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美容師の新たなキャリアパスを支える「ミンクス」

 コンビニの4.5倍ほど軒数があるとされる日本の美容室。そんな美容室を支える美容師の働き方の多様化は、これまで大きな課題とされてきました。そこで最近はシェアオフィスならぬ“シェアサロン”が台頭してきたり、美容師と消費者を結ぶアプリなどが出てきたり、少しずつ美容師の多様な働き方が可能になってきた印象です。

 そんな中で今回の「ミンクス」の取り組みも、とても面白そうです。フリーランスになる際のリスクをカバーしつつ、独立したいスタッフの夢をサポートし、新たなキャリアの築き方を提供するという。美容師は「ミンクス」の看板を背負いながらも店舗経営は自由に任されるそうで、今後いろんな美容師のカラーが生かされた店舗が生まれそうですね。新店舗はすでに好調だそうですが、独立を目指す美容師だけでなく、「ミンクス」にとってもメリットがあるウィンウィンな取り組みになりそうです。

北坂 映梨
NEWS 01

「ミンクス」が流山にセカンドブランドをオープン 岡村享央社長に新プロジェクトの狙いと現況を聞いた

 ヘアサロン「ミンクス(MINX)」は7月、セカンドブランド「ミンクスプラス(MINXplus)」をスタートさせ、1号店として千葉県流山市に「ミンクスプラス 流山おおたかの森美容室」をオープンした。ここでは岡村享央ミンクスワールド社長兼「ミンクス 青山店・銀座店」ディレクターに、セカンドブランドに込めた思いと1号店の現況を聞いた。

「WWDJAPAN」(以下、WWD):セカンドブランド「ミンクスプラス」とは?

岡村享央ミンクスワールド社長(以下、岡村):「ミンクス」グループでありながら、「ミンクス」とは異なったコンセプトを持つヘアサロンです。「ミンクス」には、経験を積んだ30代半ばくらいのスタッフも多く、彼らが「自分のお店を持ちたい」と考えるケースも少なくありません。しかし、長年一緒にやってきたスタッフが辞めてしまうのは寂しいし、スタッフにとっても、独立にはさまざまなリスクがともなうため、実現のハードルはかなり高いんです。そこで、独立したように店舗運営は任せ、かつ「ミンクス」とのつながりも持ち続ける“セカンドライン”を考えました。

WWD:セカンドブランドは初の試み?

岡村:初めてですね。独立しても良好な関係性を継続しているスタッフはいますが、「ミンクス」の名を冠したサロンを出店するのは初の試みです。これはスタッフからの要望で、「セカンドブランドを出すなら『ミンクス』の名前をつけたい」という意見が多かったんです。それによって集客やリクルート面でのリスクがぜんぜん違いますから。セカンドブランドは、長年当社に貢献してくれた幹部クラスのスタッフにセカンドステージを用意し、彼らの夢の実現をサポートするという目的で始めました。よって、可能な限り彼らの要望に応えたコンセプトになっています。

WWD;「ミンクス」との違いは?

岡村:「ミンクス」は東京の銀座・青山・原宿にこだわって出店していますが、セカンドブランドは全国展開を視野に入れています。だから、例えば「自分の地元に出店したい」といった要望も、今後は出てくるかと思います。1号店は流山でしたが、例えば九州や北海道でも可能性は十分にあります。ちなみに流山は、現在は同店のCEOを務めている花渕慶太が、マーケティングの末に「これから発展していく街なのでここに出店したい」と提案してきた場所なんです。私も実際に行ってみたのですが、自然と商業施設が共存する住みやすそうな街で、タワーマンションなどの建設が進んで若い家族連れも増えていて、発展性が見込めると判断して決めました。

WWD:「ミンクスプラス 流山おおたかの森美容室」はどんな店舗?

岡村:子どもが遊べるスペースなどもあり、「ミンクス」のブランディングに“地域性”をより強く持たせたような店舗です。流山周辺に住んでいる産休明けのスタッフが、同店での勤務を希望するなど、既にセカンドブランドならではのメリットも出始めています。花渕には「『ミンクス』でできないことをセカンドブランドでやってほしい」と言っているので、引き続き“ならでは”の取り組みを模索中だと思います。

WWD:オープンから1カ月の商況は?

岡村:好調ですね。お客さまの約半数が地元の方で、狙い通りに進んでいます。新客の大半が、「『ミンクス』は以前から知っていて、それが地元にできたから来た」という理由で来店してくれています。あと、お客さまの中には地元の美容師の方も多いようです。1カ月足らずで、予約サイトに70件以上の口コミが集まりました。口コミには「待ってました!」「期待以上でした!」といった内容が多く、うれしい限りです。このまま成長していけば、2店舗目の出店も大いに考えられます。「ミンクス」にも「ミンクスプラス」にも、共通して“地域1番店を目指す”という目標があります。これからも、お互いが得たノウハウを共有するなど助け合いながら、ミンクスグループの発展を目指していきたいです。

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NEWS 02

マッシュルームレザーの生産拠点が日本に 「ダブレット」が組んだインドネシア発スタートアップ創業者が語る

 キノコの菌製の人工レザー“マッシュルームレザーが環境への負荷や動物の権利といった問題を解決する新素材として注目を集めている。すでに有力ブランドが“マッシュルームレザー”を開発・運用する新興企業との協働に乗り出しており、特に米国の新興企業と組んだエルメスやアディダスやステラ マッカートニーなどはその成果を発表し商品化を進めているブランドもある。

 「日本にマッシュルームレザーの生産拠点を作る」――インドネシア発のマイセル/マイコテック ラボ(MYCL / MYCOTECH LAB)は、8月23日に開催された京都工芸繊維大学主催のオンラインレクチャー「スクール オブ ファッション フューチャー」に登壇し、日本に生産拠点を構えることを明かした。彼らはアジアでの生産拠点拡大を目指しており、中でも日本は「きのこの培養に関して非常に優れた自動化技術がある」と期待を寄せる。同社が開発したマッシュルームレザー“マイリー(Mylea)”は、東京のデザイナーズブランド「ダブレット(DOUBLET)」が2022年春夏コレクションで用い、ライダースジャケットやミニポーチを来春発売すると発表している。

 マイセルは2015年にインドネシアで創業し、地元のキノコ農家と協力してキノコの菌糸を天然接着剤として使用したバインダーレスボード“BIOBO”やキノコの菌糸体を用いたマッシュルームレザー“マイリー”を開発した。米クランチベースによると累計の資金調達額は83万3000ドル(約9080万円)。共同創業者でチーフイノベーションオフィサーのロナルディアス・ハータンチョ(Ronaldiaz Hartantyo)にオンラインで話を聞いた。

WWD:先日登壇したウェビナーで日本での生産拠点を開発すると明かしていたが、どこと組むのか。

ロナルディアス・ハータンチョ共同創業者兼チーフイノベーションオフィサー(以下、ロナルディアス):マッシュルーム関連のコンサルティング会社で長野県を拠点にしているサライ・インターナショナル(SALAI INTERNATINAL、 キノコプラントなどの栽培設備の輸出・輸入・販売、キノコなどの食品生産に関わるコンサルティングを行う)と組む。本格的に動き出すのは来年で、将来的には新会社を設立することになるだろう。当社の担当者がこれから日本に向かう予定だ。

WWD:なぜ、サライ・インターナショナルだったのか。

ロナルディアス:ビジョンやミッションに共通点を感じた。メールでのやりとりを経て、バーチャルなミーティングを行うようになり、今はサンプルや製品を交換しながら進めている。

WWD:具体的な計画は?

ロナルディアス:現在検討中だ。最終的にどのようなコラボレーションになるのか、ライセンス契約になるのか合弁会社を設立するのか――現時点でははっきりわからないが、2023年ごろの供給を目指している。

WWD:日本での生産拠点の候補地は?

ロナルディアス:現時点では言えない。サライ・インターナショナルの協力を得て、素材(原料となる農業廃棄物)が調達できる候補地を紹介してもらい、どの素材を使用するか検討した上で、その素材を調達できる場所にアプローチしていきたい。

WWD:マイコテック ラボは“マッシュルームレザー”の生産(オガクズなどの木質機材に米ぬかなど栄養源を混ぜて栽培する)に農業廃棄物を用いているが、具体的に何を用いているか。

ロナルディアス:森林廃棄物に加え、農業廃棄物は米、とうもろこし、サトウキビなどを用いている。

WWD:原料に農業廃棄物を利用する点が、他社とは異なる優位性だと感じる。改めてマイコテック ラボの優位性を教えてほしい。

ロナルディアス:効率性だといえる。廃棄物を利用して、さらに、マッシュルームレザーを作る工程で出る液体と個体の廃棄物も活用する。個体廃棄物は建材に、液体廃棄物はバイオプラスチック製造に用いる予定だ。生産工程における環境負荷の低減にも取り組んでいる。イノベーションでどう社会的にインパクトを与えることができるか、どう貢献できるかを考えながら、マイセリウムレザーを市場に供給できるように取り組んでいる。

WWD:菌糸体から作られた“マッシュルームレザー”が本革よりも優れていると話していた。

ロナルディアス:ポイントは3つある。1つ目は耐火性。2つ目は30~60日で成長する点。3つ目は、生産コストが安い点だ。

WWD:量産に向けた計画は?

ロナルディアス:2023年の生産目標は25万平方フィート(2万3225平方メートル)だ。現在はパイロットプラントで製造しながら、品質の標準化と最適化を行っている。また、ISOなどの認証取得に力を入れている。加えて、今、インドネシアに1万平方フィート(929平方メートル)規模の工場を建設中で11月に完成する予定だ。

WWD:量産する上で難しいと感じていることは何?

ロナルディアス:現時点で挑戦的なことは品質を標準化することだ。1枚のシートをラボで作るのは簡単だが、同じ品質のものを2000枚作るのが難しい。自社の標準を質量や衛生面など108の項目を決めて取り組んでいるが、キノコは生物的なものだから思うようにいかないね。人間に例えるといろいろうるさいタイプ(笑)。

WWD:森林廃棄物や農業廃棄物の利用についてのハードルはない?

ロナルディアス:これまでサトウキビやパイナップル、おがくずなど15種類の廃棄物を活用してみたが、問題なかった。それよりも現時点で挑戦的なのは品質の標準化だ。

WWD:加工に関しての課題は?

ロナルディアス:本革に比べて低い環境負荷で加工することができる。一例を挙げると、菌糸体は重金属のクロムを使わずになめすことができる。現在、セチャンという木材から作られたタンニン材を用いているが、さらに環境への負荷が低い方法があるかも探っていく。

WWD:そもそもあなたがサステナビリティに興味を持ったきっかけは?

ロナルディアス:大学生のころにエコキャンパス運動に参加したことだ。その後、建築家として自然保護やヴァナキュラー建築を手掛けるようになり、より深くサステナビリティについて学び、サステナビリティを推進するコミュニティーや運動を起こすようになった。私は、サステナビリティはトレンドではなく、必要不可欠なものだと考えている。次の世代のために世界を守るために、私たちはイノベーションと小さな習慣の変化で貢献することができる。

WWD:もともと建築家としてキャリアをスタートしたが、キノコが持つ素材としての可能性を感じて創業したと聞いたが。

ロナルディアス:建材、ファッション、バイオプラスチックの梱包材とビジネスのポテンシャルは高い。ファッションを優先して進めているのは、製品だけではなくコンセプトが重視されているから。消費者も自分が着ている服が何から作られているかを知りたいと思うようになっている。建材にする場合、軽くて丈夫なレンガを作ることができるが、建材は今、価格が重視されている(がアパレルはコンセプトが良ければ多少価格が高くても売ることができる)。

WWD:数あるキノコの中でもレイシを選んだ。

ロナルディアス:品種さえ同じであれば品質は変わらないが、育つ環境がポイントで、レイシは、いろんな気候に順応できるんだ。

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最新号の読みどころ

「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。