「オートリー(AUTRY)」は、1982年にアメリカ・テキサスで誕生したスニーカーブランドだ。アメリカ国旗を掲げたキャッチーなロゴが特徴で、85年にリリースした“メダリスト(MEDALIST)”を筆頭に、複数のヒットシューズを世に送り出してきた。90年代以降はブランド休止状態だったが、2019年にヨーロッパに拠点を移して再始動すると、ファッションアイテムとして認知を拡大。2021年にはイタリアの投資会社メイドインイタリーファンドがブランドを買収し、「グッチ(GUCCI)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」など数々のラグジュアリーブランドに携わってきたパトリツィオ・ディ・マルコ(Patrizio di Marco)がチェアマンに就任するなど、経営体制を刷新した。
2022年春夏シーズンには日本上陸を果たし、次なるステージへと向かう新生「オートリー」。ここでは、チェアマンやCE0へのインタビュー、セレクトショップの証言から、同ブランドの魅力を読み解く。
チェアマンが語るブランド価値
WWD:ラグジュアリーブランドに携わってきたあなたが「オートリー」に参加した理由は?
パトリツィオ・ディ・マルコ(以下、パトリツィオ):私は職人技が根付くイタリア・ヴェネト州を拠点に、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」「ゴールデン グース デラックス ブランド(GOLDEN GOOSE DELUXE BRAND)」などのブランド再建を請け負ってきた。ブランドごとにゼロから戦略を立て、実行と修正を重ねて、新しい歴史を紡いできた。「オートリー」も同じプロセスを必要とする中、初めてスニーカーを履いた瞬間「このプロジェクトは成功する」と直感し、参加を決意した。
WWD:「オートリー」の強みとは?
パトリツィオ:ファッションは時代の社会的・文化的現象に触発され、時にはそれを先取りして成長してきた。その一方、ブランドには時代に流されない一貫した価値がないと成長できない。「オートリー」はスポーツを核に据え、1980年代にはテニスやランニングなど複数の競技で世界的なブランドとして知られていた。伝統的なスタイルとスポーティーで快適な履き心地を持ち、これがタイムレスかつジェンダーレスな価値になっている。
WWD:市場におけるポジションは?
パトリツィオ:一流のファッションアカウントで流通させた結果、既存のスポーツブランドとは一線を画し、エッジの効いたストリートスタイルとラグジュアリーの中間のポジションを構築している。さらにブランドを成長させるためには、前衛的かつ最先端なストリートスタイルを持つ日本市場への上陸が不可欠だ。ローカルパートナーである豊田貿易とともに、“本物でクールなスニーカー”を届けていく。
WWD:再始動の軸となったアイテムは?また現在の市場規模は?
マウロ・グランジ(以下、マウロ):「オートリー」は2019年、クラシックなデザインにモダンなプロポーションと上質なディテールを組み合わせたアイコンモデル“メダリスト”から再スタートを果たした。それからわずか3年でスニーカービジネスの重要プレーヤーとして認知され、現在は5つのモデルをベースに、素材や色、加工をアレンジするほか、アパレルやグッズなど200以上のSKUを販売している。パンデミックや世界的な景気後退、ウクライナ情勢と不安定な社会が続く中、売上高はわれわれの予想を上回る勢いで拡大している。具体的な数字は公開できないが、100以上のクライアントを持ち、2022年は世界で100万足以上を販売する見込みだ。
WWD:ヨーロッパ、アジア、北米などで販売している。特に好調な市場は?
マウロ:上陸した市場全てで成長を遂げており、ヨーロッパではイタリア、フランス、ドイツ、ベネルクス、イギリスが、アジアは韓国が飛躍的な成長を遂げている。昨年夏にイタリアのファンドが親会社になり、さらに野心的なロードマップを掲げ、その実現のための組織作りとインフラ整備を進めている。もともと大きなポテンシャルを持つブランドだが、頂点に立つために最善の行動をしている。
ヨーロッパの名店が
「オートリー」を扱う理由
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英ロンドンのセレクトショップ
「ブラウンズ(BROWNS)」
クラシックからカジュアル、ストリートまで、ユーザーそれぞれの好みに合わせて楽しめるシューズだ。ニューヨークのメトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)で行われた「メットガラ」では、ニコラ・ゲスキエール(Nicolas Ghesquiere)が「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のスーツに「オートリー」を合わせていた。数あるブランドのリバイバルでも、「オートリー」は正しい道を歩んでいる。男女どちらからも支持されており、定番モデルのほか、色違いなどのオプションも豊富で、リピーターも多い。(ルイス・ブロイス(Lewis Bloyce)/フットウエア&ファインウォッチ担当 紳士服ジュニアバイヤー)
イタリア・ミラノのセレクトショップ
「10 コルソ コモ ミラノ(10 Corso Como Milan)」
「オートリー」は、プロダクトデザインの中に“ポジティブさ”が潜んでいる。そのため、伝統的でビンテージのように見えても、実はまったく新しく、今の時代を反映したスニーカーだ。黒のタキシードに合わせてもいいし、ショートパンツにラフに合わせてもいい。ビジネス・カジュアルといったカテゴリーを超えるハイブリッドなスタイルで、いつでも完璧に履きこなせると思う。約3年前にメンズスタイルだけで提案したところ、短期間ながら売れ行きが非常に好調だった。今ではオーダーが倍以上になるほどニーズが拡大し、15歳の女性から60歳のクリエイティブな男性まで、男女5:5の比率で広く支持されている。すっかり「10 コルソ コモ」のファミリーだ。(ティツィアナ・ファウスティ(Tiziana Fausti)/「10 コルソ コモ ミラノ」会長)
バリエーション豊かなアイコンモデル
“メダリスト”とは?
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日本市場で強く打ち出すのは、ブランドのアイコンモデル“メダリスト”だ。1980年代のテニスシューズを彷彿とさせるシンプルかつクラシックなデザインで、アメリカの国旗が入ったロゴがアクセント。柔らかで上質なレザーを用いることで、スポーティーながら品のある表情に仕上げている。ソールはやや厚めのラバー素材で、内側はパイル地。安定感のある履き心地も魅力だ。
今シーズンは、つま先とヒール部分をスエードでアレンジしたモデルや、ピンクとホワイトのバイカラータイプ、ビンテージ加工を施したモデル、ミッドカットと豊富なバリエーションを用意した。
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