ファッション

LAでビーガン・ファッション・ウイーク開催 コロナの解散危機を乗り越え

 アメリカ・ロサンゼルスでは6月、エシカル&サステナブルなファッションの国際的発展を目指し、ビーガン・ファッション・ウィーク(以下、VFW)によるビーガン・ファッション展示会が開かれた。VFWの創設者で動物愛護運動家のエマニュエル・リエンダ(Emmanuelle Rienda)が選び集めた、世界中のビーガンデザイナーのコレクションが展示され、未来のビーガン・ファッションを提唱した。ロサンゼルスに拠点を移し、日本と米国で活躍するファッション・スタイリストの水嶋和恵が展示会を訪れ、エマニュエルをインタビューした。

 「ハイファッションも優しく、気高く、思いやりを持てるはず」と語るエマニュエルは、エシカル・ファッションとサステナブル・ファッションのギャップを埋めるべく、2018年にVFWを創立。当時からファッション業界でもサステナブルなムーブメントは存在していたが、動物保護はそこまで深掘りされておらず、レザーやウール、そしてシルクについては特に何も考えず多用するブランドも多かった。だがエマニュエルは生産背景をよく知ると、到底エシカルとは思えない一面も多かったという。そこで19年2月、「ヴィーガン・ファッション・ウイーク」をロサンゼルスにて初開催。「2年のリサーチを経て創立したの。パイナップルレザーをはじめとする画期的なビーガンマテリアルを見つけ、それをランウエイで発表することができたわ」と振り返る。

 VFWは、環境配慮はもちろん、動物保護や雇用にも目を向け、そのユニークなメッセージと国際的なインパクトで、各国政府や多くの企業から注目され始めている。壮大なプロジェクトを一人で始めたエマニュエルは、自身の挑戦を「Life Mission(人生をかけたミッション)」と語る。金銭的な準備や、関わってくれる人々を探していると、アクションはどんどん遅れてしまう。だから自分一人でも行動したのだ。その挑戦は、「簡単ではなかった」と言う。「当時“ビーガン”という言葉には、暴力的な描写で人々を糾弾するイメージもあったけれど、私は当初から『インクルーシブでポジティブ、そしてクリエイティブ』なプラットフォームにすることにこだわった。今ではチームにも恵まれ、ここロサンゼルスにビーガン・ファッション専門のショールームも構えるまでに成長したのよ。地球環境と動物保護に目を向けつつ、同時にファッションはアーティスティックな表現ツールである事も忘れない。アートとエクスプレッション、インクルーシビティ、これらの集合体がファッションなの。このプラットフォームに興味を持ち関わりたいと思う人々が、ビーガンであろうがなかろうが構わないわ。どんな人も迎え入れたいと思うし、教育がとても大事」。

 やっと成果が見えてきた中で新型コロナウィルスが世界中に蔓延し、VFWはイベントを行うことができなくなった。デザイナーも生産から販売まで、さまざまな過程で苦悩に堪え、疑問と闘っていたという。一時はVFWの解散さえ考えたが前に進んできた。

 そんな中で開いた今回の展示会では、“ウーマンエンパワーメント”をテーマに女性デザイナーによるブランドが数多く揃った。

 例えば(NOUS ETUDIONS)」は、テキスタイルの質感を大事にしたミニマムでオーバーサイズなシルエットが特徴、新しい世代と時代を打ち出すジェンダーレスでサステナブルなアルゼンチン発のブランドだ。「ヴィーガンオロジー(VEGANOLOGIE)」は「Fashion should be caring(ファッションには思いやりがあるべき)」をコンセプトに100%リサイクルの素材で生産した商品を展開するドバイ発のビーガン・アクセサリー・ブランド。「ヴィーガン・タイガー(VEGAN TIGER)」は、トレンディなコレクションで注目される、韓国でのビーガンなファッションシーンを先導する存在だ。カナダの「マインドフル・ピッグス(MINDFUL PIGS)」はモダンな思想を現代に落とし込み、ウィットに富んだファッション性の高いアイテムが揃える。「センティエント(SENTIENT)」は、サボテンレザーを使用するメキシコの発ビーガン・レザー。ブランドだ。「シューズ・ゴーサンゼロヨンゴー(SHOES 53045)」は、生産や輸送の過程で発生する二酸化炭素排出量の多さに気づき、それらを見直すフランス発のハイテクスニーカーブランド。そしてアメリカからは、「ダーク・ソウル」をコンセプトにエッジの効いたコレクションを展開する「ファン・オール・フレームズ(FAN ALL FLAMES)」や、生産と消費が環境に与えるインパクトの大きさを念頭に置いた上で洗練されたシューズを提示する「シルバン・ニューヨーク(SYLVEN NEW YORK)」、そしてオールプラントベースで作られたルームシューズブランドの「ドゥーリーズ(DOOLEYS)」が参加した。

 「今計画しているのは、ウクライナのファッション業界及びデザイナーをサポートするイベント。現在コンセプトをまとめている最中で、10月のビーガン・ファッション・ウイークで開催予定なの。思いやり、人権、平和、それらのメッセージを世界中に発信する事ができたら。さまざまな人種が存在し、サステナブルファッションへの理解と繋がりが深いロサンゼルスは、そのようなイベントを開催するのに、ピッタリな場所だと思うわ」。意味あるプロジェクトを精力的に実現していくエマニュエルの姿に、スタイリストの水嶋は、「こういったグローバルでサステナブルなイベントに、日本国内のブランドも参加出来るよう、私が日本と世界を繋げる役割を担うことが出来れば」。

 「VFWは壮大で大変なプロジェクトだけれど、とてもやりがいがある。『We never quit!(私たちは、決して諦めないわ!)』」。そう強く語るエマニュエルの表情は明るかった。

INTERVIEW:KAZUE MIZUSHIMA
TEXT:ERI BEVERLY
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