サステナビリティ

繊維から生まれた“土”、「トゥッティ」が広がるワケ

 服地卸の最大手スタイレム瀧定大阪が昨年スタートした「プラスグリーンプロジェクト」が今、大きな広がりを見せている。同プロジェクトは従来廃棄される衣類などのポリエステル繊維をリサイクルした培地「トゥッティ」を用いて、緑を増やし未来へとつなぐ取り組み。協業先はアパレルブランドや園芸会社、商業施設など多岐にわたり、プロジェクト発足から1年余りで60件以上の実績を残している。そこに共通するのは、サステナビリティを身近に感じるライフスタイルの提案だ。

様々な企業・ブランドとコラボ、
店頭での強いVPで集客にも寄与

 「プラスグリーンプロジェクト」の中心となる、ポリエステル繊維リサイクル培地「トゥッティ」は、普段着用している衣料品などを廃棄するのをやめよう、循環させて緑を増やそう…そんな思いから誕生した。オーケストラ全員で合奏することを「トゥッティ」ということに由来し、全ての人が演奏することで素晴らしい音楽が生まれる、そんな存在でありたいとの願いが込められている。ロゴにリピート記号が付いているのはリサイクルすることで、資源を循環させることを目指しているから。「おしゃれを楽しみながら緑を育てる」、この循環に参加することで、共に環境に優しい未来を生み出す。それは「プラスグリーンプロジェクト」の活動全般に通じている。象徴的な事例の一つが、6月に愛知県名古屋市のイオンモール大高にオープンした「ジーナシス」国内最大規模の店舗での取り組みだ。ユニバーサル園芸社と協業し、「トゥッティ」や「トゥッティ」を使用した観葉植物の販売とともに、同店では「トゥッティ」の原料となるポリエステル素材の衣料品回収キャンペーンも実施。その回収ボックスもポリエステル繊維をリサイクルしたフェルトの「トゥッティボード」で作った。店頭のディスプレイとしても使うことで、衣料品の回収、それをリサイクルした土、その土で栽培された植物、という循環を具体的に見せた。また、自分の生活の中の一部として、衣類から植物への循環を、来店客に感じてもらうとともに、サステナビリティの取り組みに興味を持たせ、店内へと足を進めさせる効果もあったという。

大型商業施設と組んだワークショップも

 サステナビリティを生活の一部として感じる取り組みは、商業施設でのイベントなどでも行われている。今春は阪急西宮ガーデンズで開催されたSDGs推進活動「ぎゅうっと未来 阪急西宮ガーデンズ」で、「不要になった洋服を捨てないアイデア」をテーマに、家族そろって参加できるワークショップを開催した。参加にあたっては、自宅の不要な洋服を持参してもらい、「トゥッティ」を使った植木鉢を製作。それを家に持ち帰り、廃棄される衣料品回収から緑を育てる循環を体験するという試みだ。プロジェクト発足時から一つの目標にしていた緑化事業もすでに実現しており、プロバスケットボールクラブ「川崎ブレイブサンダース」が若者文化発信拠点として運営する「カワサキ文化会館」の屋上約80m²に「トゥッティ」を敷き詰め、食育や地産地消の促進を目的とする屋上菜園「アンドワンファーム」を誕生させた。ここで栽培される野菜は、クラブハウスで提供する選手の食事の材料などに活用予定。将来的には、試合会場で回収した衣類も「トゥッティ」の一部になり、チームを中心とする環境の中で循環することを検討している。

ファッションを入り口に、
コスメなど多彩な“共創”も

 同プロジェクト発足時から取り組んでいるのが、淡路島パルシェが運営する「パルシェ 香りの館」内にオープンした「スタイレムアグリラボ」だ。ここは「トゥッティ」の生育実証の場、知見を広げる場であり、「トゥッティ」を開発したアースコンシャスや近畿大学と共に、最新設備のもと、約20種類の果樹・野菜を栽培している。すでにこのラボで栽培したハーブを原料とする、ローズゼラニウムやハッカのエッセンシャルオイルの製造・販売がスタート。8月に合同展示会「JUMBLE TOKYO」に出展したところ、大きな反響があり、新たなコラボ企画創出の機会となった。このラボのような「トゥッティ」を使った農園はほかの場所でも増え、井入農園では和ハーブ、山本農園ではストックの栽培が進んでいる。ほかにも、ノベルティーやオリジナル商品の開発、植栽ディスプレー、「トゥッティボード」を使ったバッグの製作など、ブランドの世界観とリンクさせながら、サステナブルを身近に感じられる数々の提案を行っている。「入口は繊維だが、出口は新規事業。業界の枠を意識せずさまざまな企業と協業していく」と同プロジェクトを担当するスタイレム瀧定大阪R & D部R & D室の坂本和也氏。今後は「衣料品を回収するアップサイクル事業、グリーンの販売やレンタル事業、緑化事業を含めた空間プロデュース、「スタイレムアグリラボ」の発展など、それぞれの分野での広がりを見据えている」と言う。2025年に開催される大阪・関西万博の参加型プログラム「TEAM EXPO 2025」にも参画し、さらなる共創を呼びかけている。

繊維から生まれた土
「トゥッティ」とは?

 「トゥッティ」は、従来なら廃棄されていたポリエステル繊維を主体に人工ゼオライトを特殊混合して作られた“繊維から生まれた土”。従来の培養土と同じように、花でも野菜でもハーブでも育てることができる。非常に軽量のため運搬や栽培作業が容易、虫が発生しにくく室内栽培に適している(無機肥料使用の場合)、経年劣化が生じにくいなど、扱いやすさも大きな特長だ。現在、自社ECのほか、竹中庭園緑化のショップや公式オンラインショップなどでも販売されている。

問い合わせ先
スタイレム瀧定大阪
06-4396-6534