が、11月20日から12月18日まで開催される。2026年以降は参加国が48カ国に増えるため、今大会は1998年のフランス大会から続いていた32カ国制で行われる最後の大会だ。初のベスト8を目指す日本をはじめ、5度の最多優勝回数を誇るブラジルや、前回大会王者のフランス、1966年の自国開催以来56年ぶりの優勝を狙うイングランドなどが出場。初出場国は開催国のカタールのみという歴戦の“猛国”たちが、それぞれのプライドをかけてしのぎを削る。

 しかし、W杯がいくら世界最大のスポーツの祭典といえど、普段サッカーを見ない人には試合観戦は退屈かもしれない。そこで、サッカーファンでなくともW杯を少しでも楽しんで観戦してもらいたく、出場国のユニホームにまつわる小話を短期集中連載で紹介する。記念すべき1回目は、もちろん“サムライブルー(SAMURAI BLUE)”ことわれらが日本について。

日の丸の色と異なるブルーなのはなぜ?

 サッカー日本代表の愛称である“サムライブルー”は、2006年のサポーター投票の結果から決定した。おそらく多くの人が、一度は「なぜサッカー日本代表のユニホームは、国旗の色と関係ないブルーなの?」と疑問に思ったことがあるだろう。これには、“ナショナルカラー”が深く関わっている。

 “ナショナルカラー”とは、国旗や国章をもとにした色、もしくはその国の歴史に深く関わる色を指し、アメリカのホワイト&レッドや、オランダのオレンジなど、多くの国が正式に制定している。そしてサッカーに限らず、多くのスポーツ競技では“ナショナルカラー”に準じたユニホームを着用することが多い。だが日本は、オリンピックなどで“日の丸”に着想したホワイト&レッドの公式服装を採用することはあれど、スポーツにおける“ナショナルカラー”を正式には制定していない。このため、ラグビーはホワイト&レッドだが、野球はグレーで、卓球は鮮やかな色彩といったようにスポーツごとにバラバラになってしまっているのだ。

 では、なぜサッカー日本代表はブルーを採用しているのか。これに関しては、日本サッカー協会(JFA)にも明確な資料が残っておらず“不明”だという。諸説あるうちで、1930年の国際大会での優勝がきっかけというのが最有力だ。

 1900年代初期のサッカー日本代表は現在のような選抜形式ではなく、大学やクラブなどの単独チームのまま構成しており、チームのユニホームをそのまま採用していた。そして1930年の極東選手権に初の選抜形式で参加し、見事優勝を果たす。この時、メンバーの大半が東京帝国大学の学生だったため、同大学のシンボルカラーである淡青(ライトブルー)に寄せながら、“国土を取り巻く海”をコンセプトとしたブルーのユニホームを着用していたそうだ。そして、36年のベルリン・オリンピックでも縁起をかつぐ意味を込めてブルーのユニホームを採用し、以降ブルーがチームカラーとして定着していったという説がある。

 なお、イタリア代表も日本と同じく国旗と全く関係ないブルーのユニホームだが、こちらは国としてブルーを“ナショナルカラー”に制定しており、同国ではほぼ全ての競技でブルーのユニホームを採用している。同国代表の男性、または男女混合のチームを、イタリア語で“青”を意味する複数形男性名詞“アズーリ(azzurri)”と呼んでいる。

八咫烏がシンボルマークなのはなぜ?

 このように、ほぼなりゆきでブルーがチームカラーとなったサッカー日本代表は、全く異なるカラーを突然採用することもある。1964年の東京オリンピックは上下共にホワイトのユニホームで、88年に横山謙三が監督に就任してからは、同氏の意向で日の丸をイメージしたレッドに変更(92年からブルーに再変)。この時、胸に配していた日の丸が三本足の八咫烏(やたがらす)に変わり、現在まで続くデザインの元となった。

 現在のシンボルである八咫烏は、ブルーをチームカラーに採用した同時期の31年から、すでに日本サッカー協会および代表のシンボルになっていた。その背景は、日本にサッカーを広めたとされる中村覚之助が和歌山出身で、彼の出身地にある熊野那智大社が神の使いとして八咫烏を崇めていたため。さらに、同地に蹴鞠の名人である藤原成通が技の奉納に訪れていたという言い伝えがあったからだという。

1999年から続くアディダスとの蜜月関係

 最後に、サプライヤーについても触れておきたい。意外にもナイキ(NIKE)が日本代表のユニホームを手掛けたことは一度もなく、1999年まではアディダス(ADIDAS)とプーマ(PUMA)、アシックス(ASICS)の3社が制作を担当した。このため、92年から95年にかけて着用していた通称“ドーハモデル”は、同一デザインながら92年はアディダス製、93年はプーマ製、94年はアシックス製、95年はアディダス製という、今では考えられない“持ち回り”だったのだ。その後、98年のアディダス ジャパン設立をきっかけに、99年以降はアディダスが独占複数年契約を締結。約2年に1度のペースでユニホームのデザインを刷新しており、先日発表した“ORIGAMI”がコンセプトの最新作は13作目に当たる。カタール大会後も日本代表とアディダスのサプライヤー契約は続くので、次回作は2024年のパリ・オリンピック前に発表するはずだ。

 連載の第2回目は、日本代表とグループステージで対戦するドイツ代表とスペイン代表をピックアップする。

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